こどもとIT

若きゲームクリエイターの卵が結集! 熱気あふれるTokyo Game Show 2019 ゲームスクールコーナー見てある記

ゲーム関係者が詰めかける恒例のイベント Tokyo Game Show 2019が、9月12日~14日に幕張メッセで盛大に開催された。大小の企業ブースから、インディーズコーナー、子ども向けの体験ゾーンなど、幕張メッセの全施設を使った、まさに一大イベントである。

その中で、年々規模が拡大してきた「ゲームスクールコーナー」がある。日本各地のゲーム業界を目指す学生達が学ぶ学校がブースを出し、学生達自身による作品の展示と説明が行われる。今回は、一般来場者で賑わう最終日の9月14日にお伺いし、このコーナーを回って熱気を肌で感じることができた。とはいえ、このコーナーだけでも十分に広い会場で全てを網羅するには無理がある。いつものように筆者の独断と偏見で気になったブース、展示内容をお届けしたい。

ゲームスクールコーナーに賑わう人達

華やかな大手学校グループブース、定番となって来たVTuberも

「ゲームスクール」と一口で言っても、専門学校から大学の関連学部まで、規模や内容など実にさまざまなスクールが全国に展開されている。開発現場のプログラマー、デザイナーからディレクターといった企画職までの養成、昨今では、声優からeスポーツに特化した学科までとその範囲は実に広い。巨大になるゲーム開発の実情にあわせた人材育成の流れともいえるだろう。

巨大イラストのパネルを出すなど、ゲームスクールとはいえ、ゲームショーらしい華やかなブースも多い
コンパニオンさん(学生さんかと思ったらどうやらプロだったらしい)の撮影スポットを設けるスクールも

特にゲームスクールコーナーで目を引くのは、大手学校グループの広い展示ブース。特徴のある学校をいくつも抱えるグループだけあって、学生の数もそのジャンルの幅も広い。その総合力の象徴ともいえるのが、来場者の目を引くVTuberの展示だ。中の人から、キャラクターデザインまで学生達が担当して目の前で展示しているブースには、多くの人が足を止めていた。

目を引くVTuberの展示、足を止める人達も多い
中にはVTuberが2人(?)の豪華版も

VRや3Dの体感ゲームは人気

各ブースでは、それぞれの学校で実際に学ぶ学生達が取り組んできた自作のゲームを展示している。学校にもよるが、このGame Showというイベントに取り組む過程自体をカリキュラムの中に位置づけているところもあるようだ。

ゲームの中で、目を引くのがVRゴーグルなどを使った体感、体験型ゲームで、順番を待つ長い行列ができていた。いずれも学生らしいユニークなアイデアが盛り込まれているものばかりだ。

見ていて思わず笑ってしまったピコピコハンマーを使ったVRゲーム、企業のオフィスにあればストレス解消になりそう
ホラー体験VRゲームはブースのデザインもなかなか凝っていて、雰囲気が既に怖い
デザイン・美術系の学校もブース出展、VRとアートという組合せは応用が広そうだ
専用コクピットを使ったシューティングゲーム
3つのモニター画面を使った3Dレーシングゲーム
空間センサーを使ったアクションゲーム

学生達のユニークなアイデアのゲームを体験できるのも魅力

パソコンで手軽に楽しめるゲームも各ブースに所狭しと並んでいた。来場者の中には、親子連れの姿もちらほら。ゲーム好きの子どもたちの進路として、このようなゲームスクールにも関心があるのだろう。

中には、保護者らしい大人も一緒に学生達の作ったゲームで遊んでいる姿もあった。小中学生ぐらいの子たちも、自分たちと年が近い学生達がどんなゲームを作っているのか、とても興味があるようだ。

学生達も自作のゲームについて遊び方を熱心に説明している
学生作のゲームで遊ぶ来場した子どもたち、なかには親子で遊ぶ姿も

展示されているなかには、日本ゲーム大賞アマチュア部門で入賞した作品も。派手なグラフィック?と思いきや、見た目は非常にシンプルなデザインながら、キャラクターの可愛さやバランスが素晴らしく、今時のゲームがちょっと苦手になって来たおじさん世代にも楽しく遊べそうだった。

日本ゲーム大賞アマチュア部門入賞作品「ほしピン」他、ゲームとして完成度が高い作品が数多く並んでいた

展示作品の中には、IoT的な取り組みにチャレンジをしたものも。愛知工業大学のブースには、一風変わったボードゲーム風の展示があった。一種の陣地取りゲームのようなものらしい。

専用のゲーム台と独自のルールを開発し、ボードゲームとデジタルを組み合わせたゲーム

このコーナーに出展しているゲームスクールは、首都圏以外の日本各地からも集まってきている。ゲームを含めた展示内容もご当地感や学校の特性が出ていて見て回るのは、なかなか面白い。

北海道情報大学のブースでは、雪をテーマにした可愛いキャラクターのゲームが体験できた
タイトルで思わず吹いてしまったゲームはASOポップカルチャー専門学校、さすがポップカルチャーをかかげる学校である
新潟コンピューター専門学校はさすが米どころの新潟、地元愛あふれるVTuberのパネルが

ゲームを作ってみたい! その熱意をサポートする高知県の取り組み

熱気があふれる会場をうろうろしていると、どこかで見た法被を着た人達が立つブースがあった。そうそう、あれは高知家のおそろいの法被ではないか。実は、ここ数年、初鰹のシーズンに高知を訪問して居る筆者(飲みにも行くけど仕事です、念のため)、「そういえば、今年は初鰹に行けなかったなー。戻り鰹にいけるかな」などと考えながら、「高知県IT・コンテンツアカデミー ゲームプログラマー養成講座」という名前が気になったので、責任者の方とどちらからともなく話がはじまった。

「高知県」の揃いの法被を羽織った学生達が出迎えてくれた

実は高知県内には、いわゆるゲームスクールが現在はないそうだ。しかし、ゲーム制作に関心がないわけではなく、大学生の中には、ゲームのプログラミングをやってみたいという声もあったという。高知県では、IT系人材の確保育成に取り組んでおり、「IT・コンテンツアカデミー」として専門講座を各種提供している。その中の1つとして、この「ゲームプログラマー養成講座」を行ってきたのだとか。

法被を着てブースに立っていたのも、実は受講していた高知県内の大学に通う現役の学生達だった。それではせっかくなのでと、人の流れが切れたところで、開発したゲームを体験させてもらいつつ話を聞いてみた。

説明を受けながら学生作のゲームを試遊する筆者

普段は情報・IT系の学科で学んでいるという彼・彼女ら、プログラミングの授業はあるもののゲーム開発は全くの初心者からだったとか。展示されていた横スクロール型2Dアクションゲームには、オリジナルのアイデアも盛り込まれて、ゲームとして、ちゃんと完成されていたのには感心した。画像や音楽も仲間たちで作ったようだ。

それ以上に、熱心にしかも嬉しそうに自作ゲームの遊び方を説明してくれる様子を見て思った。好きなこと・やってみたいことに挑戦してそれを他の人と共有し見せること、この体験はゲーム開発のスキル獲得以上に得がたいものなのではなかろうか。

筆者のつたない知見ではあるが、大学生に限らず「ゲームを作って誰かに遊んで貰う」という経験は、子どもたちにとっては非常に楽しいものだという実感を持っている。ゲームスクールで学ぶ若者達の熱気を感じながら、そのような機会が日本全国でより身近にあればよいのに……と素直に思いながら会場を後にした。

新妻正夫

ライター/ITコンサルタント、サイボウズ公認kintoneエバンジェリスト。2012年よりCoderDojoひばりヶ丘を主催。自らが運営する首都圏ベッドタウンの一軒家型コワーキングスペースを拠点として、幅広い分野で活動中。 他にコワーキング協同組合理事、ペライチ公式埼玉県代表サポーターも勤める。