こどもとIT

NEC、自社教育クラウドのGIGAスクール向け機能強化と小中学校5000校の導入実績を発表

――日教販との協業によりデジタル教材も拡充

日本電気株式会社(以下、NEC)は、学校向け事業の最新動向についての説明会を2021年2月25日に実施した。

同社は2019年11月に、教育向けクラウドプラットフォームとして「Open Platform for Education(OPE)」と文教向け端末「NEC Chromebook Y1」などを発表。しかしその後、3か年計画だったGIGAスクール構想がコロナ禍を受けて大幅に前倒し、2020年度中に全国の小中学校で整備を完了させるという事態となった。NECとして、この状況にどのように対応してきたかの実績と、今後のOPEの機能強化、新たな学校用端末などについて説明した。

NECが独自に展開する教育クラウドプラットフォーム「Open Platform for Education(OPE)」
NEC 第一官公ソリューション事業部 シニアマネージャ 田畑太嗣氏

GIGAスクール構想で全国の小学校、中学校でパソコン1人1台環境の整備が進められているが、NECでは「全国3万5000校の小、中学校のうち5000校に採択された」(NEC 第一官公ソリューション事業部 シニアマネージャ 田畑太嗣氏)と実績をアピールした。

学習者用端末は部材不足などが原因となって、納入遅れが出ているという指摘もあるが、「色々あったが2020年度内にはなんとか納入の目処が立っている」(田畑氏)。NECが独自開発した教育クラウドOPEは、利用の際に必要となる学習者向けIDを150万ID発行している(予定含む)。

今回は、GIGAスクール構想と2022年度の高校における学習指導要領改訂に向けて、OPEの機能強化を実施する。

まず、個別最適な学びを実現するための機能強化として、文部科学省の学習eポータルのガイドラインに準拠した教育クラウドとしていく。「学習者目線で考えて、学習のハブとなるものが学習eポータル。NECは文部科学省の示すプランに賛同し、学習のつなぎ役となることを目指す」(田畑氏)という。

具体的な機能強化としては、(1)マルチOS対応、(2)学びの保障オンラインシステム「MEXCBT」仕様準拠、(3)統合型校務支援システムとの連携、(4)学習者用デジタル教科書対応、(5)各種デジタル教材、EdTechサービス連携、(6)学習履歴の活用(ダッシュボードサービス)の6つ。マルチOSの対応を2021年3月末までに対応するほか、2021年度中に順次対応・販売開始していく予定だという。

2021年度中に各種EdTechサービスとの連携も強化する予定
日教販 執行役員 デジタル事業部長 加藤幸彦氏

学習コンテンツの品揃えについては、教育用図書販売の株式会社日教販との協業を行なっている。

日教販 執行役員 デジタル事業部長の加藤幸彦氏は、「当社は1000社の教育用コンテンツを提供する企業との取引実績、学校への教科書導入実績を持っている。OPEに関しても、教育用コンテンツを提供する流通網が必要となる。学習に効果をあげるためには紙とデジタルを融合したコンテンツ提供こそ効果的な学習を実現する。紙もデジタルもワンストップで提供する流通網によって必要なコンテンツを提供する」と教科書など教育向け書籍販売の実績をアピール。すでに出版社によってデジタル化されている教材については日教販がOPEとの連携部分をサポートし、まだデジタル化されていない紙の教材はデジタル化も含めて日教販が行なうという。

日教販は教科書図書取次として、紙とデジタルの教育コンテンツをワンストップで提供することを目指す

学習状況を見える化する「ダッシュボードサービス」を2021年度から提供する。児童や生徒一人ひとりのドリルや学力テストの結果や宿題の提出状況、経年変化や弱点などを把握することで、適切な学習を効率的に進めることができるようにする。教育委員会や学校に対しては、どの教材が多く利用されているのかなどをデータで紹介し、指導に効果的なコンテンツを把握できるようにする。

児童生徒の学習履歴を把握できるダッシュボードサービスを機能追加

学校のICT環境を支援する施策として、学校ICT総合サポートも強化する。契約プランN1/N3/N5を契約している場合でも、生徒からの直接の問い合わせを可能とするよう、2021年度4月以降を目処として調整しているという。「今後は高校も1人1台環境となることから、サポート契約プランを強化する予定」(田畑氏)とのことだ。

また、2022年度の高校での利用を想定して、協働的な学びを見える化し、先生や生徒をサポートするOPEの新サービスを開発中だ。

まず、協働学習を見える化するために、授業のグループ発話をAIで分析・振り返りを行なう機能の追加だ。現在、文部科学省が京都市で実証中のサービスを製品化して提供する予定だという。新学習指導要領で主体的で対話的な深い学びが重要であるとされていることを受け、グループ学習の発話をマイクデバイスで収集し、音声をAIで分析し、生徒の特性を可視化して先生へフィードバックする。

このサービスを利用することで、授業中のグループ学習の様子をタイムラインで確認することが可能となり、先生が登録したキーワードの使用件数などもわかるとともに、授業の振り返りがすぐにできるようになる。

協働的な学びを見える化する、グループ発話のAI分析機能も提供予定

高校で実施される予定の高度な探究学習を見える化し、サポートする新オンラインサービスについても現在開発中だ。探究学習の課題を踏まえ、NECがプロトタイプを開発し、実証研究が進められている。テーマ設定を明確にして、テーマごとに調べて学習することや、成果を発表することができる。オンラインであればテーマの専門家に参加してもらうことで、議論を深めることもできる。

ほかにも、将来のキャリアを決めていくことのサポートとして、オンライン進路相談プラットフォームを提供する。多様なロールモデル候補者との面談など、オンラインの特性を活かした進路相談ができる環境を、現在実証を進めている。

ハードウェアについても、2021年6月に「NEC Chromebook Y3」を、8月に「VersaPro E タイプVR」を提供する。両製品とも、充電式で本体に収納可能なデジタイザーペンに対応し、Wi-Fi6、HDMIポートを搭載する。また、Wi-Fi6のネットワーク環境を作るために、Wi-Fi6対応無線LANアクセスポイント「UNIVERGE QX-W1120」(9万8000円)を6月に出荷する。

デジタイザーペンに対応し、Wi-Fi6、HDMIポートを搭載した学習者用端末も今後発売予定
三浦優子

日本大学芸術学部映画学科卒業。2年間同校に勤務後、1990年、株式会社コンピュータ・ニュース社(現・株式会社BCN)に記者として勤務。2003年、同社を退社し、フリーランスライターに。PC Watch、クラウド WatchをはじめIT系媒体で執筆活動を行っている。