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乱立する「夜間市場」~証券再編の起爆剤に?

  東京証券取引所の閉まる午後3時以降に株式取引の注文を受け付ける「夜間市場」を巡り、証券各社間の競争が激しくなってきた。インターネットを活用したオンライン取引で、サラリーマン・OLが帰宅の途につく午後5時以降に注文が集中するのが背景となっている。しかし、十分な流動性が確保できるのか、その採算性には疑問符が付けられる。市場間競争は今やチキンレースの様相を呈し、ネット証券や外資系を巻き込んだ証券再編の起爆剤となる可能性を秘めている。

  一昨年、大蔵省は証券ビッグバンの目玉として、取引所集中義務を廃止し、株式の私設取引システム(PTS)を解禁した。米国ではナスダックのPTS経由取引が売買高の20%強に達するなど、急速に拡大している。

  ●大幅なコストアップに
  日本相互証券が今月4日、日本で初めてのPTSを立ち上げ、東証立合時間外で注文を受け始めた。10月には、米ゴールドマン・サックス証券が午後5時以降、現物株式を売買する夜間市場を開設する。日興証券(8603)は外資と合弁の日興ナイト証券を設立し、ネット証券各社に参加を打診している。さらに、オンライン専業のマネックス証券(8626)も来年1月をめどに同市場に参入する方針を表明。本命の東証も夜間取引の来年開始に向け、準備を進めている。

  しかし、現状では夜間市場が市場開設者に収益をもたらすとは言い難い。日本相互証券の初日取引で売買が成立したのは3銘柄(合計4,000株)、売買代金で1,800万円にとどまった。日本の株式市場は機関投資家が主体であり、彼らは「アフター5にも取引を続けるなら、いつ休めるんだ」(大手生保)と意識的に夜間取引を避ける。

  証券会社側にも、「夜間の個人取引が活発化した場合、立合時間外にも営業マンや事務要員を確保しなければならず、コストが大幅にアップする」(大手証券)との危惧がある。このため、野村証券(8604)は東証の夜間取引構想に猛反対している。大和証券グループ本社(8601)については、日経新聞が「夜間市場を来年開設」(9月12日付朝刊)と報じたが、実際には「賛否両論が渦巻き、白紙の状態」(関係者)という。

  ●手数料引き下げ競争も激化
  こうした中、オンライン証券間の委託手数料引き下げ競争も白熱化する一方だ。ソフトバンク系のイー・トレード証券(8627)は10月中の期間限定ながら、手数料を100円に値下げする。北尾吉孝会長は「他のネット証券は大赤字のところが多く、追随できないはずだ」と述べ、日本マクドナルド流の価格破壊に自信をみせる。手数料のダンピングに、夜間取引というコスト増要因が加わり、「ネット専業も含め、証券界は新たな再編・淘汰の時代に入った」(外資系ネット証券首脳)との見方が強まっている。

■URL
・マネックス証券が時間外・夜間取引を計画
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/12/doc402.htm
・イー・トレード証券
http://www.etrade.ne.jp/

(兜太郎)
2000/09/18 10:32
3/30(金)
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