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若者の常識らしい「スマホの全身撮影方法」を試してみた

同じスマホ、同じ倍率で撮った写真ですが顔や脚の長さが変わっています

若い人の間で、スマホの外カメラで全身写真を撮ってもらうときに「グリッドを使って画面の中央に顔、足先は下線ギリギリ」という撮影方法が定番になっているようです。

スマホカメラの性質を利用しているもので、「加工していないのに脚が長く、スタイル良く写せるから」というのが大きな理由です。スマホのカメラはもともと広角に作られており、画面の周囲は引き伸ばされるため、脚が実際より長く写ります。標準カメラで撮っただけなので「加工している感」がなく、スタイル良く写せるという点で若い人から大きな支持を得ているようです。

こうしたスマホカメラの性質や、上記方法で撮影するときのコツについて、写真家・ライターの武石修さんに解説していただきました。

上記写真の撮影時の画面。左は顔が画面の上部に、右は顔が画面の中央にくるように撮影
1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。

スマホカメラは画面の外側が引き伸ばされる

脚を長く見せて撮影するときに利用するのが、スマホカメラの「グリッド」機能です。設定方法は端末によって異なりますが、多くの端末で標準カメラの設定画面に「グリッド」や「撮影ガイド」という名前で用意されており、この機能をオンにすると、カメラのプレビュー画面上にグリッドが表示されます。

全身写真を撮るときはグリッドの中央に顔が入るようにし、画面下部に足先が来るように撮影します。グリッド上部はあえて空けるので背景が入ります。この方法を使ったときとそうでないときでは、全身の写り方は明らかに変わります。

Galaxy S22 Ultraの標準カメラ設定画面。「撮影ガイド」をONにするとグリッドが表示されます。iPhoneには「グリッド」という名前で設定画面にあります

なぜこのような違いが生まれるのか、改めて武石さんに解説してもらいました。

「カメラのレンズには、広角になるほど画面の外側が引き伸ばされて写る性質があります。スマホのカメラも広角レンズが標準装備であることが多いため、画面の外に向かって脚をフレーミングすると足先ほど長くなります。

一方、画面の中央部は引き伸ばされませんので顔を中心に置くことで体に対して“小顔”に写すことができます。結果、スタイルが良く写るといえます。

この“広角レンズで周囲にいくほど引き伸ばされる”性質を『パースが付く』などと言いますが、これは被写体に近づくほど効果が目立ちます。人物にある程度近づいて撮る方がより脚を長く見せることができます」(武石)

なお、画面上部に顔が入るように全身撮影しようとすると、「その場合も広角レンズの性質で顔が縦に伸びて実際よりも歪んだ写りになる」と武石さんは説明します。スマホのような広角レンズでの撮影時は、顔はあまり画面の周囲には置かず中央付近に置くと自然になるようです。

実際に撮影してみると、同じ倍率でも顔を写す位置を変えるだけで全然変わります。顔の大きさ、脚の長さに違いが生まれ、全体で見たときにその差がよくわかります。

Before。顔が画面上部に来るように撮影
After。顔が画面中央に来るように撮影
Before→AFTER。AFTERは撮影時から上部をトリミング

実物と同じように撮影するには?

上記方法は標準カメラで脚が長くなるように撮影するコツですが、あくまでも「スマホカメラが広角」という性質を利用しているもの。画面の外側が引き伸ばされているので、実物より脚は長く写っています。

では実物と同じように全身を撮影したい場合はどうしたら良いでしょうか。

「スマホの外カメラの場合は、被写体から離れてズーム機能を使うことで実物と同様に撮影可能です。ズームはすればするほど(望遠になるほど)パースは少なくなるので、最大にズームするのが一番パースは少なくなります。ただ、ズームしすぎると被写体とかなり離れなければならなくなるので、撮影時に離れられる範囲でなるべくズームした方がパースが少なく、より自然に写ることになります。スマホの機種や状況によりますが、2~5倍程度が撮りやすいと思います。

または望遠レンズ(望遠カメラ)を使い、被写体から離れて撮影する方法も挙げられます。望遠レンズはパースが付きにくいので、画面全体で人物を写しても頭や脚の変形が少なくなります。そのため、実物に近いイメージで撮影できるといえます。撮影の際は上からや下から撮らずに、おへそ程度の高さ(人物の中心あたり)から人物にスマホを正対させるとより自然に写ります。ファッションスナップなどではよく使われる撮り方です」

被写体から離れて5倍ズームで撮影。実物に近いサイズ感になります。こちらが現実です

写真撮影において「正しさ」をどこまで求めるかは状況によって変わると思いますが、趣味で写真を撮るならちょっとでもスタイル良く写りたいと思う人は多いのではないでしょうか。明らかに実物と違う場合は不自然になりますが、これくらいなら許容範囲と言えそうです。

また、今回の方法を知っていると「実物より顔が大きく、脚が短く写る」という状態を避けることもできます。今まで人に写真を撮ってもらって「鏡で見るより自分の顔が大きい」とショックを受けたことがある人がいるとすれば、スマホカメラの性質によるものの可能性があるため、ショックを受ける必要がなくなるでしょう。

今回は検証のため棒立ちで撮影しましたが、いい感じの風景と撮影するときはポージングもこだわると“映え”る写真が撮れそうです。GWは写真を撮る機会も多くなると思いますので、旅行や外出の予定がある方はぜひ参考にしてみてください。

西村 夢音