FINANCE Watch
トップページに戻る  
記事検索
源泉分離の存続、2度おいしい兜町~クロス推奨で“ミニ特需”

  政府・与党が個人の株式譲渡益にかかる源泉分離課税の存続方針を打ち出し、証券界は「影響力のある有力者(の支持)が増えているのはいいことだ」(土田正顕・東証理事長)と胸を撫で下ろした。株価は年初来安値の水準で低迷を続け、「源泉分離が廃止されたら、個人投資家は二度と市場に戻って来ない」(大手証券)と危惧していたからだ。しかし、兜町は「源泉分離の廃止反対」を叫びながら、一方では大口の個人投資家に対して「廃止に備えてクロス売買を」と推奨しており、相変わらず強かな商売を続けている。

  ●不安心理に付け込み
  源泉分離が廃止され、申告分離課税に一本化されると、投資家は株式の取得価格を明確にする必要がある。遺産相続した株式などでは、取得価格が不明なケースがあり、投資家は不安を抱いた。多くの証券会社が不安心理に付け込み、「源泉分離が廃止される2001年4月の前に、保有株式は一旦売却して、買い戻したほうがよい」とクロス取引を、盛んに推奨。ある中堅証券では、お年寄りに電話をかけまくり、クロス売買で落ちる手数料を荒稼ぎし、「ミニ特需」と喜んでいるという。

  しかし、大蔵省の担当者は「取得価格が不明なケースはごく稀なのだが」と首をかしげる。同省、国税庁、自治省が共同で策定したパンフレットによると、保有株券の裏面に名義書換があり、取得時期が分かれば、価格は当時の新聞記事などを基に価格を算定できる。さらに、名義書換がなくても、「日記帳や預金通帳などで取得時期が把握できればよい」というから、相当に緩い基準である。

  ●早急に総合金融税制の確立を
  焦ってクロス取引を行った投資家の中には、本来こうした対策が不要なケースが相当あるとみられる。目先の手数料ほしさに、回転売買もどきのクロスを推奨するなら、個人投資家は本当に市場に戻らないだろう。

  そもそも、源泉分離の存続は株価に対しては、一過性のカンフル剤にしかならない。ある証券団体の幹部は「廃止延期が1年程度なら、株価は反応しないだろう」と指摘する。日経新聞が1面トップで「廃止延期方向」を伝えた17日も、市場は冷たくあしらい、18日の前場では平均株価が1万5,000円割れとなった。一方、“秒進分歩”の金融商品の複雑化に、現行税制では対応できないのも事実。目先の対症療法ではなく、政府・与党は預金などを含めた総合金融税制の確立に向け、道筋を付けるべき段階である。

■URL
・日本証券業協会
http://www.jsda.or.jp/
・株譲渡益の源泉分離課税は当面存続へ
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/10/17/doc724.htm

(兜太郎)
2000/10/18 11:34
3/30(金)
[特集] ご愛読に感謝~「FINANCE Watch」高アクセス記事集
[HOT] 契約流出招いた同業他社の誹謗中傷~東京生命破綻の内幕
[産業] NEC、グループのSCMを高度化~専門子会社設立
[ネット] セブン-イレブンがアリバのシステムを導入~グループのコスト削減狙う
[データ] 2000年の国内PCベースWS出荷が10万台突破~IDCジャパン調べ
[産業] コンテンツファンドをトータルプロデュース~C&RとJDC
[ネット] 地域密着ポータル「関西どっとコム」を設立~関西電力、博報堂など
[寄稿] 『瓦版一気読み』の連載を終えて
[連載] コラム 瓦版一気読み~最後の日「別れつらい」・・・
プライバシーについて | 編集部へのご連絡 Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.
本サイトの内容につきましては万全を期しておりますが、提供情報がシステム等に起因する誤りを含んでないこと、すべての事柄を網羅していること、利用者にとって有用であること等を当社及び情報提供者は保証するものではありません。
当社及び情報提供者は利用者等が提供情報に関連して蒙った損害ついて一切の責任を負いません。投資等の判断をされる場合は、他の資料なども参考にしたうえで、ご自身の判断でお願いします。