こどもとIT

1人1台時代にBYOD実践校が考える、これからの学びに必要なモニター環境とは

1人1台環境やオンライン授業の普及など、子どもたちの学び方は変化している。これからの学校でどのようなICT環境が必要か。BYODを実践する湘南学園中学校・高等学校の小林勇輔教諭に、BenQ「GWシリーズ」についてレポートしてもらった。

湘南学園中学校・高等学校(神奈川県藤沢市/以下、湘南学園)は、中高合わせて1200名の生徒が在籍する男女共学の私立一貫校です。本校は、自分の好きな端末を所持するBYODを採用しており、生徒たちはiPadやWindows、MacbookやChromebookなど、さまざまな端末を使って学習に取り組んでいます。

そんな本校ですが、生徒の学習に適したモニターについて、これまで深く考える機会はありませんでした。これは、他の学校や教員も同じだと思いますが、モニターに対しては、“映ればいい”とか、“学校にあるものを使う”という発想になりがちで、こだわりを持っている人は少ないのではないかと思います。

湘南学園中学校・高等学校 情報科教諭・入試広報主任・ICT副主任 小林勇輔教諭

しかし今回、BenQ「GWシリーズ」を学校で使ってみて、その考えが大きく変わりました。私は27インチの「GW2780T」と24インチの「GW2480T」の2種類を使ったのですが、大きなモニターが教室にあることで、生徒の学び方が変わる可能性を感じましたし、校務の作業効率も向上することを実感しました。これからの学びを考えるうえでも、大きなモニターがあることを前提に考えれば、授業設計も変えていけると考えています。

視認性の良さが魅力。一瞬の見え方が生徒たちの学ぶ意欲に関わる

私が担当する情報の授業は、生徒たちが長時間、画面を見続けることが多くなります。たとえばホームページを作成する授業では、説明動画やスライドを見ながら、自分の端末の画面上で作業を進めていきます。単元の初回だけはレクチャーをしますが、授業の中で私が説明する時間は少なく、生徒たちは分からないことがあるときだけ私に質問します。

情報の授業では、生徒たちはMacbookやサブモニターを使って課題に取り組みます

このような授業になると、生徒たちは50分授業のうち、9割は自分のパソコン画面と隣に置かれたサブモニターを見ています。私が前で説明するときも、モニターに映る私を見ているような状況で、パソコンの画面とサブモニターを行ったり来たり。どうしてもトータルの画面視聴時間が長くならざるを得ません。

またコロナ禍の休校を経て、私の普段の授業も、いつでもオンライン授業に移行できるようなカタチに切り替えました。授業で使う教材もデジタル化を進めているため、改めて振り返ってみると、生徒たちが画面を見る時間は、本当に長くなっています。こんなにモニターを見る時間が長くなるなら、やはり体に良い環境を与えることが大切だと考え、「GW2480T」を生徒用のモニターとして設置してみました。

GWシリーズを使って最初に感じたのは、発色の良さです。学校から教師に貸与されているWindows PCを試しにつなげたとき、「今まで見ていた色はなんだったんだ!」というくらい、トップ画面の色が違って驚きました。私は、学びには“タイミング”が大事だと考えており、授業で見せる最初のスライドにはワクワクするキーワードや動画を差し込むなど、こだわって作っているのですが、GW2480Tなら綺麗にスライドを表示してくれます。ちょっとした差ではありますが、生徒たちが「今日の授業、面白そう」「がんばってやってみよう」と思えるかどうかは、最初に目にするスライド1枚にかかっており、その一瞬の見え方の違いは大きいと考えています。

アームを高い位置に調整できるのもメリット。高くすれば、生徒が使う画面とモニターが重ならない

ほかにも学校で使うモニターとして、GWシリーズは“目にやさしい”ことが魅力だと思いました。本校がBYODを初めて実施するときも、保護者の方から「子どもたちの目が悪くなるのでは」とご心配の声をいただきました。やはり、学校で使うモニターは生徒たちの健康面に配慮していくべきだと思います。その点、GWシリーズは、画面のちらつきを抑えるフリッカーフリー技術やブルーライト軽減機能が搭載されているので、目が疲れにくく、長時間の使用に適しています。モニターの高さ・角度など可動域も広く、生徒が自分に合った適切な位置に合わせることで、結果として姿勢に気をつけるようにもなるのではないでしょうか。学校として確信をもって、「子どもたちの健康面を考えています」と言えるのが良いと思います。

授業設計を変えていけるアイデアを持てたことが一番の収穫

今回、GW2480Tを使ってみて一番良かったことは、発色が良くて目に優しい大きいモニターが教室にあることで、それを前提に授業設計を変えていけると可能性を感じたことでした。

たとえば、教員が課題を映すだけではなく、グループごとに生徒が自由に接続して使えるモニターがあればどうでしょうか。今までグループワークで情報共有をするときは、それぞれの端末で資料やスライドを見たり、1台の端末を皆で覗き込んだりしていましたが、グループごとにモニターが使えると、見たい資料などを提示させながら、手元の端末で作業を同時に進めることができます。

またプレゼンテーションのやり方も変わってくるでしょう。私の授業でも教室のプロジェクターに生徒の端末を映写してプレゼンテーションを行なうのですが、この方法は授業時間のなかで発表できる生徒が限られてしまい、生徒同士の議論が深まらないことが課題でした。複数のグループに分かれて、各自の端末を見せながらポスターセッションのようなカタチで発表することもありますが、どうしても小さな画面を何人かでのぞき込むような形を取らざるを得ず、見づらさを感じていました。

MacBookやiPadを囲んで作業する生徒たち、どうしてものぞき込むような不自然な姿勢になり見づらさがある

ところがグループごとにモニターが用意できると、生徒たちが自由にHDMI端子を差し替えて自分の端末を表示できるので、とても見やすく、密にもならず適切な距離を保ちながら議論ができるでしょう。50分の授業の中で、生徒たちがアウトプットをし、フィードバックを得る機会も増えるので、授業時間を有意義に活用することができます。

ほかにも、生徒のそばに良いモニターを設置することで学習意欲にもプラスの効果をもたらすのでは、と考えています。これは情報の見え方の話ですが、教師が教室前方のプロジェクターに資料を提示する方法は、どうしても生徒たちが受け身になりがちなのです。しかし、同じ情報でも生徒のそばにモニターを置き、そこに情報をダイレクトに届けると、生徒は“自分に与えられている”と専有感を持つことができ、“ちょっとやってみよう”と学習意欲を持つことができます。あくまでも私が授業で感じている肌感覚レベルの話ですが、生徒のそばにあるモニターは“寄り添っている感”が出て、温かみのある学習環境を作れるのではないかと思っています。

教室前のプロジェクターで情報提示するよりも、生徒のそばにモニターを。情報の見え方がちがいます

ちなみに、GW2480Tは回転機能でモニターを縦表示に切り替えられるので、クリエイティブな活動に活かせると期待しています。最近は、街で見かけるデジタルサイネージも縦型表示が増えてきたこともあり、縦のデザインでスライドを作る授業も面白いと考えていました。

また縦表示のモニターは、意外にもスマホ世代の生徒たちと親和性が高いのではと思いました。先日も、ある生徒がMacBookでGoogleスライドを表示していたのですが、MacBookのキーボードを使わず、同じファイルを開いたスマホからフリック入力で行なっている姿を見て驚きました。生徒たちはとにかくスマホが中心です。そのスマホをGW2480Tとつなぎ「24インチのスマホ」のような使い方ができれば、クリエイティビティを存分に発揮してくれる生徒も現れるのではないかと思っています。

「27インチは正義!」大画面モニターで教師の作業効率も向上

授業ではGW2480Tを使用しましたが、27インチのGW2780Tは職員室の私の机で使用しています。GW2780Tは、なにより、その大きさが魅力です。「27インチは正義!」、大きな画面は教師の作業効率をあげると実感しました。学校から貸与されている15インチのWindows PCの外部モニターとしてGW2780Tをつなぎ、貸与PCは足元に置いて、bluetoothのキーボードとマウスで作業をしてみました。

教員用のデスクは狭いのですが、このように配置すると机の上がスッキリ

教師の仕事はここ数年、紙がデジタルに変わり、パソコンを使う校務作業が格段に増えています。しかも、扱うデータがクラス40人分の成績など一覧表が多く、画面が小さいと作業効率が下がってしまうのです。その点、GW2780Tは見やすいですし、縦表示にすると全体を表示できスクロールが少なくて助かりました。また前年と今年の資料を比較することも多いのですが、これも画面が大きいので作業が捗りました。

縦画面にすると、Google Classroomで生徒全員のデータが圧倒的に見やすくなります

また、GW2780Tは画面の角度や高さを自由に変えられるのもメリットです。本校は、生徒たちも職員室によく来るのですが、その際、画面の位置や角度によっては作業中の画面が丸見えになってしまうことが気になっていました。GW2780Tなら、いつ生徒が来てもいいように画面を低く、かつ斜めにして使用しているため、丸見えになることを防げます。

近年、教員の働き方改革が課題となっていますが、教員は学校から管理された校務用PCを支給されるため、自分で効率がよいと感じる端末を選ぶことができません。であるならば、GW2780Tのように大きなモニターと使いやすいキーボード・マウスを校務用PCとつなげ、作業環境を快適にする工夫をすることで作業効率の改善にもつながると思います。

1人1台端末の整備が進むなか、パソコン選びやその活用は注力されても、モニターにまで目がいかないのが現状です。しかし、これから学校現場で本格的にICT活用が進めば、生徒たちはクリエイターとしてアウトプットが活発になり、それを提示するモニターは必要になってくるはずです。一歩先に進むためにも、モニターにこだわり、より良い環境へアップデートしていきたいものです。

小林勇輔(湘南学園中学校・高等学校)

湘南学園中学校・高等学校 情報科教諭。Google認定イノベーター(JPN19)、GEG Kamakura Leader、edcamp Kamakura Founder、どこがく Founder。2015年12月にGoogle Educator Group(GEG)鎌倉を立ち上げ、その仲間と日本語で対話できる初のedcampを鎌倉で開催、その後edcampが全国に広がる。学ぶ、共有する、影響し合う、能力を高めるをキーワードに活動。Google認定イノベーター仲間と2020年1月にYouTubeチャンネル「どこがく」を開設。ClassroomやMeetの動画総再生回数が26万回を超え、チャンネル登録者数は2200名に。学ぶことの楽しさを動画で発信する日々を過ごしている。