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“解体”の危機感から高まる電通局批判~郵政省

  郵政省内部で、IT時代の競争政策を担当する電気通信局への批判がにわかに高まっている。引き金は、新電電や外資系通信事業者が同省に寄せた「独立規制機関」の設立要望。電気通信行政の「政策」と「規制」の分離を求めるこの要望は、文字通り“郵政省解体”を意味し、それは競争政策に及び腰な電気通信局に対するブラフ(脅し)でもある。省内では、若手幹部を中心に危機感が募っており、来年1月の省庁再編で新設される総務省への移行を待たずに、局長・部長の更迭を求める声さえ上がってきた。

  ●OECD加盟国で異例の通信行政
  「これはもたない」―。経済協力開発機構(OECD)のリポートを見た郵政省の若手幹部は、ため息を漏らす。海外の電気通信行政は、法律や予算を定める政策当局と、料金認可や接続に関する紛争を裁定する規制当局に分かれているのが一般的で、同リポートにはOECD加盟29カ国中、分離されてないのはトルコ、ポーランド、韓国、日本の4カ国と記されている。もっとも、韓国の規制セクションには一定の独立性が担保されており、事実上は3カ国。「これは日本の電気通信行政が途上国並みの水準であることを示唆するもの」と、日本テレコムの幹部は強調する。

  その日本テレコムをはじめ、東京通信ネットワーク、米MCIワールドコム、欧州企業の団体である欧州ビジネス協会などは、郵政省がIT時代の競争政策について募ったパブリックコメント(意見募集)に、軒並み「独立規制機関」の設立を訴えた。これが広がっていけば、今の郵政省が“もたない”のは必至。その危機感は若手幹部に強く、一部には天野定功電気通信局長(67年入省)の更迭論も上がり始めている。

  ●袋小路で不満噴出も
  電気通信局長は、省内ナンバー2の事務次官待ちポスト。しかし、NTT接続料の引き下げをめぐる日米交渉で当事者能力を失った天野局長には不安の声が高まり、7月の異動の際には、多くの課長が次官室に赴いて“天野昇格見送り”を説く一幕もあった。この時は谷公士次官(64年同)の続投で事態は収まったが、郵政省解体の危機感から一気に電気通信局への批判が吹き出た格好だ。

  本来、新電電や外資系通信事業者にとって、「独立規制機関」以上に優先度が高い要望は「非対称規制」の導入。非対称規制とは、市場支配力のある事業者(すなわちNTT)を定め、回線の接続義務や接続会計の分離、情報公開などの規制を課し、一方、他の事業者には原則として規制を撤廃することを指す。しかし、これについて電気通信局は、有富寛一郎電気通信事業部長(72年同)を中心に「NTT以外の事業者の監督ができなくなる」として否定的な構え。

  結局、年末に予定されている電気通信審議会(郵政相の諮問機関)の1次答申は、非対称規制も、ユニバーサルサービスの見直しも盛り込まれず、NTTに対する外資規制や新株発行認可の撤廃でお茶を濁す見通しだ。その時、新電電や外資系通信事業者が「独立規制機関」の必要性を声高に叫び出すのは明らか。

  電通審の議論が袋小路に入って行くに従って、天野局長、有富部長への怨嗟(えんさ)の声が省内に広がりそうだ。「天野さんには7月に辞めてもらうべきだった・・・」。ある有力課長からはこんな不満も出ている。

■URL
・郵政省
http://www.mpt.go.jp/
・通信行政めぐり“郵政省解体論”が再燃?
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/25/doc498.htm

(三上純)
2000/10/10 10:13
3/30(金)
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