こどもとIT
ボカロにロボット、モナカまで? STEAM・プログラミング教材見てある記
第9回 教育ITソリューション EXPO(EDIX)レポート
2018年6月25日 06:00
2018年5月16日から18日にかけて東京ビッグサイトで行われた教育ITソリューションEXPO(EDIX)では、いよいよ2020年にせまった小学校の学習指導要領改訂の実施を見据えて、多くのプログラミング・ICT教材が出展された。その中からピックアップしてご紹介する。
目を引いたロボットや工作系プログラミング教材
広い展示会場の中で、ひときわ活発だったのが未来の学びソーン「学びNEXT」だ。主にSTEAM教育やプログラミング教育関連の幅広い教材が展示されており、ブース内での体験ワークショップや模擬授業もあちこちで行われていた。
ナチュラルスタイルとソビーゴのブースでは、子供パソコン「ichigojam」を利用した教材が多数展示されていた。これらの教材は、既に多くの学校で採用、実証研究が行われており、単に機材だけでなく授業を進めるために必要なカリキュラムも整備されている。この傾向は他の教材でも見られ、数年前に比べて具体的な導入をより提案できるようにになってきたようだ。
同ブースでは、さくらインターネット、ビットスター株式会社、株式会社ナチュラルスタイル、株式会社jig.jp、アイティーエム株式会社の5社が運営する非営利団体KidsVenture(キッズベンチャー)と協力団体であるPCN(パソコンクラブネットワーク)がその取り組みの紹介やichigojamを使ったロボットなどを展示していた。タミヤのカムロボを使ったものだが、なぜか腕の部分には女子が大好きキラキラLED電飾が装備されていた。
スイッチエデュケーションのブースでは、micro:bitを使った楽しい工作が多数展示。はじめにプログラミングありきではなく、工作の中にmicro:bitが部品として使われているところに好感がもてた。参考出品だったが、羽ばたき型の飛行機「Bit Fly」のデモには思わず足を止めて見入る人も多かった。
既に海外で実績を上げているSTEAM教育のベンチャー企業も目についた。中でも上海発のDFRobot社は、ロボットや電子ブロックキット「BOSON」などの豊富な教材を展示、ワークショップに参加する教育関係者も多かった。ワークショップの進行をされていたのは、こども向けのプログラミングワークショップを開催している団体「OtOMO」の倉本氏だった。今回縁があってヘルプに入っていたそうである。
小学校低学年向け中心に、パソコンなしで「プログラミング的思考」を養うアンプラグド教材は、導入のしやすさからやはり人気がある。CAST JAPANは、世界中で使われているボードゲームを複数展示していた。どっかで見たゲームがあるなと思ったら、筆者もだいぶ前に個人的に購入していた「Robot Turtles」であった。そんなに定番の教材になっていたとは。
学校授業のICT化を支援する設備や教材コンテンツも
プログラミング教材以外にも広い会場では、学校の機材/設備や学習用のコンテンツ教材も多数展示されていた。
今回のEDIXのあちこちで目についてたのは、この3月に文部科学省から公開された「小学校プログラミング教育の手引き(第一版)」の指導案に基づく展示内容だ。特に定番だったのが「プログラミングで正多角形をかく」課題だ。
これを電子黒板の中で見せるデモを行っていたのが、株式会社ナリカのCyBoardという製品。単なる電子黒板ではなく、プログラミングの機能もあらかじめ内臓されているのが特徴だ。分度器や定規を画面に表示して実際に道具を使っている感覚で線を引き図形を描いて見せてから、他の正多角形をプログラミングして描くというデモを行っていた。
YAMAHAのブースでは、リモートワークではすっかりお馴染みのユニファイドコミュニケーション用機材や音楽系の専門学校などでも利用されている楽譜作成ソフトなど、他のブースでは見られない幅広いジャンルの製品を展示していた。筆者が気になったのは、学校向けに機能を整理した「ボーカロイド教育版」だ。今のところ、Windowsタブレットのみの対応だが、タブレットになれている今時の小学生達には愉しめる教材だろう。
コンテンツ教材の中で、目についたのが小惑星探査機「はやぶさ」のミッションをシミュレーション体験できるもの。現在は、小惑星探査機「はやぶさ2」が、目的地である小惑星リュウグウ(Ryugu)到着の最終段階に入っており、改めて前のミッションを振り返ってみるのも面白いかもしれない。
教育関係ならではの展示物も散見
IT寄りのプログラミングの機材やシステムなどがどうしても多くなる中、広い会場内には、教育のイベントとして別の意味で筆者の目を引いた展示もちらほらあった。そのいくつかをご紹介しておこう。
ホワイトボード/黒板/チョークの老舗メーカーである株式会社馬印のブースでは、透明ボードやホワイトボードの技術を利用した使いやすい電子黒板などに加えて、ホワイトボード専用書道セット「筆タッチ」がさりげなく展示されていた。書道の授業の手本をホワイトボードに書くことができるアイテムとして、学校以外の教室にも利用できそうだ。
フォントの「モリサワ」は「文字が実現するインクルーシブ教育」をテーマに、UD(ユニバーサルデザイン)フォント製品やミニセミナーを開催していた。確かに校務では多量の書類が必要で、それがきちんと読み手である子供達や保護者に「伝わる」ために、フォントのデザインはかなり重要だろう。
最後に紹介するのは、会場をうろうろして見つけた「モナカ」の山である。調理系のカリキュラムでも展示されているのか?と誤解しそうになったが、声をかけられてすぐわかった。スマホアプリをクラウドベースで開発できる「monaca(モナカ)」を提供するアシアルのブースであった。モナカ美味しく頂きました。