こどもとIT

小学生チーム5組によるガチンコ対決、熱いプログラミングバトルを手に汗握って観戦してきた

――「GPリーグ ヤマハ発動機プログラミングコロシアム 2018年夏の1都3県大会 決勝大会」レポート

暑さもようやく落ち着いてきた2018年9月22日、三井ショッピングパーク「ららぽーと新三郷」にて、「GPリーグ ヤマハ発動機プログラミングコロシアム 2018年夏の1都3県大会 決勝大会」が開催された。地区大会を勝ち抜いてきた5組の小学生チームによるプログラミング対決だ。多くの家族連れで賑わう商業施設で行われた熱い戦いの様子をお届けする。

夏の地区大会を勝ち抜いた5チームが集結

既に記憶も薄れがちだが、今年2018年の夏は暑かった。その最中、一都三県の各地区で小学生チームによるプログラミング対決「プログラミングコロシアム」の地区大会が行われていた。
主催した団体は、昨年9月から千葉県でこの「プログラミングコロシアム」を開催していた「GPリーグ実行委員会」。この4月から全国組織へと活動を広げており、この夏の一連の大会には、ヤマハ発動機株式会社が公式スポンサーとして参画している。
9月22日、各地区大会を勝ち抜いたチームによる決勝大会が、大型商業施設「ららぽーと新三郷」屋内広場に設けられた特設会場で華やかに開催された。
それぞれの地区大会で優勝したチームは次の通りだ。東京が東西2ブロックのため、一都三県だが、計5チームとなっている。1チームは小学生4名からなる。5つのチームは4種類の競技で対決し、総合得点で順位が決定する。

東京東地区NAKANO
東京西地区EXGP
埼玉県PCファイターS
千葉県サイバープロ
神奈川県ウォーターベリー

オープニングセレモニーでは、公式スポンサーである「ヤマハ発動機」からモビリティやテクノロジーを紹介する短い動画が流され、参加者の子供達を激励した。また、当日は決勝大会の前にヤマハ発動機の最新業務用ドローンのデモフライトも「ロボティクス未来塾《LIVE!》」として行われていた。

子供達にエールを送るヤマハ発動機株式会社 ロボティクス事業部 FA統括部 西川愛子氏
展示された最新鋭産業用ドローン「YMR-08」

最初のステージはScratchによるお題対決、テーマは「運動会」

それでは決勝戦当日の様子を振り返りながら、競技の内容を見ていくことにしよう。
最初のステージは、今や子供達のプログラミングの定番の一つ「Scratch(スクラッチ)」による対決だ。子供達は出されたお題を受けて作品をその場でゼロから作り上げ、それを審査員が評価して点数を付けるというシステム。評価は、表現力と技術力それぞれ5点の計10点満点で評価される。
制限時間は、わずか20分。そして出されたお題は、季節柄もあって「運動会」である。
各チームの先鋒となる子供達がステージに立ち、大勢の観衆に見守られて同じ条件のPCでプログラミングにとりかかっていく。各PCの画面はステージ上のモニターにそれぞれ映し出されているのだが、Scratch上のプログラミングの様子が実にスムーズだ。全員が、お題を聞いた瞬間にどういうものを作るのか、ある程度のイメージができているようだ。

Scratchのプログラミングを進める子供達
お題に沿った作品を、それぞれがScratchでプログラムしていく

どの作品もストーリーのあるアニメーションを中心にゲームの要素を加えたものまで、リレー、綱引き、玉入れといった運動会の競技をユーモアあふれるテイストで作られたものばかりだ。それぞれ個性ある、とても20分でゼロから作ったとは思えないクオリティである。

作品の紹介も子供達自身によって行われた

審査員からどういう評価が下されるか、筆者も興味深く拝見していたが、結果は4チームが同じ9点、残る1チームも8点というまさに僅差という納得の結果だった。

MakeCodeによるMinecraft早抜け対決は、まさかの展開に

続くセカンドステージはMakeCode(メイクコード)対決。ここでいうMakeCodeは、Microsoftが提供しているMakeCode for Minecraftのことを指す。Minecraftといえば小学生男子が大好きなサンドボックスゲームだ。単なる遊びだけでなく、3Dの世界の物作りやプログラミング的な体験にもつながるソフトウェアとして注目されている。
このMakeCode for MineCraftは、MinecraftのWindows 10エディション及び教育向けのEducation Editionと連携し、ブロックとJavaScriptによるプログラミング環境を提供するものだ。
このステージでは、あらかじめ運営側で用意した同じワールド(マインクラフトの中の疑似世界)を使って対決する。ワールドの中には、溶岩など冒険者を阻む障害がいろいろと仕込んであり、ワールド内のあるポイントまで誰が一番早く移動してゴールできるかが課題だ。
普通にMinecraftをプレイするなら、自分で操作して道を作ったり邪魔な異物を破壊するなどして進めばいいわけだが、ここはプログラミングの対決の場である。つまりゴールに行きつけるようにワールドを進むための手順を考えて、それをプログロラミングしていくことになる。
いざ対決がはじまると、各メンバーの画面にはプログラムが実行され、ワールドの様子がモニターに映されている。その動きは実に目まぐるしく、見守る観衆にとっても、何か凄いことをしているのだけど、何が起こっているのかよくわからないという状況。筆者も5人の子供達と5つのディスプレイの様子を見比べて追いかけるのはかなり困難だった。

目まぐるしく代わるプレイヤーの画面に、観衆からはため息がもれる

この状況で、真っ先にゴールしたのが「サイバープロ」(千葉代表)チーム。この難題をクリアし、トップで見事ゴールにたどりつき、会場の拍手喝采を浴びていた。
この課題、どうやら想像以上に難しかったようで、結論からいうとクリアできたのは一抜けしたチームだけ。惜しいところまで行ったものの、残念ながら残り4チームは時間切れの失格となってしまった。
この段階で、合計得点で頭一つ抜け出したのが、「サイバープロ」チーム。このまま、逃げ切ってしまうのかという空気もあったのが、さすがに決勝戦の対決である、そう簡単には行くわけもないのであった。

手に汗握るドローン対決へ

続くサードステージの課題は、ドローンである。決してドローンの操縦技術を競うわけではなく、プログラミングしてドローンを飛ばすという対決である。
競技の内容はこうだ。まず、ドローンを垂直上昇して離陸、最初の輪を水平移動して通り抜け、高さの違う2つ目の輪を通り抜けて、地面に置かれた輪の中に着地させ、機体の脚が入っていればクリア、というコース移動をプログラミングする。

サードステージの課題のコース

一見簡単そうにも見える課題だが、小型のドローンを操縦ではなくプログラミングだけで一連の動作をトラブルなしで行うのは、実は意外と難しい。というのも、会場は屋内とは言え、わずかながらに空気の流れはあり、小型のドローンにどうしても影響が出てしまう。その影響をどう想定してプログラミングするかがポイントだ。また全チームが同じ種類のドローンを使うとはいえ、機体の個体差という問題もある。子供達は自分の機体の癖を把握して、この課題をクリアするプログラムを作らなければならないわけだ。
このように、これまた実はかなり難しい課題だったこともあり、ドローン対決の参加者は、ファースステージのScratch対決が始まったタイミングから、既に併設されたドローン用ゾーンで、機体の確認とプログラムの準備を始めていたのだ。
対決の時間となり、各チームのドローンが1台ずつ課題コースにチャレンジする。子供達にできることは、プログラムを実行するだけで、あとはドローンがどう動いてくれるのか、各チームのメンバーも観衆も文字通り固唾を呑んで見守る対決となった。

早々と準備を進めていた子供達とドローン対決の様子

結果的には、セカンドステージでリードした「サイバープロ」チームが、このサードステージでは、逆に涙を呑む結果となった。つまり、なんと5つのチームがほぼ同点という結果となったのである。

ここまでの得点状況、まさに横一線という感じ

白熱するファイナルステージに登場したのは、懐かしの“あの”キャラクター

もはや5つのチームのどこが優勝してもおかしくない状態で迎えたファイナルステージ。これまでの3つのステージは個人戦だったが、最後はチームメンバー全員参加の団体戦となる。
ファイナルステージで使われるのは「HackforPlay(ハックフォープレイ)」というツール。プログラミングをしながらゲームをクリアしていくというユニークな内容だ。今回はこの決戦用に特別なゲームステージ4つが用意され、しかも登場するキャラクターやアイテムは、あのカプコンの名作ゲーム「ロックマン」とのコラボだという。
ロックマンは今年30周年ということもあり、参加している当の小学生達より観衆のお父さん世代の方がこの説明にテンションが上がっていたようだ。
対決の方法は、4つのゲームステージそれぞれをチームメンバーがリレー形式で順にクリアしていき、最終ゲームステージをクリアした早さで順位が決まる。
子供達にはまず攻略する方法を考えるための作戦会議の時間が与えられた。各チームが熱心にパソコン画面を見ながら相談する間、かけつけた「HackforPlay」開発者である寺本大輝氏から詳しい解説が行われた。各ゲームステージには、いずれも攻撃してくるキャラクターもおり、ロックマンをどう動かして避けながら敵キャラを攻撃するか、その攻略方法を考えるのがそもそも大変そうだ。しかも、それに則ったプログラミングをステージに立つプレッシャーの中で作っていかなければならないのだ。これは、見守るだけの大人達も聞いていて胃が痛くなるような話だった。

HackforPlay開発者の寺本大輝氏
ロックマンとコラボしたファイナルステージの説明

攻略方法の検討時間も終わり、各チーム全員が揃っていよいよ最後の対決に向かう。1人ずつが順番にゲームステージの攻略を始めていくのだが、なにしろ、ぶっつけ本番でプログラミングをしていくため、1つのミスがあるだけで攻略は失敗してしまう。それでも、驚くほど手際よく順調にゲームステージが攻略されていき、ついにアンカーとなるメンバーが最後のゲームステージに挑戦しはじめる。
このステージに登場するのはロックマンではお馴染みの「イエローデビル」という難敵だ。身体をバラバラにして移動し、しかも弱点が1カ所しかないため、その動きを読んで的確に攻撃をしかけるタイミングがとても難しそうだ。それを操作して実行するのではなくプログラミングしながらなのだから、なおさらである。さすがにこの難敵相手には、各チームとも苦戦している様子だった。

難関の最終バトルステージに取り組む子供達、イエローデビルには各チームが苦戦の様子

そして、ついにこの難敵を突破してクリアしたチームが出た。埼玉県代表の「PCファイターS」だ。これにより、総合得点でもトップとなり見事に優勝を決めたのだった。

真っ先にクリアしたのは埼玉県代表の「PCファイターS」。思わず肩を組む子供達

惜しくも準優勝となったのが千葉県代表の「サイバープロ」。善戦した各チームには会場から暖かい拍手と励ましの言葉が贈られていた。

表彰式を終え、晴れやかな各チームの様子

全国へと広がる「プログラミングコロシアム」

GPリーグ実行委員会は、競技会「プログラミングコロシアム」だけでなく、そこを目指す子供達の地域におけるプログラミングを通した未来の学びの場を広げるための様々な施策を提供している。
この決勝大会でも、併設されたワークショップ「プログラミング・ラーニングスタジオ」が同時開催され、配布された整理券もあっという間になくなる人気だったとのこと。

DeNAの「プログラミングゼミ」
モノ・グラムの「プロッチ」
Hour of Code
オフィス・ゼロの「プログラぶっく」

また当委員会では、この夏の一連の大会に加えて、今後は全国規模の大会へと活動の幅を広めていく予定だ。GPリーグサポーターサイトから、サポーター登録(対象は小学生)することで、アプリを使った学習や最新情報のチェックができるという。興味のある方は関連リンクから是非覗いてみて欲しい。
また、今回使われたロックマンの特別ステージは、練習用として現在は誰でも試すことができるようになっている。子供達の熱戦を追体験してみたい方は関連リンクから是非挑戦してみてはどうだろう。ちなみに筆者も挑戦しようとしてみたものの、攻略の糸口もつかめず若干涙目状態である。

新妻正夫

ライター/ITコンサルタント、サイボウズ公認kintoneエバンジェリスト。2012年よりCoderDojoひばりヶ丘を主催。自らが運営する首都圏ベッドタウンの一軒家型コワーキングスペースを拠点として、幅広い分野で活動中。 他にコワーキング協同組合理事、ペライチ公式埼玉県代表サポーターも勤める。