こどもとIT

小学生親子がパソコン自作を初体験、自分が作ったパソコンでプログラミングにもチャレンジ!

――『人気YouTuber「あしあと」と学ぼう!マインクラフトプログラミング&パソコン自作教室』レポート

2019年9月22日、東京・北の丸の科学技術館で『人気YouTuber「あしあと」と学ぼう!マインクラフトプログラミング&パソコン自作教室』が実施された。マイクラ実況で人気の4人組YouTuber「あしあと」から2名が参加し、子どもたちと一緒にパソコン自作からプログラミングまでを体験する、というイベントだ。

目の前で子どもたちが真剣にパソコンを自作している姿を見て、「この経験は大切なものになるかもしれない」と感じたイベントだった

2020年にプログラミング教育が小学校で必修化されるのに伴い、授業で困らないように今のうちからプログラミング教室に通っている子どもは少なくない。ビジュアルプログラミングツールの「スクラッチ」でゲームを作ったり、人気のサンドボックスゲーム「マインクラフト」を利用したりと、楽しみながらプログラミング的思考を学べるように工夫されている。

しかし、プログラミングやサービスの“ソフト面”が充実する一方で、パソコンの“ハード面”のフォローができる機会は実は非常に少ないのが現状だ。パソコンの黎明期は“使う知識”と“作る知識”がある程度セットだったが、今は使う知識が一般化した分、作る知識がマニアックになってしまった。せっかくプログラミングを学ぶなら、パソコンの機能や構造についてもバランス良く知ってほしいところだ。

ハード面を理解するには、実際にパソコンを自作してみるのが手っ取り早いのだが、自作パソコンの知識や経験がない親も多いだろう。“正しいパソコンの作り方とプログラミング”を教えてくれた今回のイベントは、ハード面とソフト面の両方を押さえた内容で、子どもにより深い理解と経験を与えたいと考える保護者にとって、まさに渡りに船の内容であった。

パーツメーカーが多数協力し、自作とプログラミングが体験できる豪華イベント

会場となったのは科学技術館の「実験スタジアム(L)」。参加費無料で実施され、小学校4年生~6年生とその保護者を対象に事前に8組が一般募集された。パソコン自作からマイクラプログラミングまでという充実の内容のため、13時から15時25分までという長丁場。そのため体験内容は2部構成で、まずは「PCを組み立ててみよう!」と題してパソコン自作を60分間実施。15分間の休憩を挟んで、自分が組んだパソコンで「マイクラプログラミングに挑戦してみよう!」と題して60分間ビジュアルプログラミングを体験した。

東京・北の丸にある科学技術館4F「実験スタジアム(L)」の会場に、自作パーツ一式が準備された

イベントは、全国で小学生向けプログラミング教室を展開している株式会社CA Tech Kidsが主催し、インテル株式会社がメーカー各社に協力を依頼。機材提供や当日の運営に、テックウインド株式会社、菱洋エレクトロ株式会社、旭エレクトロニクス株式会社、岡谷エレクトロニクス株式会社、ASUS JAPAN株式会社、エムエスアイコンピュータージャパン株式会社、ASRock Incorporation、日本ギガバイト株式会社が協力するという、手厚いサポート体制だ。

会場の大きな長机の上には2セットの自作パソコンのパーツがセットされ、子どもがパーツの前に座り、それをサポートする形で親が着席。2組ごとにパーツメーカーのサポートが入り、作業の補助を行った。

すべての部品がパッケージから取り出された状態でセット
各パーツメーカーの技術者が作業をフォローするという手厚いサポート体制

また、会場内には事前申込み不要の「PC自作フリー体験コーナー」も用意。来場した順番に随時イベント参加者と同じようにパソコンパーツに自由に触れ、パソコン自作やマイクラでのプログラミングを体験できるようになっていた。

「PC自作フリー体験コーナー」にも同じセットが用意された

マイクラ実況で人気のYouTuber「あしあと」のふたりが登場

オープニングでは、2020年から必須科目となるプログラミングに楽しく取り組めるよう、最新のパソコンの部品に触れて、組み立て、そのパソコンで快適なマイクラを体験してほしいと説明。「パソコン版マイクラならではのプログラミングやModを覚えれば、マイクラがもっともっと楽しくなるし、将来にもきっと役立つ」と前置きして、人気YouTuber「あしあと」の「朱梨(しゅり)」さんと「豆腐」さんが会場に迎え入れられた。

チャンネル登録者数45万人の4人組YouTuber「あしあと」は、マイクラの実況動画で人気のグループ。今回は朱梨さんと豆腐さんの2人がワークショップに参加した。

マイクラ実況で大人気のYouTuber「あしあと」のふたりが会場に登場

朱梨さんと豆腐さんは、実際にマイクラの実況動画や便利Modを紹介し、「Modを入れたらパソコンが重くなり、みんなでパソコンを買い換えた」話などを披露。パソコン版マイクラならではの話として、「操作が自由」「Modの種類が一番多い」「ダンジョンも多い」など利点を紹介。活動初期はパソコンが古かったのでマイクラの画質も下げていたそうだが、今では新しいパソコンに買い換えてModを十数個入れているとのこと。「パソコン版だと、どんどん自由なことができる」と解説した。

YouTuberグループ「あしあと」の「朱梨(しゅり)」さん(左)と「豆腐」さん(右)も、そのままステージ上で子どもたちと同じステップで一緒に自作にチャレンジした

パーツメーカーがサポートする、はじめてのパソコン自作体験!

「PCを組み立ててみよう!」のパートでは、週刊アスキーのつばさ先生が解説を担当。いったんみんなで起立・礼をして、「よろしくお願いします!」と元気にスタートした。

「PCを組み立ててみよう!」のパートで解説を担当したつばさ先生

今回参加した子どもたちは、パソコン自体には慣れているが、パソコンは自分で作ったことがないという子がほとんどで、パソコン自作のパートはやや緊張気味でスタート。つばさ先生が「これを作ると、マイクラのModがすごくサクサク動くパソコンが作れるし、自分でゲームを作ることもできる!」と楽しさをアピールしつつ、軽快なトークで子どもたちにも徐々に笑顔が増えていった。

机の上にセットされた「パソコン自作台」の上には、すでにSSDがセットされたマザーボードと電源ボックスが固定されている。CPUやメモリーなどのパーツもすでに箱から取り出された状態だ。そのため、「目の前のパーツには“いいよ”と言われるまで触らない」と約束し、パソコン自作の流れを紹介していった。

今回使う自作パーツの名称を確認

「パソコンの作り方」は、初心者の小学生にも分かるように簡略化した5ステップで解説。ただし、道具や各作業は本格的で、パーツも当然ながらすべて本物。子どもたちはしっかり静電気防止手袋をはめて作業を開始した。

部品や道具はもちろん本物!しっかり静電気防止手袋をはめて作業を開始
ステージ上では「あしあと」のふたりも自作に挑戦

CPUをマザーボードに乗せる

やや硬いCPUソケットのレバーを外す。CPUの△のマークとCPUソケットの△の方向をしっかり合わせて、CPUをCPUソケットにセット。レバーを倒して固定する。レバーがやや硬いので、難しいときは親御さんに手伝ってもらうようアドバイスしていた。

まずはCPUをセットするとこから開始
方向を合わせてCPUソケットにCPUを乗せる
CPUソケットのレバーを戻してCPUを固定

CPUクーラーをマザーボードに固定

グリス代わりの「サーマルパッド」をCPUの上に置き、その上にCPUクーラーを乗せる。四隅の穴を合わせて両手で対角線上に力をかけてセット。やや硬そうだったが、なんとか全員セットが完了した。セットできたらCPUクーラーの電源ケーブルをマザーボードに挿してCPUまわりは完了だ。

グリス代わりの「サーマルパッド」をCPUの上に置く
対角線上の角を同時に押してCPUクーラーをマザーボードに固定し、CPUクーラーの電源をマザーボードにセット

メモリーをマザーボードに固定

マザーボードの「ラッチ」を開けて、そこにメモリーを溝に沿って上から両手で平行に力を入れてギュッと押し込む。しっかり押し込む時に意外に力が要る作業のため、「指が痛い」という子もいた。マザーボードによって1枚目を挿す場所が違うなど、気を付ける点をパーツメーカーのサポート講師が各参加者に説明しながら作業を進めていく。

メモリースロットにメモリーを差し込む

ビデオカードをマザーボードに挿す

ビデオカードの向きを確認してマザーボードにしっかり差し込み、ネジを使ってドライバーで固定する。実際にパソコンを自作する場合は、マザーボードやドライブの固定など、各所でネジ止め作業が発生するが、今回のイベントでは唯一ネジとドライバーを使う作業だった。この辺にも初めての自作体験を損なわない工夫が見られる。

ビデオカードをマザーボードに挿す
ビデオカードをネジとドライバーでパソコン自作台に固定

電源を入れて完成!

電源ボックスに電源ケーブルを挿し、最後にディスプレイに取り付けられたHDMIケーブルをビデオカードに挿す。「3・2・1!」のかけ声で全員で電源ボタンを押して起動。思わず「おお!」と声が上がった。起動しないパソコンはサポート講師がチェックして、無事に全員のパソコンが起動。全員にキーボードとマウスが配られ、マザーボードに接続してパソコンの自作が完了した。

電源ケーブルを電源ユニットに、HDMIケーブルをビデオカードに接続
緊張の電源ON!無事に起動すると「おお~!」という歓声が上がっていた
自分で作ったパソコンが実際に起動して、子どもたちもとてもうれしそうだ
キーボードとマウスをマザーボードに接続して完了

最後に感想を聞かれたYouTuberの豆腐さんは「CPUファンが簡単に取り付けられたり、CPUグリスがシート状だったりと、昔経験したときよりも進化してることにびっくりした」とコメント。子どもたちも積極的に取り組み、予定よりもスムーズに終了した。「めっちゃ楽しかった!」「早くマイクラやりたい!」と子どもたちは興奮気味。休憩時間になってもサポート講師に質問する子どもも多かった。

あしあとの朱梨さん・豆腐さんも会場の子どもたちに質問しながら回っていた
無事に全員の自作パソコンが完成!

マイクラプログラミング体験で、自動化の面白さを知る

休憩を挟んで、いよいよ自分で作った自作パソコンを使ってのマイクラプログラミング体験だ。「自作ははじめて」という子どもたちも、マイクラは使い慣れている子がほとんどだったようで、パソコンを自作しているときの緊張した表情に比べて、プログラミング体験パートでは水を得た魚のようにキーボードとマウスを生き生きと操作していた。

ここからは、小学生向けのプログラミング教室「Tech Kids School」講師のあっこ先生が担当。普段はTech Kids Schoolで、小学生にiPhoneアプリの作り方や3Dゲームの作り方を教えているという。今回は「Minecraft: Java Edition」に、拡張ツール「ComputerCraftEdu」を追加した環境を用意し、プログラミング体験を行った。

休憩を挟んでのマイクラプログラミング体験はあっこ先生が担当

用意された自作パソコンには、あらかじめSSDにWindows 10とMinecraft: Java Edition、ForgeとComputerCraftEduがインストール済み。休憩から帰ってきた子どもたちがすぐにプログラミング体験が始められるように、準備がされていた。

ComputerCraftEduは、自走ロボットの「タートル」をプログラミングで制御できるビジュアルプログラミングツール。進む方向や動作を定義したタイルを配置してタートルに作業させることで、穴を掘ったりブロックを並べたりといった建築作業を自動化できる。マインクラフトには「Microsoft MakeCode for Minecraft」のように命令ブロックを組み合わせてエージェントを動かすプログラミング環境もあるが、ComputerCraftEduはタイルの配置でタートルを制御できるのでより直感的でハードルが低く、プログラミングがはじめてでも迷わず操作できそうだ。

「タートル」を動かすプログラムの使い方を習う

プログラミング体験は、まずあっこ先生からタートルの動かし方やプログラミングの仕方を説明。タートルを配置したら、プログラム画面で命令をタイルで並べていき、右下の三角形を押してタートルに動作させる。

プログラミングのパートは「Tech Kids School」のスタッフが補助
子どもたちはプログラミングのミッションをスムーズに解決

あっこ先生からは「タートルをぐるっと1回転させる」「タートルを8の字に動かす」「山にトンネルを掘る」「3つのブロックのタワーを作る」といったミッションが次々に出題されていく。最終的に子どもたちは、「FOR」「TO」「DO」「END」といった繰り返しの命令も使って、「ブロックを置く作業を100回繰り返して高いタワーを作る」といった難しいミッションにも挑戦していた。

「FOR」「TO」「DO」「END」を使った難しいミッションにも挑戦
「ブロックを100個を自動で置いてタワーを作る」といったミッションもクリア
プログラミングのパートも、朱梨さんらは子どもたちと一緒にミッションに挑戦
ステージ上でもふたりが組み立てた自作パソコンでプログラミングを体験

プログラミングには慣れている子も多かったらしく、コツをつかむと子どもたちはすぐに課題をクリアするようになり、最終的には予定よりも難しい課題にもチャレンジした。あっこ先生は「今日の知識だけでいろいろなものが作れるし、もうちょっと勉強すると自動小麦収穫もできるようになる。ぜひプログラミングを勉強して、自分の力でプログラムを作ってほしい」とまとめた。

子どもたちのプログラミングに一緒に悩んだり感心したりしていた
最後は自分でプログラムを自由に作る時間もあった

ComputerCraftEduは、普段使っているマインクラフトがJava Edition(ただし、最新のバージョンではなくバージョン1.7.10か1.8.9を利用する)なら手軽に組み込めるため、面倒な作業を自動化できるという抜群の利点をすぐ活用できる。目的がはっきりある分、「勉強」としてだけでなく「便利なツール」として活用することでプログラミングを楽しみながら身につけられそうだ。

全員に修了証書を進呈、あこがれのYouTuberと会話も

ワークショップの終了後、参加した子どもたちひとりひとりに朱梨さんと豆腐さんから修了証書が手渡され、ふたりと一緒に撮った記念写真もプレゼントされた。修了証書にあしあとのふたりが子どもたちの名前を書いてもらう間に「パソコン作ったのははじめて?」「どうだった?」と会話する時間もあり、ひとりひとりがあこがれのYouTuberと会話するチャンスもあった。

「修了証書」をあしあとのふたりからもらう時には会話するチャンスも
人気YouTuberとの記念写真にみんなとてもうれしそうだ

イベントの締めくくりに、あっこ先生とつばさ先生、あしあとのふたりが感想を述べた。マイクラプログラミングを担当したあっこ先生は「本当はもっと簡単なミッションにしようと思っていたけれど、みんなが思っていたよりもプログラミングが上手で難しいところまでチャレンジしてくれたので、今後がとても楽しみです。皆さんでぜひプログラミングを続けてほしいです」とコメント。パソコン自作を担当したつばさ先生は「今日、簡単にパパッと1時間で組めたので、これで自作を始めようと思ってくれたらとてもうれしいです。もっとマイクラがうまくなるために、もっとパソコンのことを知ってほしいです」と語った。

講師を担当した2人とあしあとのふたりから子どもたちにメッセージ
参加記念品としてインテルのロゴ入りナップザックがプレゼントされた

パソコン組み立てやプログラミングに参加しながらも、終始子どもたちの間を行き来して声がけしていたあしあとのふたり。朱梨さんは「今日は先生方にも教えてもらいましたが、来ているみんなに、もっと違うことをたくさん教えてもらいました」と子どもたちから刺激を受けたことをコメント。豆腐さんも「自分で作ったパソコンでそのままゲームが遊べるという経験がとても面白かった。自分たちも帰ってから実際にやってみて、そして動画にしてYouTubeに上げたいと思います!」とコメントして場を盛り上げた。

最後に参加した親子と講師全員で記念撮影!

「PC自作フリー体験コーナー」にも科学館に遊びに来た親子連れが多数参加!

司会者が進行するイベントとは別に、予約不要で誰でも参加できるよう用意された「PC自作フリー体験コーナー」には、科学技術館に来館していた親子も多数来場し、パソコン自作を体験していた。

「PC自作フリー体験コーナー」ではパーツメーカー各社が来場者にパソコンの自作やマイクラプログラミングを解説

このコーナーでは、ASRock Incorporation、ASUS JAPAN株式会社、エムエスアイコンピュータージャパン株式会社、日本ギガバイト株式会社の担当者2名がそれぞれ1テーブルずつ担当し、パソコンパーツの組み立てやマイクラでのプログラミングを解説。1組15分程度の体験だが、常に席が埋まり、周囲には人だかりができるほど人気で、自分で組み立てるパソコンが起動する楽しさを体験していた。

実際のパーツを使って組み立て体験を行った

比較的パソコンに慣れた様子のイベント参加者に比べると、フリー体験コーナーの参加者は自作パーツ自体初めて見るという親子が多い印象だ。子どもたちからは「自分で作れるって知らなかった」「もっと難しいかと思っていた」といった感想が聞けたほか、親世代も「自分自身、パソコンの中は初めて見た」「ハンダごてが要ると思っていた」と、意外に簡単なパソコンの自作に驚きつつ、普段あまりない体験を貴重に感じていた様子が見て取れた。

自分たちが組み立てた自作パソコンでマイクラプログラミング体験も実施

来場者の説明にあたった担当者も、「実際はどのメーカーも規格化されているので簡単に自作パソコンは作れるが、難しいイメージがあるようで、思ったより簡単だったという印象を持つ方が多い」「自作をしてみたいという方には、最近はYouTubeでパソコンの自作動画もたくさんあるので、それも参考になると勧めている」と語ってくれた。

子どもたちからの質問にも分かりやすい解説がされていた

パソコン自作が、親子の経験とスキルを上げてくれる体験に

今回のワークショップは、参加できた子どもは非常にラッキーだったと思うほど、機材と講師が充実したイベントだった。「自分にもパソコンは組み立てられる」「自分にもプログラミングができる」という体験は、今後一生、その子にとっての選択肢を増やしてくれるはずだ。

また、イベントを通して子どもたちが“目的思考”になるよう工夫されている点が見て取れた。今回のイベントでの経験を生かすと、「マイクラにModを入れてサクサク動かすにはどのパーツが重要なのか」を調べることも自然にできるし、「マイクラを拡張ツールで自動化して巨大建築を作成する」こともできるようなる。“パソコン自作”と“マイクラプログラミング”の組み合わせで、子どもたちが楽しみながらハードの知識とプログラミングの論理的思考が身につけられる。

面白かったのは同行していた保護者の意見で、「久々にパソコンを組み立てた」という人が何人かいたこと。パソコンの自作ブームの際に組み立てたあと、今はノートパソコンを使っているという人が多いようだ。あらためて目の前で子どもたちが生き生きと組み立てているのを見て「久々にパソコンを自作してみようと思った」という意見もあった。親子でパソコンの自作を楽しめれば、将来的にパソコンや機器への対応ノウハウが大きく違ってくるだろう。

小さなシールをはがす、メモリを押し込むなど、子どもだけの力では難しい作業も多い

子育て中の親なら誰しも経験があると思うが、子どもは感想や効果が遅れて突然出てくることもよくある。目に見える形ですぐに効果を見たくなる私たち親にとってはなかなか苦しいところで、いつ何をやった経験が役に立ったのか、はっきり分からなかったりすることもある。それでも、将来“創造性”や“イノベーション”が求められる彼らにとって、パソコンの構造やパーツの知識は、その上で動くプログラミングの活用に必要不可欠だ。手のひらに乗せた光るCPUの重み、一生懸命スロットに押し込んだメモリー、重厚でかっこいいグラフィックカードなど、自分の手で触って、見た感覚がヒラメキを生んでくれるかもしれない。

今回、自分の息子も参加させてもらったのだが、終了したあとで何度聞いても「面白かった」というあっさりした感想。「これだけ豪華な経験でそれか!」とがっかりしていたのだが、夜になってふと「パソコンを組み立てたら、うちのノートパソコンを起動するときの音が、ファンの音だったんだって分かった」と話してくれた。息子なりにパソコンの構造を理解して、一歩前進したのだと思いたい。

ちなみに、息子の保護者として一緒に参加したゲーム好きの夫。昔はパソコン自作もしていたものの、最近は激務と育児で子どもが寝てからNintendo Switchで遊ぶぐらいでお茶を濁していたのだが、今回のイベントで自作熱が再燃したようだ。息子にも「今度の漢検に合格したらパソコン自作してもいいよ!マイクラが爆速になるよ!」と、ちゃっかり子どもをダシにして自作しようとしている。

親がフォローしながら、一緒にパソコンの自作を楽しむのもよいだろう

例えば、今回のワークショップがパッケージ化されて学校の授業でできれば理想的だが、Zoomミーティングなどを使ったオンラインでの自作イベントでも十分ありがたいのではないだろうか。迷ったとき、講師にすぐ質問できるだけで、失敗も挫折もかなり減るだろうし、安心感は大きく違う。Webカメラごしでも、子どもたちみんなで一斉にワイワイ組み立てると楽しそうだ。

パソコンが“趣味”から“生活必需品”に変化したことで、次世代を生きる子どもたちにはより広く、より早期にハード面の知識が必要になってくるかもしれない。今回のようなワークショップを、より多くの子どもたちに経験してもらえる機会が今後も増えることを期待したい。

[制作協力:インテル株式会社]

赤池淳子

1973年東京都生まれ。IT系出版社を経て編集者兼フリーライターに。雑誌やWeb媒体での執筆・編集を行なっている。Watchシリーズでは以前、西村敦子のペンネームで執筆。デジタルカメラ、旅行関連、家電、コミュニティや地域作り、子どものプログラミング教育などを追いかけている。