こどもとIT

体育のマット運動にプログラミング的思考を導入する取り組み――八王子市立浅川小学校

八王子市立浅川小学校では、2017年11月22日、プログラミング的思考を取り入れた体育の授業公開を実施した。

同校は、2017年度東京都教育委員会情報教育推進校としてプログラミング教育の実践授業研究を進めている。「児童がめあてを持ち、意欲的に取り組む体育学習」を目指しており、今回、プログラミング的思考を取り入れた5年生のマット運動の授業が公開された。

浅川小学校5年2組の児童たち

マット運動の動きをビジュアル化し、ブロックプログラミング

本クラスの児童たちは、これまでのマット運動の学習過程として5回の授業を受けており、今回が6回目となる。同校では、マット運動の単元を、ただ先生が指示した技を練習する形ではなく、スムーズな技と技とのつながりを意識しながら児童たち自身が考えた“技の組み合わせ”の発表会に向けて進めている。児童たちが技を組み合わせる場面での思考の整理のために、ブロックを活用し、視覚的にわかりやすい教材を開発したという。

まずは挨拶と準備運動を行い、そののち、グループごとに分かれて、前回までの話し合いで作成した“技の組み合わせ”をブロックで再現する。マット運動には、「前転」「後転」「開脚前転」「側方倒立回転」など多くの技があり、児童たちには、1グループあたり15個のブロックが与えられる。ブロックの内訳は下記の通りだ。

:再生ブロック1個
青(既習系):「前転」「大きな前転」「後転」「×2(繰り返し)」の4個
赤(新技系):「開脚前転」「とび前転」「開脚後転」「×2(繰り返し)」の4個
:「側方倒立回転」「×2(繰り返し)」の2個
白(つなぎ系):「ジャンプ」2個、「回転ジャンプ」が2個の合計4個

それぞれのブロックはマジックテープによって貼り付けられるようになっており、児童たちは話し合いながら自由に技の組み合わせを決められるというわけだ。グループごとに、「前転を中心に組み合わせる」「難しい技を中心に組み合わせる」などテーマを決めて組み合わせていた。

技の組み合わせをブロックで作成でき、その場で自由に組み合わせを変えられる。Scratchなどのビジュアルプログラミング言語の見た目によく似ている

実際に練習をする際には、そのブロックを確認しながら技を行えるため、多くの技を組み合わせても、忘れたり間違えたりする可能性が低くなる。児童たちも声をかけあいながらスムーズに練習を進めていた。

児童が同グループの他の児童に向けてブロックを示す

一定時間、各グループごとに技の組み合わせの練習を行ったのち、それぞれ個人が苦手な技について練習する「スキルアップ」の時間が取られていたが、その際にも、「タブレットでお手本の動画を見てもOK」「タブレットで撮影をしてもOK」というように、タブレット端末が活用されていた。

そののちに、再度グループごとに、「どうすればスッキリした技の組み合わせになるか」などと、児童同士で話し合いながら練習する時間が取られた。ブロックを活用することで、簡単に技を組み直すことができ、グループ全員が現状の組み合わせをリアルタイムで共通認識にできるのが画期的と言えるだろう。

児童が話し合いながら積極的にブロックを組み替える。技と技のつなぎ目などで「ここにジャンプを入れたらどう?」など活発に意見が出ていた

同校の薗田賢志副校長によると、技の組み合わせを考える作業を、以前は紙のシート上で行っていた。しかし当時は、グループ全員で1つのシートを見ることができず、また、書き込んだ文字を消しゴムで消しては書き直す必要が生じて煩雑だった。このブロック教材を導入したことで、グループ全員が一目で技の組み合わせを把握できるようになるとともに、技の入れ替えが簡単になったという。同校では、マット運動に限らず、低学年のダンスの授業で振りの組み合わせを考えさせる際などにもこうしたブロック教材を活用しているそうだ。

自分たちで組んだブロックを見ながら積極的に練習に取り組む児童たち

薗田副校長は、「児童たちは、別の生活単元においてコンピューター上でのプログラミングを体験しており、基礎知識があったため、体育の授業にブロック教材を取り入れた際にもスムーズに取り組むことができた。プログラミング学習は、コードを覚えることが目的ではなく、論理的・汎用的な考え方を学ぶためのもの。将来的に色々な科目へとプログラミング的思考が取り入れられていくだろう。体育の学習へのプログラミング教育の取り入れ方は文科省から示されていなかったこともあり、今回はあえてそこを狙った」と公開授業のねらいを語った。

池辺紗也子