新生活特集2018

まだまだ間に合う! 繁忙期こそいい物件に出合えるチャンス

SUUMO編集長に聞く物件探しのテクニックPart.1

これからはじまる新生活。就職や入学で上京する人は新居も決まって、引っ越し準備に追われている人も多いのではないでしょうか。また、年度末ギリギリのタイミングでの転勤や転職などで、これから急ぎの物件探しという人も、新年度がスタートしてひと段落したら引っ越したいという人もいるでしょう。そして、誰もが現在の住まいよりもいい物件に出合いたいはずです。できればあまり手間暇かけずに。そんな人のために、不動産情報サイトNo.1のユーザー評価を獲得しているSUUMO編集長への取材を敢行。とっておきの物件探しのテクニックを全3回にわたってお届けします。まずは繁忙期である3月中にいい物件を見つけたい人が知っておきたいテクニックです。

SUUMO編集長に聞く物件探しのテクニック

・まだまだ間に合う! 繁忙期こそいい物件に出合えるチャンス ← 今回はココ
・ライフスタイルに合わせて住む街を選ぼう
・物件選びがうまくなる! 知っておきたい賃貸物件の○○

3月といえば引っ越しシーズン。これから急ぎで物件を探さないといけない人は、ちょっと憂鬱かもしれません。引っ越し料金も高いし、人気の物件はすぐに決まってしまって“残りもの”的な物件しか残っていないと思っていませんか? じつは3月初旬~中旬は、人気物件をまだまだ探せる時期だそうです。SUUMO編集長・池本 洋一さんに「いい物件」を探すテクニックやアドバイスをうかがってきました。

株式会社リクルート住まいカンパニー
SUUMO編集長 池本 洋一さん

1972年滋賀県生まれ。1995年上智大学新聞学科卒業。同年(株)リクルートに入社。住宅情報誌の編集、広告に携わったのち、都心に住む編集長、住宅情報タウンズ編集長、SUUMOマガジン編集長を経て、2011年よりSUUMO編集長(現職)。住まいの専門家としてテレビ・新聞・雑誌などのメディア出演、講演,執筆を行う。リクルート住まい研究所主任研究員(兼務)、国土交通省 既存住宅市場活性化ラウンドテーブル委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部 日本版CCRC有識者会議委員、良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業 評価委員

即日で契約が決まる繁忙期は「スピード感」重視。そのために大切なことは?

「3月初旬は賃貸マーケットが一年でいちばん忙しく、退去も契約も入居手続きももっとも多い時期です。物件探しでギリギリのタイミングではありませんが、自分が気に入った物件はほかの人も気に入っています。時間をかけて悩んでいると、契約が決まってしまう可能性がかなり高いため、1年を通じてもっともスピード決断が必要になる時期です。不動産屋さんもあんまりワガママな客を相手にしている時間はありません(笑)」

こうした状況のなかで、ゆっくり物件を探している時間はありませんし、たくさん内見している時間もありません。いかに「物件を絞り込んで効率よく探すこと」がポイントとなります。そのためには、まずは下記のポイントが大事だと教えてくれました。

SUUMOなどの不動産ポータルサイトで物件を絞り込むこと
・すぐに物件の在庫を確認すること
・決め打ちで内見してまわること

「あれ? けっこう基本的なことじゃない?」と思いませんでしたか? ご安心を。ここからの絞り込み方が参考になるはずです。SUUMOなどのサイトで物件探しをするときには、沿線やエリア、家賃などの大きな項目を選んで、そこからこだわりの条件などをチェックしていきます。このチェックの入れ方によって、物件との出合いが大きく変わるのです。編集長によると、この繁忙期では下記の絞り込み方が効果的だと言います。忙しく働くビジネスマンを想定したテクニックになりますが、これから急ぎで物件を探す人はぜひ試してみてください。

1.どこの街に住むのか
2.家賃上限に幅を持たせる
3.間取りには極力チェックを入れない
4.広さにはしっかりチェックを入れる
5.築年数にはチェックを入れない
6.駅からの距離

1の街と6の駅からの距離に関しては、通勤通学等を考慮すると「通勤先まで1本で行ける路線」「乗車時間は○分以内」など絞り込みやすいと思います。意外と盲点になりがちなのが、2~5のポイントです。

とかくいろいろとこだわり条件をチェックしがちですが、このチェックの仕方で物件との出合いが変わります

「まず家賃に関してですが、たとえば7万円~7万5000円のように狭いレンジで絞ってしまうと、その手前の6万5000円~7万円、その後の7万5000円~8万円の魅力的な物件を見逃してしまう可能性があるので、できれば理想の家賃に1~2万円の幅をもたせて探してみてください」

生活に直結する家賃なので大幅にオーバーはできませんが、数千円の差で満足度が変わるのであれば、検討の余地があるかもしれませんので、まずは家賃に関しては広いレンジでチェックしておきましょう。

「築年数に関してはチェックを入れないようにしましょう。どうしても入れたければ、25年以内や30年以内にチェックを入れましょう。そうすると、敬遠されがちな築古でもリフォーム済みで快適な物件がいろいろ見つかります。また、間取りに制約をかけずに広さで絞り込むと、間取りが30㎡でも1Rで広々した使い勝手のよい物件が浮かび上がってきたりします」

物件探しをするときに、どうしてもこだわり条件にいろいろチェックを入れたくなりますが、ときにはそれが逆効果になることもあるようです。最近のトレンドとしては、なるべく仕切りのないような広い空間を求めるのが人気ということもあり、間取りで制限をかけるよりも広さを絞って検索するほうが、使い勝手のよい物件に出合える確率が高くなるそうです。

SUUMOの場合は「リノベーション」や「リフォーム」で絞り込んで検索できます

いくつかの物件に絞り込めてきた。スピード選択のポイントは?

さて、いくつか候補にあがる物件が出てきました。繁忙期であることを考えると、一刻も早く内見しておきたいところです。さっそく不動産会社に問い合わせを……と思ったら、人気物件の場合には複数の不動産の問い合わせ先がズラリと並んでいることがあります。物件をいち早く確保したいときはどうすべきでしょうか。

「どの不動産会社に問い合わせるかは難易度が高く、悩ましいところだと思います。理想は物件の管理会社に電話をすることです」

とはいっても、管理会社のマークは表示されていませんよね。「なんだよ、じゃあ自分の勘に頼るの?」と思ったかもしれませんが、ご安心を。その勘所もきちんと教えていただきました。

・物件がある地域の不動産を選ぶ
・電話してダイレクトに聞く
・勘が合っていたと思うなら前に進む

まず、全国チェーンの不動産よりは、「○○商事」のような地域で経営しているような不動産を選ぶと、物件の管理をしている可能性が比較的高いとのこと。メールでいろいろやり取りするケースが多いですが、一刻を争うときは電話で「管理していますか?」とダイレクトに聞いてしまうこと。決断のタイミングを急ぐ場合、知りたいことや疑問を解消するためには、管理会社じゃないとわからないことが多いそうです。問い合わせしたときに、仲介会社→管理会社→大家さんという確認作業が入っている間に、誰かが契約してしまうかもしれません。それを防ぐためにも管理会社に電話をするのがベストな選択というわけです。

気に入った物件があれば管理会社を電話を

引っ越し前の情報収集で「どの決断ポイントで意思決定するか」「決断ポイントの優先順位」を早めのタイミングで決めておこう! というような記事を目にした人も多いかもしれません。でも実際に内見すると、それぞれ魅力的なポイントがあって、なかなか決断できないものだと思います。そんなときは、どうやって決断したらよいのでしょうか?

「正直に申し上げますと“直感”です。実際に物件を訪れて、検索時よりもイメージが良いのか、そうでもないのか。この時期に関しては、良いと感じたならば自分の直感を頼りにそのまま前に進んでしまってもよいかと思います」

また、不動産会社の営業担当とのやり取りを通じて関係性が良いと感じたら、「家賃交渉ができるのか」「そんな時間は残されていないのか」をズバッと聞いてみるほうがいいそうです。たとえば営業担当が「家賃交渉などがは難しい」と理路整然とした回答をしてきたら、この時期に関してはそこに時間をかけるよりも、その賃料でも借りたいのであれば、申し込みの一番手を確保するほうが確実とのことです。通常の時期であれば家賃や敷金・礼金の割引交渉はぜひしておきましょう。仲介会社の場合は、仲介手数料が確定するのでけっこう交渉をがんばってくれるケースも多いそうです。ただし、交渉して割引に成功したらきちんと契約することもマナーとしてお忘れなく。

よし決めた! でも契約前にしっかりチェックしておきたいこと

ついに気に入った物件が見つかりました。無事に契約までたどり着けそうです。でも、その前に確認しておくことがあります。ぜひチェックしておきたい4つのポイントを教えていただきました。

1.入居者属性の把握
2.入居者のマナーチェック
3.実際に通勤ルートを歩く
4.鍵・窓・水道・トイレなどを稼働させる

まず「入居者属性の把握」についてです。入居後にもっとも多いのが「音」のトラブルだということもあり、隣や上の階にどんな人が住んでいるのかを知っておく必要があります。生活スタイルが近い人なのか、小さな子どもがいる家族が住んでいるのか、詳しいプロフィールまでは当然わかりませんが、ある程度の入居者属性を把握しておくことが大切になります。

続いて「入居者のマナーチェック」も大切です。ゴミ捨てのルールが守られているか、共用部に荷物が出しっぱなしになっていないか、自転車置き場が整然となっているか、掲示板に注意喚起の張り紙が貼られていないか、など。せっかく気に入った物件であっても入居後に余計なストレスを感じたり、トラブルの原因がありそうならば、契約しないほうが無難かもしれません。

そして「実際に通勤ルートを歩く」こと。仮に内見時はクルマで行ったとしても、実際に毎日の通勤ルートを歩いたり自転車で走ってみましょう。仕事帰りは夜なので、その時間に行けるのが理想とのこと。

「毎日の帰り道が怖いと嫌なのは女性だけでなく男性でも同じです。実際の夜の時間を事前に確認しておきましょう。またマイナス面だけでなく、ついフラッと立ち寄りたくなるコンビニや居酒屋などがあるかも意外と重要です。一日の最後に楽しみがあるほうがいいですからね」

契約前にはいろいろチェックを

最後に「鍵・窓・水道・トイレなどを稼働させる」こと。内見時に「この物件はやっぱりいいな!」と自分の勘が合っていたとしても、鍵や窓の開け閉め、水道やトイレを稼働させたり、水周りの隅にカビが生えていないか、などをチェックしておくことが大事になります。

「退去時にひと通りのチェックは済んでいますが、自分の中で許せる範囲と違っていることもあります。また入居後に問題が発覚すると自分の責任になってしまうケースもあります。必ずチェックしておきましょう」

いかがでしたか? ビジネスでものんびりしているとライバル社に契約を奪われたり、気になるあの子にアプローチできずにいるうちに恋人ができてしまったりするのと同じで、この時期の物件選びはスピードが大切です。これから物件探しをはじめる人は、これらのテクニックとアドバイスを参考に理想の物件と出合ってください。次回は「街」についての記事をお届けします。