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苦悩する東証~リキッド前社長逮捕の余波

  前社長の大神田正文容疑者が逮捕されたリキッド・オーディオ・ジャパン(4740)の扱いを巡って、東京証券取引所の首脳陣が悩んでいる。同社は、暴力団との関係など、さまざまなな好ましくない噂が流れていた。東証も本音では上場廃止にしたいところだが、投資家は株を処分することすらままならなくなってしまう。ベンチャーに積極的な資金調達の場を与えるため鳴り物入りで新設された新市場「マザーズ」の、記念すべき第1号上場企業だったこともあり、取り扱いを誤ると競争相手のナスダック・ジャパンに決定的な差をつけられる恐れも。東証の苦悩は深まるばかりだ。

  ●廃止は「検討もしていない」
  リキッド・オーディオの扱いについて、東証のこれまでの公式コメントは「上場廃止は検討もしていない」というもの。確かに、これまでも現職を含め背任行為などによりトップが逮捕された上場企業はいくらでもある。

  決して好ましい事態ではないものの、反社会的な行為だけを理由に、いちいち上場廃止にしていたら株式市場は成り立たない。前社長が逮捕された同社について、この事件だけで上場廃止はあり得ないという東証の判断は、妥当なものかもしれない。

  ただ、リキッド・オーディオについては、マザーズへの上場前から、東証内部でもさまざまな異論があった。このため、東証の中堅幹部からも「だから言ったじゃないか」などの批判が噴き出している。

  ●不十分な反社会的勢力への対抗策
  マザーズ開設にもともと懐疑的だった証券会社からも「やはり東証はマザーズなどに手を染めるべきではなかった」といった批判の声が上がっている。流動性の不足など市場の機能そのものについても、問題を指摘する声が後を絶たないだけに、今回のイメージダウンで競合相手のナスダック・ジャパンが密かにほくそえんでいることは想像に難くない。

  東証も、マザーズ開設後に司法当局との連携を強めるなど、適正化に向けた対策をとっており、企業舎弟などが上場時に紛れ込むリスクは低くなっている。しかし、上場後の買い占めなどによる反社会的勢力の経営権掌握などのケースに取引所が対抗するための手段については、依然として心もとない状況が続いている。

  もともと日本経済に豊富なアングラマネーが存在する限り、100%万全ということはあり得ない。今回のリキッド・オーディオについては、東証も「司法当局の解明を待つしかない」との姿勢だが、今回の事件が日本のベンチャーIPOの将来に、重要な課題を投げかけたことだけは間違いない。

■URL
・リキッドオーディオの前社長、監禁容疑で逮捕
http://watch.impress.co.jp/finance/news/2000/10/25/doc806.htm
・リキッドオーディオ・ジャパン
http://www.liquidaudio.co.jp/
・リキッドオーディオが突然の社長交代
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/08/doc373.htm

(舩橋桂馬)
2000/10/27 12:21
3/30(金)
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