こどもとIT

GIGAスクールに対応したKano PCを自腹で買って親子連れと一緒に遊んでみた

株式会社リンクスインターナショナル(以下、リンクスインターナショナル)は2020年10月、自分で組み立てるタブレットPC「Kano PC」のGIGAスクール仕様対応モデルを発表した。これは、既に同年8月に一般向けに市販されたKano PCをベースに、ユニークなデザインのUSBカメラ(Kano Camera)をセットにしたものだ。

実は筆者、Kano PCの発売と同時に自腹で購入。自分で使うだけでなく、主宰しているCoderDojoひばりヶ丘に来る子どもたちや、プログラミングに興味のある親子連れが来訪した時などに、話のたねに触ってもらうようにしていた。今回、Kano Cameraに加え、専用のKano マウスとヘッドホンをお借りし、本体とあわせて遊んでみることができた。併せてのレポートをお届けする。

拝借したKano Camera、Kanoマウス、ヘッドホンを全部つないでみたところ、おしゃれなフル装備感

特徴的な外観のKano PC

Kano PCは、パッケージを開けてから自分で組み立てるタブレットPCだ。「組み立てる」と言っても、いわゆる自作パソコンほど大変ではないので安心して欲しい。

作業自体は、とてもシンプル。バッテリーとスピーカーを本体の決められた場所に入れてケーブルを差すだけ。人によっては「それ、組み立てるっていうかなあ」と素朴な疑問を抱く人もいるかもしれない(実は筆者もそうだったのだが)。しかし、考えてみて欲しい。Kano PCをこれから使うであろう子どもたちは、コンピューターの中身など、見る機会もないし、ケーブルを決まった場所に差し込む体験すらめったにないのである。

ケーブルをつないだら、カバーをはめて完成である。このカバーは透明になっていて、組み立てたあとでも中の様子を見ることができる。これが結構重要で、中が見えるパソコン自体がそもそも珍しい。普通に使っているときでも、気がついた人は「このパソコン面白いですね」と関心を寄せてくる。中には、帰ってから速攻買ってしまったご家族もいたようだ。

背面から見たところ、各端子ごとに色違いのLEDが綺麗

ところで、この透明カバーは一度はめ込むと簡単にははずれない。と言うか、本当にはずして大丈夫なのかと不安になるくらい堅いのである。ケーブルの差しが甘かったとか、カバーの中にあるmicro SDカード用のスロットにアクセスするには、当然カバーの開け閉めが必要なはずなのだが、大丈夫なのだろうかと、密かに悩んでいた。

この件、9月に開催されたEDIX東京の取材中、リンクスインターナショナルのブースで、立ち話的に質問したところ「大丈夫なようにできているので、力一杯開けてください」とのご回答をいただいた。後日、実際に無事、開けることができたのでこの場でご報告しておきたい。

無事に開いた透明カバー、思い切りが大切でした

「わたしを組み立ててくれてありがとう」に感動

Kano PCは外見の可愛さとは裏腹に、中身は標準的なWindows 10 Proがインストール済みである。Windowsの初期設定を終わらせると、自動的に「Kano PC Introduction」が起動する。この画面が、なんともレトロ感あふれるデザインで、子どもたちにはかえって新鮮、昭和のお父さんたちにもぐっとくるかもしれない(たぶん)。

画面中のKano PCらしいキャラクターの第一声は「わたしを組み立ててくれてありがとう」。パソコンにお礼を言われるとか、すごく久しぶりな気がする。思わず画面に向かって「お、おう」と語りかけてしまった。

レトロな感じも楽しい「わたしを組み立ててくれてありがとう」

次に待っているのは、いきなりコーディングの体験である。コーディングの基礎といえば、やはり「Hello World」。「Print Hello World」とタイピングすることを促される。キーボードに不慣れな子どもでも、あわてずやっていけばよい。間違えても、特に困るようなエラーは出ず、正解するまで何度でも繰り返せる。正しく入力できたら、無事に次の画面に進んで、色や好きな言葉を打ってみようと、タイピングの体験にもなっていく。学年にもよるだろうが、組み立て直後の、はじめてのパソコンに親しむ子どもたちには、よい練習になりそうだ。

はじめてのコーディングは、やはり「Hello World」

このIntroductionは、途中でいつでも終わらせられるし、普通のWindowsプログラムなので、メニューからいつでも起動できる。

パソコンの仕組みを楽しく学べる「How Computers Work」

Kano PCには、プログラミング/STEAM関連のプレインストールアプリが豊富。その中の「Kano Code」と「Make Art」については、既に体験記事も掲載されているので興味がある方はご覧頂ければと思う。ここでは、パソコンの中身について楽しく自習できる「How Computers Work」を紹介したい。

いま、GIGAスクール構想やプログラミング教育の必修化もあって、子どもたちがパソコンに触る機会は急激に増えつつある。しかし、その中で、そもそもパソコンやコンピューターの仕組みや中身がどうなっているかを学ぶ機会は案外少ないのではないだろうか。これは、子どもだけでなく、その保護者世代についても言えるかもしれない。

この「How Computers Work」は、Kano PCを例に、主要な部分をアニメーションやミニゲームを使って、より具体的に学ぶことができるとても楽しいアプリである。例えば、プロセッサーの説明では、簡単にコアやトランジスタの数などが紹介され、どのくらいの速さで計算をするのかをわかりやすく表示してくれる。

How Computers Workのプロセッサーの説明部分。数字が増えていくのが面白いらしく、子どもだけでなく保護者の方にも好評だった

もちろん、内容の説明は低学年にはやや難しい言葉も多い。ただ、興味を持つきっかけづくりにはなりそうだ。中学年以上になれば、より深い内容について自分で調べるのもいいかもしれない。

他にもキーボードや、バイナリー(二進数)の考え方や、ネットワークの概要などについても一通り網羅されており、図書館や児童館といった場所に置いて自由に触ってもらうのもよさそうだ。

キーボードや、ネットワークの説明も。全項目見ているだけで、けっこう楽しい

この「How Computers Work」は、他のKano製アプリと同様に、Windowsストアから無料で入手できる。Kano PCの仕様にあわせた説明内容ではあるが、他のWindowsパソコンでも利用することは可能だ。コンピューターサイエンスの入り口として利用するのもいいだろう。

お馴染みのソフトも普通に使える。だってWindows10だもの

プレインストールされているKanoのアプリ以外にも、一般的なプログラミングツールは普通に利用できる。可愛い外見にだまされそうになるが、中身はれっきとしたWindows10なのだ。インターネット環境さえあれば、すっかりお馴染みのScratch3.0も最新版のEdgeからアクセスしてすぐに利用可能だ。

Kano PCで動いている拙作のScratch作品に目を輝かせる女の子たち

また、これもお馴染みのMinecraftも試してみた。教育版ライセンスはあいにく個人ではもっていないため、Windows10版をインストールしてみたが、普通に遊ぶことはもちろん、「Code conection for Minecraft」を使って、Minecraftでプログラミングを楽しむこともできた。

これは、Microsoft Storeで無償で提供されているツールで、Windows10版のMinecraftにプログラミングの機能を追加するものである。Minecraft本体のコマンドに加えて、ブロックプログラミングを行なえるようになる。余談になるが、Minecraftと聞いて眉をひそめる保護者も、このプログラミングの話をすると急に身を乗り出してくるので、よい子のみんなは憶えておくとよい。

Kano PCで、Minecraftのプログラミングに挑戦

ユニークなKano Cameraは単品でも楽しい

ところで、Kano PC本体には実はカメラが搭載されていない。最初そのことに気がつかず、Scratch3.0に用意されているカメラを利用したモーションキャプチャを使おうとして、故障かとしばらく悩んだのは内緒である。このままでは、いわゆるGIGAスクール仕様の要件を満たしていない。フロントとリアのカメラが必要とされているのだ。

ここで役に立つのが、Kano Cameraだ。フレキシブルなアームにカメラがついているため、なんと1つのカメラで向きを容易に変えることができる。つまり、これ1つで、フロントやリアだけでなく、好きな角度で撮影することができるという逆転の発想だ。Kano Cameraの使い方は、前述した「How Computers Work」の中でも紹介されており、実際に自分が映っている様子を見ながら試すことができる。

フレキシブルなアームが特徴のKanoカメラを接続したところ、画面にはカメラの説明が表示されている
折りまげることで書画カメラのようにも使える。手元に届いたmicro:bit V2をカメラアプリで撮影してみた

このくねくね曲がるKano Camera。いろいろな物を撮影するのが面白く、しばらく時のたつのを忘れてしまった。機器としては普通のUSBカメラなので、別にKano PCでないと使えないわけではない。他のPCで使っても十分面白いので、予算に余裕があれば単品で買うのもありだろう。

なお、リンクスインターナショナルではKano PCの新規購入者向けに、このKano Cameraをプレゼントするキャンペーンを2021年1月3日まで実施しているとのこと。

マウスとヘッドホンもKanoらしいデザイン、しかも組み立てが必要っていったい?

ここまで、Kano PCの楽しい体験についてお届けしてきた。最後に専用のマウスとヘッドホンも紹介しておかねば。いくら何でも、マウスとヘッドホンについてそれほど字数を割くこともあるまいとうっかり後回しにしていたのだが、マウスのパッケージを開けて目が点になった。そういえば、「組み立てる必要がある」とは小耳に挟んでいたのだが、ここまでガチな工作物だとは想像していなかったのだ。

部品の点数は、さほどあるわけでもないのだが、組み立てているのはマウスである。今の世の中、マウスを組み立てたことがある人がそういるとも思えない。かのマウスの発明者、エンゲルバート氏に思いを馳せながら、これで動かなかったらどうしようとか思いながらやってみた。無事に使えました。中身の構造まで、前述の「How Computers Work」で説明されていたのには恐れ入りました。

Kanoマウスの部品、内部の説明までされていた

ヘッドホンの方は、マウスで疲れてしまった(苦笑)ので、都合良くそこにいた息子氏にやってもらうことに。

ヘッドホン、こちらも組み立て式。Bluetoothにも対応したマイク内蔵らしい

できあがったのを見て、首をひねった。なんで、ヘッドホンなのに充電ケーブルまでついてるんだろうと。よくよくパッケージを見たら、ちゃんとBluetooth or Cableと書いてあった。マイクも内蔵されている様子。マウスとヘッドホンだけでもたっぷり楽しめそうなKano PCと周辺機器、普通のGIGAスクール準拠PCでは物足りないとお感じのご家庭におすすめである。

新妻正夫

ライター/ITコンサルタント。2012年よりCoderDojoひばりヶ丘を主催。自らが運営する首都圏ベッドタウンの一軒家型コワーキングスペースを拠点として、幅広い分野で活動中。 他にコワーキング協同組合理事、ペライチ公式埼玉県代表サポーターも勤める。