こどもとIT

オンライン授業の疲れを軽減し、“参加感”を高めるMicrosoft Teamsの新機能「Together mode」

コロナ禍による休校期間中に、オンライン授業やコミュニケーションツールとして活用する教育機関が増えたコラボレーションツール「Microsoft Teams」(以下Teams)。米マイクロソフトは2020年7月8日(現地時間)、Teamsで新たなリモート体験ができる新機能「Together mode」を発表した。オンライン授業でのコミュニケーションがよりリアルな形に近づき、新たな学習体験が提供できそうだ。

Microsoft Teamsに加わった新機能「Together mode」の画面。子どもたちも同じ部屋で授業を受けているような一体感がある

オンラインで感じる疲れや負担を軽減し、一体感を味わえる新機能「Together mode」

コロナ禍では、世界中でリモートワークやオンライン授業への移行が進んでいる。しかし一方では、オンライン上のやり取りに、さまざまな課題も出てきている。

マイクロソフトが実施したリモートワークに関するリサーチによると、オンライン会議は、対面のときに比べて精神的な負担が増えることが分かった。疲労やストレスに関する脳波パターンが、対面のときよりも、リモートで顕著に見られるというのだ。この調査は大人を対象にしたものであるが、子どもでも傾向は類似するだろう。筆者もコロナ禍のオンライン授業の取材で、スクリーンの前に長時間縛られてしまう生徒の健康面や精神的負担を懸念する教育者らの声を聞いた。

同調査によると、オンライン会議による疲れの原因は、「画面を集中して見続けてしまうこと」「会議の雰囲気や誰が次に話すかなどの非言語的な状況把握が減少すること」「他の参加者の姿がほとんど見えない状態で画面共有をしていること」だという。

脳波を計測したところ、オンライン会議において会議開始後の30〜40分後から疲労がみられるという(画像はマイクロソフトのブログhttps://news.microsoft.com/ja-jp/2020/07/09/200709-future-work-good-challenging-unknown/より引用)

こうした調査結果から、オンライン会議で感じられる負担や疲れを軽減し、よりリアルに近い一体感を得られるように開発された「Together mode」が、今年8月から提供される。同機能は、AI技術によって参加者の映像を切り抜き、講義室の各々の席の位置に自動的に配置して表示してくれる。画面の分割表示ではなく、あたかも参加者同士が同じ部屋にいるような一体感が特徴的だ。オンライン会議ツールでバーチャル背景を利用している人も多いと思うが、参加者全員が1つのバーチャル背景上に表示されているとイメージするとわかりやすいかもしれない。

「Together mode」の画面。参加者の人数によって自動的に講義室の大きさが変わる

実際に筆者も記者説明会で体験したのだが、離れた場所にいる者同士が同じ場所にいるような感覚になり、自分も参加者の一人だという気分を味わえた。ウェビナーやオンライン会議などでは、他の参加者の様子が分からず全体の空気感もつかみづらいが、Together modeでは、他の参加者らの表情を読み取り、一体感を持てる。学校であれば、オンライン授業への参加感を高めるのに有効だろうし、質問などもしやすい雰囲気が作れそうだ。

講義室以外にもカフェのような雰囲気の背景も用意、少人数でのグループワークなどで設定すると子どもたちもリラックスできるだろう

グリッドビューよりも疲れにくく、記憶に残りやすい

記者説明会では、Together modeを開発したMicrosoft Research Scientistのジャロン・ラニアー氏にも話を聞くことができた。同氏によると、従来のグリッドビューとTogether modeを比較した場合、「Together modeを使用している人の方が、よりリラックスし、集中力も高いことが分かった」と説明する。その要因については、同じ部屋にいるような感覚を味わえるTogether modeの方が、非言語的な気づきが多く得られ、話にも参加しやすく疲労感が少ないというのだ。バイオセンサーを使用して脳活動を測定した研究でも、Together modeの方がグリッドビューよりも、脳の負担が小さいことが明らかになったと、同氏は述べた。

Together modeとグリッドビューを比較した脳活動の測定結果。Together modeの方が、よりリラックスし、疲れやストレスが軽減されていることがわかる

さらに興味深い点があるとジャロン氏は続ける。「Together modeを使用した人の行動を観察していると、自分が見られることへの意識だけでなく、他の人に気を配るようになったり、カメラをオンにして顔を出す人が増える」というのだ。また会議の内容や発言内容、会議に誰が出席していたかなどの記憶も残り、思い出しやすくなるという。筆者はとある取材で、オンライン朝の会をしても生徒がカメラをオンにしてくれないといった教育者の話や、友達の様子をもっと知りたいという生徒の話を聞いたことがあるが、オンラインではどうしても一体感に乏しさがある。一人ひとり感じる心地よさは異なるが、Togerther modeで対面のコミュニケーションに近づけるのであれば、リアルとオンラインの良い落としどころが見つかるかもしれない。

コミュニケーションやコラボレーションをより豊かに

マイクロソフトはTogether modeの他にも、Teamsで使える新機能を発表している。いずれも、オンライン上のコミュニケーションが豊かになりそうな機能であり、教育現場でも活かせそうだ。

・Dynamic View (ダイナミックビュー)
AIによって共有コンテンツやビデオ参加者の表示を自動的に最適化する機能。また最大で同時に49人をビデオに表示できる「Large Gallery View」も8月に実装予定だ。さらに教育現場で重宝されそうなのが、教師が子どもたちをグループに分けられる「Virtual Breakout Room」の機能。すでに他のサービスでも同様の機能が実装されているが、オンライン授業に取り組む教育者からグループディスカッションなどに有効だと好意的な評価を聞く。オンライン授業は今後、一斉授業だけでなく、協同学習や課題解決型学習といったグループワークのニーズが増えつつあることから、こうした機能を活用して、子どもたちのコミュニケーションを充実させたい。

Dynamic View (ダイナミックビュー)

・Live Caption (ライブキャプション)
Teamsには、すでにライブキャプションの機能が提供されているが、話している人が誰なのかを表示してキャプションを追加できるようになる。

Live Caption (ライブキャプション)

・Live Reaction (ライブリアクション)
オンライン会議の場では、発表者以外の雑音を抑えるために参加者がミュートにすることが多い。だが、それではちょっとしたリアクションを返しづらく、発表者の話を聞くだけになりがちだ。ライブリアクション機能を使えば、絵文字などを使って「いいね!」と反応ができる。授業においても、子どもたちの理解度を知るために、こまめにライブリアクションを返すように促すなどすると、教室での対面授業でも拾いきれなかったような双方向のやりとりが活発にできそうだ。

Live Reaction (ライブリアクション)

・Video Filter (ビデオフィルター)
フィルターを使用して照明レベルを調整し、レンズをぼかして外観をカスタマイズできる機能。おそらく、この機能も教育現場で役に立つだろう。子どもたちや保護者の中には、自宅でオンライン授業を受けるときに、部屋の状態が写ってしまうことに抵抗を感じる人もいるだろうが、ビデオフィルターを使えば、そうした心配も解消できそうだ。

Video Filter (ビデオフィルター)

長引くコロナ禍の生活では、Teamsのようなコラボレーションツールの利用は、今後ますます増えていくはずだ。オンライン授業をどのようにデザインするのか。新たなテクノロジーをうまく取り入れながら、より人間味ある学びを築いてほしい。

神谷加代

こどもとIT編集記者。「教育×IT」をテーマに教育分野におけるIT活用やプログラミング教育、EdTech関連の話題を多数取材。著書に『子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く』(共著、インプレス)、『マインクラフトで身につく5つの力』(共著、学研プラス)など。