Edvation x Summit 2018レポート

元Google人事担当者による企業と人材を探る講演「『これからの世界』で成果を出すニューエリート」

――EdTechの未来と取り組みの今を知る「Edvation×Summit 2018 Day2」レポート

「Edvation×Summit 2018」は、デジタルテクノロジーによる教育のイノベーションに取り組む事例を持ち寄り、展示会やワークショップ、講演やパネルディスカッションを実施する教育イノベーターの大型イベントだ。一般社団法人教育イノベーション協議会が主催し、「新しい教育の選択肢を提示し、既成概念にとらわれない教育イノベーターを生み出すこと」を目的として、紀尾井カンファレンス・千代田区立麹町中学校の2会場で2018年11月4日~5日の2日間にわたって実施された。2018年度の教育イノベーションのまとめと振り返りの意味を込めて、本イベントの講演とパネルディスカッションから特に興味深かったものをピックアップしてレポートする。

2000年に来日し、日本のGoogleやモルガンスタンレーで人材育成に関わった経験を持つピョートル・フェリクス・グチバチ氏による日本語での講演。急速に変化していく世界の中で求められる「これからの人材」になるために必要なポイントを解説した。

プロノイア・グループ株式会社 代表取締役/モティファイ株式会社 チーフサイエンティスト 取締役 ピョートル・フェリクス・グチバチ氏

まず、他国に比べて日本には「ユニコーン企業」(未上場の10億ドルに育ったスタートアップ)が非常に少ないと指摘。「一見愚かなアイデア」や「経験がない創立者」などのユニコーン企業の共通点を紹介し、「これからは『Learn』(新しいやり方を素早く学習する)と『Un-Learn』(学びほぐす。時代遅れのやり方を忘れる)ことが大切」だと説明した。

成功した革新的なスタートアップ「ユニコーン企業」の特長

そして、「新しいビジネスの考え方」のヒントとして、経営する企業の形はプラットフォーム作りになり、利他的なビジネスであることが重要になると解説。組織は「枠」ではなく「軸」になり、他組織と協業することが当たり前になるほか、「毎日学んで走りながら考える」ことが必要だという。

また、上司は部下の特性を生かすポートフォリオマネージャーとしての役割が求められると説明。「Googleの全マネージャー育成プログラムが『同情』『共感』『思いやり』を教えている。人を承認して感謝しないと人は育たないし、がんばらない」とし、「自己実現はイコール幸せ。そのためには自己認識が必要で、それを回りに自己開示することで実現する。上司はその自己実現をサポートしていってほしい」と語った。

上司は部下の特性を生かすポートフォリオマネージャーとしての役割が求められる
Googleのマネージャー育成プログラムで必ず「同情」「共感」「思いやり」が教えられるという

「自己実現をすることで人は自己肯定感を得られる。教育ではそこに期待したい。100点を取る子を育てるだけでは現状に満足する“ゆでガエル層”を作っているに過ぎない。これから世界の未来を作るには、現状に満足せず反抗的にも見える“変革層”や“アルケミスト層”(=ニューエリート)が必要」と語る。日本の教育機関は「受動的な顧客」を作っているが、これからは共に作る「能動的な人材」が必要だというのだ。

現状に満足しない「変革層」や「アルケミスト層」がニューエリートとなる

また、日本のニュースが事件や事故を伝えるだけで内容が浅いこと、もっと個人もSDGsを意識する必要があるとなども指摘。「AIに負けないためには、高い専門性を組み合わせて考えたり、いろいろなコミュニティの橋渡しができる人材になればよい」と解説した。

個人の世界とのかかわりもSDGsを意識していく必要があると説明

最後にピョートル氏は「世界に何をもたらしたいか、世界から何を得たいかを理解する必要がある。それを達成した状態が自己実現。何をギブアンドテイクしたいのか頭の中を整理して、明日から実行してほしい」と会場に訴えかけ、講演を締めくくった。

教育機関は受動的ではなく能動的に社会とかかわれる人材の育成が必要だという

赤池淳子

1973年東京都生まれ。IT系出版社を経て編集者兼フリーライターに。雑誌やWeb媒体での執筆・編集を行なっている。Watchシリーズでは以前、西村敦子のペンネームで執筆。デジタルカメラ、旅行関連、家電、コミュニティや地域作り、子どものプログラミング教育などを追いかけている。