家庭でプログラミング教育にトライ

振る+光る=楽しい!「micro:bit(マイクロビット)」でセンサーデバイスをプログラミング!

文部科学省により、2020年以降に施行される新学習指導要領において小学校でのプログラミング教育必修化が決定しました。この連載では、元小学校教員でITジャーナリストの高橋暁子氏が、プログラミングに詳しくない保護者でも家庭で子どもにトライさせられるかどうかを確認しながら、実際にご自身のお子さん(算数好きの小学3年生・男児)と使ってみた際の反応や学習効果を交えながら、様々な教材を紹介していきます。

プログラミング教育向けマイコンボード「micro:bit(マイクロビット)」の名前を聞いたことがある人は多いだろう。英国のBBCが主体となって作り、2015年に教育用に11歳から12歳の子どもたちに無償配布された。日本でも昨年から発売開始されている。

micro:bitは、小さくて高機能なマイコンボードを自由にプログラミングできるという特徴を持つ。micro:bitの基板サイズはクレジットカードよりも小さい4×5センチ程度。25個のLEDと2個のボタンスイッチ、加速度センサー、磁気センサー、温度センサー、無線通信機能(BLE)などを搭載している他、スピーカーやワニ口クリップなどを別途用意すれば音を鳴らすことなども可能だ。

プログラミングは、ウェブブラウザ上でブロックエディターによってできるようになっている。ブロックエディターは日本語化されており、日本語が成り立つように組み立てていけば可能だ。

今回は日本マイクロソフトの「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」取材の際に、以前から興味を持っていたmicro:bitをご提供いただいたので、算数好きの小3の息子(8歳7ヶ月)と一緒にトライしてみたい。

micro:bitでプログラミングにトライ

自由度が高く、多機能なmicro:bit

micro:bitの魅力は、プログラミングの結果が画面ではなく実際に見える点と、安価かつ非常に多機能で自由に使える点だろう。アイデア次第では夏休みの自由研究の課題としても活用できそうだ。

一方、自由度が高いため、どのように進めるかが課題になる。することは自分で決めなければならないが、できることもわからない状態では子どもだけで何をしたいかを思いつくことは難しそうだ。

そこで、まず私が事前にmicro:bitの公式サイトでできることを調べたり、息子でもできそうな初心者向けプログラミング例を見たりしておくことにした。micro:bitならではの機能を使ったプログラムもできると楽しめそうだ。

ウェブサイトで組んだプログラムはマイクロUSBケーブル経由でmicro:bit本体にダウンロードする必要がある。これも、やり方をあらかじめウェブサイトの「クイックスタート」から確認しておいた。念のため簡単なプログラムを組んでダウンロードし、動くことを確認しておくと安心だ。

ダウンロードの方法は「クイックスタート」から確認しておこう

息子にmicro:bitを見せて、「これ何だと思う?」と聞くと、「何これ」とまったく思いつかない様子。「小さなパソコンみたいなものだよ。光ったりするの」と解説すると興味を持ったようだ。「プログラミングするとできるんだけど、やってみる?」というと、食いついてきた。

これ、何?

公式ウェブサイトを開き、上部の「プログラムしましょう」をクリックし、JavaScriptブロックエディターの「プログラムしましょう」をクリックするとプログラミングできるようになる。「基本」欄に「ずっと」などの基本ブロックがあり、「さらに表示」をクリックすると「表示を消す」ブロックがある。様々なブロックがあるので、あらかじめどのようなブロックがどこにあるか確認しておくといいだろう。

JavaScriptブロックエディターの「プログラムしましょう」をクリック
プログラミングができるようになる

結果が目に見えるmicro:bitに大喜び

気になるようで、色々なブロックを見始めた息子。micro:bitの入力の特徴について、「これはね、ボタンを押したら動くようにしてもいいし、振ったら動くようにしてもいいんだよ」と「入力」欄のブロックを見せる。

「入力」欄には様々なブロックがある

「アイコンを表示」ブロックを選ぶと、ハートやおばけ、キリンなどの形にLEDを光らせる様々なパターンが並んで表示される。「こういう色々な形に光るんだよ。次々変わったら面白いね」というと、ブロックを見ながら次々と表情が変わっていくプログラムを組み始めた。

「アイコンを表示」ブロックでは様々な形にLEDを光らせることができる
表情が次々と変わるプログラム

組んだプログラムは、左に表示されているmicro:bitの画像の下の「シミュレーターを再起動する」ボタンをクリックすると、画面上でも確認できる。しかし、喜んだのはやはりダウンロードして実際のmicro:bitが光り始めたときだった。

「光った!」と嬉しそうにしながら、何度もボタンを押して光らせていた。次々と色々な表情の形に光っていく。やはり、自分のプログラムの結果が実際に目に見える、しかも光るというのはかなり嬉しい。

プログラミングの結果、光ると大喜び

課題だけ出して考えさせてみる

次々とプログラミングをしてみる息子

「これには数字も出せるんだって。だから、サイコロにもできるらしいんだよね。どうすればできると思う?」というと、「えー」と自信がなさそうにする息子。「大丈夫だよ。間違っていても直せばいいし」と言うと、「そうだね」と素直に自分で考え始めた。

「じゃあ、1から6の数字を表示するとかかな」「決まった数字が出るだけじゃサイコロじゃないから、バラバラに出てくるといいよね。そういうの、前にドクロの時にやったけれど覚えてる?」とヒントを出す。「あー、乱数か」とピンときた様子。「サイコロだからボタンを押すんじゃなくて『ゆさぶられたとき』でもいいかもね」と自分からアイデアを出してきた。

彼が見つけたブロックは「0〜□の範囲の乱数」となっている。悩んでいるので、「このままだと0〜6が出ちゃうから、0じゃなくて1を出すためには…」とヒントを出すと、「□+□」ブロックを見つけてきた。「1+【0〜5の範囲の乱数】」で1〜6までの数字が乱数で表示されるようになる。少々苦労したが、できたらすっきりした様子だった。

サイコロのプログラムができた

プログラムをダウンロードすると、micro:bitを振る度、1〜6の数字がランダムに表示される。バラバラの数字が出るのはかなり楽しいようで、顔を輝かせる息子。喜んで何度も何度も振って数字を表示させている。

続いて、「10までの数を出すっていうのは?」とプログラミングして、10までの数字を表示させていた。「10」など二桁の数字を表示する場合は、「1」「0」という数字が続いて表示される。これもツボだったようで、「大きな数もできるんだね」と言っていた。

新機能「温度計」をプログラミング

「これ、小さいけれど色々な機能があるんだって。たとえば温度も測れるらしいよ」と言うと、「えー、難しそう」と一言。「どうすればいいかな?」というと、「そういえば『温度』っていうのがあったよ」とブロックを出してきた。

「やっぱりちょっと止めるといいのかな」などとプログラムを組む。できあがったプログラムを画面で確認すると、「21」と表示される。ダウンロードしてmicro:bitで測ると、「31」と表示された。「31℃だ!…さっき21℃だったのになんで?」「パソコンは温度が測れるわけじゃないから21℃って出たんじゃない。たぶん31℃が正しい温度だよ」。

気になりすぎてmicro:bitを握りしめる息子。すると、「32」「33」…「35」まで上がった。「やっぱり上がるね」と嬉しそうだった。温度計を使わなくても自分のプログラミングで温度が測れたことで、達成感が味わえたようだ。

※内蔵されている温度センサーはmicro:bitのCPUの温度を測るため、実際の気温より高い数値になる場合があります。正確な気温を測る場合は外付けのセンサーを使う必要があります。

温度が測って楽しめる

micro:bitはその他、LED画面の光センサーで環境光を調べたり、コンパス機能でmicro:bitがどの方向を向いているか調べるなどもできる。「show leds」ブロックで光らせたい部分をクリックすれば自分の好きな形に光らせることもできるので、アニメーションのようにすることもできるだろう。

とても小さいので、ペットボトルや空き箱などで工作したものにmicro:bitを入れると自分だけの便利グッズが作れそうだ。アイデア次第で、プログラミングと工作で立派な夏休みの宿題ができあがるだろう。まだ自由研究の課題が決まっていないご家庭は、一つの候補として検討してみてはいかがだろうか。

教材名micro:bit(マイクロビット)
利用料2160円(税込、公式販売代理店直販価格)
対象小学生以上
環境インターネットにつないでブラウザを利用できるパソコン(Mac、Windows、Chromebook、ラズベリーパイを含むLinuxなどのコンピュータで利用可能)、マイクロUSBケーブルが必須
保護者に求められる知識とスキル上記環境いずれかの基本操作ができること、使い方を理解し子どもをサポートできること、簡単なプログラミングのアドバイスができること
学習効果プログラミングに興味を持つ、論理的思考力の向上、創造力・表現力の向上
学習時間のめやす一つのプログラミングにつき10分程度から

※学習効果や学習時間は個人差があります

高橋暁子

ITジャーナリスト。 LINE・Twitter・Facebook・InstagramをはじめとしたSNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。「ソーシャルメディア中毒 つな がりに溺れる人たち」(幻冬舎エデュケーション新書)ほか著書多数。書籍、雑誌、ウェブメディアなどの記事の執筆、監修、講演、セミナーなどを手がける。http://akiakatsuki.com/