家庭でプログラミング教育にトライ

動画とゲームで学べる「ツクル プログラミングクエスト」でスクラッチを学習!

文部科学省により、2020年以降に施行される新学習指導要領において小学校でのプログラミング教育必修化が決定しました。この連載では、元小学校教員でITジャーナリストの高橋暁子氏が、プログラミングに詳しくない保護者でも家庭で子どもにトライさせられるかどうかを確認しながら、実際にご自身のお子さん(算数好きの小学3年生・男児)と使ってみた際の反応や学習効果を交えながら、様々な教材を紹介していきます。

人気のスクラッチ(Scratch)を使ったプログラミング学習教材が色々と登場している。アイウェイズコンサルティングの「ツクル プログラミングクエスト」は、スクラッチを使った小学生向け動画プログラミング学習サービスだ。沖縄で延べ4000人の小学生が参加したプログラミングスクール「ツクル」の成果を盛り込んだものだという。

子どもたちは最初にシンプルなゲームで遊ぶ。1つのゲームは約10の短い動画に分かれており、動画で見たことをスクラッチでプログラミングしていけば、最初に遊んだゲームができあがっていく仕組みとなっている。

他のスクラッチ系プログラミング学習教材とはどう違うのだろうか。今回は、算数好きな息子(小3、8歳6ヶ月)と「ツクル プログラミングクエスト」にトライしたい。

ツクル プログラミングクエスト

「ツクル プログラミングクエスト」にトライ

「ツクル プログラミングクエスト」を開くと、ゲームっぽいドット絵となっている。ドット絵を見たところ、「ゲームやりたい!」と息子。「これもプログラミング?」「そうだよ。ゲームが遊べて作れるよ」。事前にアカウントを作っておいたので、早速スタートすることにした。

なお、保護者があらかじめ学習の流れを知っておきたい場合は、別アカウントを作った方が良いだろう。子どもと保護者が同じアカウントを使うと、マイページに表示される「学習中のカリキュラム」で子どもの進度チェックができなくなってしまうためだ。

なお、「学習ガイド」を確認すると、作りたいプログラムを自由に選べるとある。執筆時点では1から11までのゲームカリキュラムが用意されているが、まずは1からやってみることにした。主人公は勇者。10秒間火を吹くドラゴンから逃げきれればクリアというゲームだ。

カリキュラムは現時点で11用意されている
最初にゲームで遊ぼう

簡単なゲームだが、マウスで操作するのが難しいようだ。「あー、やられちゃった……。次はがんばって!」と外からも盛り上げていく。なかなかクリアできないので、「ドラゴンが来ない、やられない場所はないかな? 逃げ続けた方がいいのかな?」と投げかけてみた。「あ、ここならドラゴンが来ない」と隅の場所に逃げ込んでやり過ごす場面もあった。

ドラゴンから逃げる息子

勝手にカスタマイズスタート

ゲームを遊んだら、次はプログラミングに取り組む。最初に「いらないスプライトを削除する」という課題がある。ゲームで使う「ゆうしゃ」と「ドラゴン」だけを残すのだが、ここでハプニングが起きた。なんと息子がうっかりドラゴンを消してしまったのだ。思わず、「最初からやり直せそうか」と言い出しそうになったが、息子は冷静なままだ。

最初にいらないスプライトを削除する

「新しいスプライトを使えばいいや」と、落ち着いてスプライトライブラリーを開く息子。ごく自然に、見つけた「Dragon」を追加する。そういえば、彼は既にスクラッチ経験が豊富だった。口出しは無用だったというわけだ。

「これでいいじゃない」と息子。「そうだね。色がきれいだし良さそうだね」と私。アドバイスなどなくても全部自分で判断して行動したので、正直驚いた。確かにプログラミングができればいいので、イラストが変わっても問題はない。プログラミングクエスト自体も問題なく進めることができる。

新しいスプライトを追加しても問題なく進められる

続いて動画を見ることにしたが、動画は無音で静かに進んでいく。音楽も音声も一切入っていないため、少し間延びして感じてしまう。最初は「スプライトを◯歩動かす」「端についたら跳ね返る」「コスチュームを変える」などのお約束が続くため、息子のように既にある程度わかる子だと気が散ってしまうようだ。

「分かるところは飛ばしてもいい」ということになっているようだが、見ないとそのステップでやることがわからなくなりそうだ。そこで、私がテロップの文字を読み上げて気持ちを惹きつけることにして課題を伝えていった。

課題はスモールステップなのですぐに頭に入り、スクラッチで簡単に再現できる。なお、動画には理解度チェックとなるクイズが用意されており、正解すると次の動画に進める。

動画は無音で進む
動画には理解度チェッククイズが用意されている

しかしここでも、動画にないものを付け加えていく息子。「旗がクリックされたとき10歩動かす」を「200歩」にするなど、キャラクターのスピードを速く設定。「こうしたら面白いんじゃない?」と楽しそうに手を加えていく。

ドラゴンのスピードをあまりに速くしていてクリアが難しそうだと感じたが、「なるほど、ドラゴンを速くしたんだね。とても強そうだね」と答えて見守ることにした。「勇者の真似」とゲーム内の動きを面白がって真似る息子。

どんどんカスタマイズしながらプログラミングしていく

後半になると、「スプライト同士がぶつかると止まる」などの複雑な課題も出てくる。中でも「タイマーを作る」は新しい課題だったので、動画も真剣に見ていた。モチベーションを上げるために、「これ、前も別のゲームでやったね。覚えてる?」「タイマーは初めてだね。できるかな」と意識付けの言葉をかけるようにした。それによって飽きずに最後までプログラミングできていた。

背景を変えるところまで終わると、ゲームが完成して遊べるようになる。ところが、スピードを自分でカスタマイズしているため、何度やってもドラゴンが速すぎてクリアできない羽目に。「ドラゴンが速すぎなんじゃない。もう少し遅くしてもいいかも」と言うと、素直に「そうだね」と遅くしていた。

できあがったゲームは喜んで何度も挑戦し、少し難しくしたりなどの微調整を繰り返していた。大人から見るととても簡単なゲームだが、自分で勝てるように作り変えられるとか、ゲームの内容自体が変えられるのが面白いようだった。

やはりゲームができるのは子どもには魅力的で、モチベーションにつながりやすいようだ。スモールステップなので進め方がわからなくならない点はとても進めやすかった。また、自由にプログラミングを変えても問題なく進められるので、息子のように自由に作りたい子どもにもぴったりだろう。

プログラミング力の向上を実感

もう一つ課題を選ばせて、遊ばせることにした。彼が選んだのは課題10の「よみがえるドクロ」。おどろおどろしいドクロが出てくる点に惹かれたのだろうか。ゲーム内容としては、もぐらたたきの要領で出てくるドクロを勇者が叩くもので、叩けた数で点数が決まる。

いらないスプライトを削除するまでは同じだが、その後の流れは大きく変わる。「スペースキーで剣を振る」という課題の時には、動画を見る前にタイトルだけでプログラミング内容を予想していた。「『もしスペースキーがおされたら次のコスチュームにする』かな」などと言っており、これまでの学習でプログラミング力が身についていることを感じた。

ただし、「ドクロが穴から出てくる」の課題では、さすが発展課題らしく、「穴となる楕円を描く」などのマウス操作が出てくる。穴から出たドクロを表現するためにイラストの下半身を四角で選択して消さねばならないのだが、うまくできずに腹を立てていた。子どもは不器用なので、ちょっと複雑なマウス操作が出てくると止まってしまうようだ。

マウス操作で苦労したドクロ

少し泣きそうになっていたが、「1秒待つ」を入れ忘れてドクロが一瞬で消えるようになっていたので、「わー、一瞬! 見えない、速い!」と大げさにリアクションしたら、笑ってうけていた。その後の彼は、待つ秒数を「0.001秒」など一瞬にして、ひたすらドクロをやっつけるのに燃えていた。

課題を選択、カスタマイズさせても

せっかく複数の課題が用意されているので、家庭でトライする場合には自由にやりたいものを選ばせた方がモチベーションにはつながりやすいだろう。

学校で課題に挑戦させる場合は、クラブ活動などで使わせるのがいいかもしれない。その場合も、課題をある程度事前に絞った方が取り入れやすいだろう。慣れていない子はプログラミングとは関係ないところでつまづいてしまう課題もあるので、事前にある程度教員側で選択しておいた方が良さそうだ。

できる子には課題のゲームを使ってカスタマイズさせ、オリジナルのゲームを作らせたりしても面白いだろう。複数のゲームのプログラミングをしているうちに、組み合わせて新しいゲームを作れるようになりそうだ。

教材名ツクル プログラミングクエスト(https://school.tsukurukids.com/
利用料無料
対象小学生
環境インターネットにつないでブラウザを利用できるパソコン
保護者に求められる知識とスキルパソコンの基本操作ができること、簡単なプログラミングのアドバイスができること
学習効果プログラミングに興味を持つ、論理的思考力の向上、創造力の向上
学習時間のめやす1つの課題で1~2時間程度

※学習効果や学習時間は個人差があります

高橋暁子

ITジャーナリスト。 LINE・Twitter・Facebook・InstagramをはじめとしたSNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。「ソーシャルメディア中毒 つな がりに溺れる人たち」(幻冬舎エデュケーション新書)ほか著書多数。書籍、雑誌、ウェブメディアなどの記事の執筆、監修、講演、セミナーなどを手がける。http://akiakatsuki.com/