さりげなく、圧倒的。堅牢さ、軽快さ、高音質を実感する1台

変わらない日常をサポートする、新フラッグシップ「arrows NX F-01J」

2016/11/29 | 日沼諭史

新しいガジェットを手に入れる時は、今のデジタルライフがより良いものになる期待を少なからずしてしまうものだ。大画面テレビを買えば高画質映像を堪能できると思うだろうし、モバイルバッテリーみたいな小さなアイテムでも、デジタル機器を長時間、効率的に使えるようになるだろうと考える。各社が新機種開発にしのぎを削る最先端技術満載のスマートフォンなら、なおさらその気持ちは強くなるに違いない。

2016~2017年の冬春モデルとしてNTTドコモから発売された富士通製Androidスマートフォン「arrows NX F-01J」も、最新の技術を投入した紛れもないフラッグシップ端末であり、もちろんそのような”期待”をしてしまう部分はいろいろある。

しかし、生活をより良く変えるというより、スマートフォンが本来の生活の邪魔にならず、いつもと変わらない日常を送れるように、派手に目立つことなくひっそりと影で支えてくれる、というのもarrows NX F-01Jの一面だ。そんな新しいarrows NX F-01Jが今回どんな風に進化したのか、紹介したい。

薄いのに壊れにくい、さりげなく圧倒的な頑丈さ

F-01Jを手に取って初めに受ける印象は、「薄い!」という驚きだ。厚みはこの冬春モデルで最も少ない、唯一の7mm台となる7.7mm。最厚部も最薄部もなく、全体が7.7mmという薄さに仕上げられている。これだけ薄いにもかかわらず、最近のarrowsシリーズで採用されている、米国防総省の装備品調達基準であるMIL規格14項目に準拠。しかも今回はさらなる耐久性アップを図っている。

7.7mmという数字以上に薄さを感じる造形

ディスプレイ側の側面と上部の外周枠には、7000シリーズと呼ばれる硬度の高いアルミニウム合金が張り巡らされている。端末の側面を握ると、剛性感のある雰囲気が指や手のひらに伝わってくるのを確かに感じる。表面に特殊な皮膜を作り、耐久性などを高めるハードアルマイト加工も施され、前モデルのarrows NX F-02Hで採用していた端末上部のアルミパーツと比べて傷の付きにくさは2倍になっているという。

外周には高硬度の7000番台のアルミニウム合金が使われている

さらに、端末内部には板状のステンレスホルダーと、サイドにリブ状に形成したステンレスフレームを設けて、端末の曲げに対する強さを大きく高めている。外周や内部構造の工夫がどれだけ端末としての強さに結び付いているかは、実際に硬い地面に落とさない限り実感できないけれど、1.5メートルの高さから26方向でコンクリートに落としても問題なく動作するという試験結果も公表されていて、端末としての頑丈さと安心度は抜群だ。

数ある頑丈さを測る指標のなかでも、特に画面割れへの強さにフォーカスしているのが、今回のF-01Jの特徴。ディスプレイガラスが割れたりヒビが入ったりする原因は、主に端末落下時に加わる衝撃により、ディスプレイガラスが歪むためとされていて、曲げに対する強度が上がったのはその点で大きなメリットがある。

また、エッジ部分をディスプレイ面より0.3mm高くして、伏せる形で落ちた時にも画面が接地しないようにする工夫も盛り込まれ、間違いなく画面割れが発生しにくい構造になっている。画面が割れたままのスマートフォンを使っている人を街でわりと頻繁に見かけるが、あの悲惨な姿になる可能性は、F-01Jの場合限りなく低いと言えるだろう。

エッジが0.3mmだけ盛り上がっており、このおかげで画面を下にして地面に落ちても、傷や割れが発生しにくい

ちなみに端末側面を見ると、中央に溝があり、前面側と背面側とで2層に分かれている。このような溝のある形にしたことで、ホールド性も確実にアップしたと感じる。arrows SV F-03Hもそうだったように、側面をラウンド形状にして、スタイリッシュさや手ざわりの良さを重視している端末も多いが、その場合はやはり滑り落ちやすいのが難点だった。F-01Jでは引っかかり感をあえて残したような形状としているせいか、「いつかやっちゃいそう」な不安感はゼロだ。

2層構造を作り上げているこの溝のおかげで、手に持った時には不快でない適度な引っかかり感がある

やりたいことがすぐにできる、“こぎ出し”から“巡航”までの軽快さ

新しい機種が出るたびにチップセットの性能が向上し、メモリ容量も増え、その分普段の端末動作やアプリはどんどん”サクサク”になっていく。あえてその少しばかり使い古された言い回しを使わせてもらうなら、今回のF-01Jもやはりサクサクさは確実に増していて、メールチェックしようとGmailアプリを起動した瞬間から、スピードアップを感じ取ることができる。

イメージとしては、自転車のギアを1、2段軽くしているのに、今までよりスピードを乗せたまま”巡航”できるような感じ、と言えばよいだろうか。この軽快感をいっそう強めている理由の1つに、改善された虹彩認証があることは間違いない。ロック解除などに使われる虹彩認証用のカメラのフィルターとアルゴリズムがアップデートされ、実使用感としても認識率と認識速度がかなり向上している。いわば端末の使い始め、”こぎ出し”からスピーディーなのだ。

センサーとアルゴリズムがアップデートした虹彩認証

例えばF-02Hまでの虹彩認証では、画面にガイド表示される丸い認識エリアに、ある程度正確に自分の目が入るようにしないと認識してくれなかった。ところが、F-01Jでは瞳が丸い認識エリア外であっても一瞬で読み取ってくれたりもする。場合によってはロック画面がほとんど表示されずにロック解除できてしまうこともあり、一段といつもの持ち方に近い自然なスタイルで虹彩認証が行なえるようになった。

丸く示される認識エリアに目が合っていなくても、瞬時にロック解除される

虹彩認証がよりスムーズになったおかげで、カメラの使い勝手の良さもいっそう際立っている。ロック画面でカメラアイコンをドラッグすれば、認証なしにカメラを起動できるのはご存じの通り。でも、個人的には撮影した直後の写真を、過去の写真とともに確認したいことがあるので(ロック画面から直接カメラを起動すると、その時の撮影写真しかプレビューできない)、できればいったん虹彩認証でロック解除してからカメラを起動したいのだ。

右下のアイコンをドラッグすればロック画面からすぐにカメラを起動できるが......

このように過去の写真は見られないので、できればロック解除してからカメラを起動したい

F-02Hまでは、屋外でとっさにカメラを使いたい時に、明るすぎる場所だったりして虹彩がうまく認識されず、仕方なくロック画面から直接カメラを起動したり、虹彩認証を諦めてバックアップの認証方法となるパターン入力をしてからカメラを起動していた。つまり、単純にカメラ起動まで時間がかかっていた。

しかし、F-01Jでは虹彩認証の認識速度が大幅にアップしたため、認証後、カメラを起動して撮影する、という手順でも全く苦ではない。もちろん撮影するだけならロック画面でカメラアイコンをドラッグして起動する方が早い。でも、過去写真を確認したいかどうかも考えて起動方法に迷うくらいなら、最初から虹彩認証の後にカメラを起動すると決めておいた方が楽だなあ、と思うくらいには虹彩認証がスピードアップしている。

そして、細かいながら、カメラアプリ自体も操作性面で進化している部分がある。それは、左右フリックによる写真撮影・動画撮影の切り替えだ。多くの場合、写真撮影しながら、隙があれば動画も撮りたいと思っていたりする。もしくはその逆もあるだろう。これまでは写真・動画の切り替えにメニュー操作が必要になっていたが、F-01Jではカメラ映像部分を左右フリックするだけなので、シチュエーションに応じた切り替えが楽ちんになった。

左右フリックで写真撮影と動画撮影を切り替えられるように。地味だがうれしい改善

描写力の高い2300万画素のカメラ。オートフォーカスも高速化された

求めた分だけ応えてくれる、クリアな音質と力強いドライブ感

新しいF-01Jの大きな目玉と言える要素の1つが、ハイレゾを始めとするオーディオ出力の高音質化への取り組みだ。従来機種でもハイレゾには対応していたが、今回は音響機器メーカーのオンキヨーと共同開発した音声出力回路を搭載し、イヤフォン出力には専用チューニングが施された。ある意味本格的な”オーディオ機器”としての一面も加わったわけだ。

手持ちのヘッドフォン(SONY MDR-Z7)とイヤフォン(MEE audio Pinnacle P1)を使い、前モデルのF-02Hでよく聞いていた曲をかけると、一皮むけたかのような、クリアで明るさのあるサウンドになっていることがすぐに分かる。もったりしていた低音は、頑張らずに”すっ”と軽く出し切る感じになり、中音域はとにかく透明感があって、ボーカルは前面にしっかり出てくる。そこから高音域にかけての解像感は、スマートフォンとは思えない粒立ちだ。

ハイレゾ対応ヘッドフォンで、明らかにわかる音質のクリアさ

1つ例を挙げると、e-onkyo musicで配信している3Dバイノーラル音源「3D Binaural Sessions at Metropolis Studios」のトラック5「Real Love」(FLAC 96kHz/24ビット)では、女性ボーカルの生々しさはもちろんのこと、歌声の乾いた雰囲気と、その歌声がスタジオの壁に反射したわずかな残響音に含まれる、少しざらついたテクスチャー感みたいなものまでありありと伝わってくる。

プリインストールの「メディアプレイヤー」でもハイレゾは楽しめるが......

フルに堪能するなら「Onkyo HF Player」などの本格的なハイレゾプレーヤーを使いたい

音の重なりが多いオーケストラでは、解像感の高さのおかげで新たな一面を発見できる時もあれば、全体的に明るく、元気のいい音の出方になるために、しっとりとした曲調なのに音の輪郭がはっきりし過ぎるきらいがあったり、弦楽器が慌ただしく感じてしまう時もあるように思う。

けれど、いずれにしても低音から高音まで余裕で鳴らしきるドライブ感の強さは、これまでのarrowsシリーズにはないもの。性能の高いヘッドフォン・イヤフォンであるほどその実力を感じ取れるだろうけれど、まずは手持ちのもので確かめて、より”いい音”が欲しくなったら徐々にグレードアップしていくのもおすすめ。そのグレードアップに応じた音を響かせる、ポテンシャルの高さがF-01Jには十分にあると感じる。

日常に溶け込みながら期待以上の働きをするスマートフォン

arrows NX F-01Jの薄さと、画面割れや故障に強い堅牢さ、虹彩認証の改善やカメラの操作性をはじめとする全体の動作の軽快感、そして元の音をありのままに聞かせる音質の向上。これらは全て、普段なにげなく手に取って使っているスマートフォンの基本的な性能や用途の延長線上にある要素だ。

延長線上だけに、特に薄さ、堅牢さ、操作性の良さについては、これがあるからといって日常生活が一変するわけではない。今まで通り、当たり前のことを当たり前のようにこなすスマートフォンとして使うことができるだけだろう。ただ、自己主張控えめに、いつもの生活スタイルを乱さずにサポートしてくれるそれらの機能は、万が一の時、必要な時に、期待以上の機能と性能を発揮してくれる。

一見、薄くて派手さのないデザインに見えるかもしれないけれど、実はこの中には日常生活に必要なものと、万が一の時にフォローしてくれる機能が、全て、丸ごと詰まっている。さらに、音質向上という底力のある性能もそこに加わって、上品なエンターテイメントツールとしても仕上がった。

スマートフォンのある生活をことさら意識せずに、しかし日常生活とデジタルライフが結果的により良くなる。arrows NX F-01Jは、そんなさりげない縁の下の力持ちとしてそばに置いておきたくなる存在だ。

arrows NX F-01J