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“NTT技術王国”の崩壊に飛び火も~ユニバーサル見直しの波紋

  NTT(9432)に課されている全国一律の電話サービス(ユニバーサルサービス)の見直し議論を契機に、NTTの研究開発部門に動揺が走りつつある。東西NTTの業績不振を受け、持株会社はユニバーサルサービスの一部放棄を主張、そのコストの補てん手段として、郵政省も全ての電気通信事業者から資金を募る「ユニバーサル基金」の創設を検討し始めた。しかし、ユニバーサルサービスの見直しが、NTTのもうひとつの責務である研究開発の縮小に飛び火するのは必至。その場合、3,000人のグループ研究者のリストラは避けて通れず、一部では“NTT技術王国の崩壊”をささやく声も挙がっている。

  ●軌道修正の波紋
  「東西NTTの合併は、(日米交渉でNTT接続料の前倒し引き下げを決めた)政府に対する嫌味で言ったのであって、本意ではない。電通審では、ユニバーサルサービスについて優先的に議論してほしい」。持株会社の宮津純一郎社長は、NTT再々編を議論する電気通信審議会(郵政相の諮問機関)特別部会がスタートした5日、従来の東西NTT合併論を撤回し、代わってユニバーサルサービスの見直しを強く打ち出した。再々編をめぐるグループ内の軋轢に窮した修正発言だが、修正そのものが新たな軋轢を生みつつある。

  NTT法第3条は、NTTの“責務”として「電話役務のあまねく日本全国における適切、公平、安定的な提供」を義務付けている。同時に「電気通信技術に関する研究の推進、その成果の普及」も規定しており、ユニバーサルサービスと研究開発は、NTTに対する最大の規制でもある。

  ●どこへ行く3,000人
  「NTTは電電公社時代から、事務屋は傍流で、技術屋が経営の本流を握っていた。研究所だけで年間3,500億円の経費を維持するためにも、研究開発の責務は“望ましい規制”だった」(NTT幹部)という。ユニバーサルサービスの見直し議論が“望ましい規制”である研究開発の縮小につながり、NTTは虎の子の研究開発部門のリストラにも着手せざるを得なくなる。

  それでなくても、96年に宮津体制が誕生して以来、NTT技術系社員の動揺は高まっている。頂点を極めた宮津社長は、自らはネットワーク技術部門の出身にも拘らず、有力な技術系幹部を次々と外部へ転出させた。今や中核3社の東西NTTとNTTコミュニケーションズの社長は事務系幹部で占められている。

  研究開発部門は持株会社に帰属しており、再々編議論の過程でグループの完全資本分離が決まるようなことになれば、「自分達はどこへ行かされるのか」といった技術系社員の不安は一段と高まる。ユニバーサルサービスの見直しを主張する宮津社長は、知ってか知らずか、自らの基盤を揺るがす“パンドラの箱”を開けてしまった格好だ。

■URL
・NTT(持株会社)
http://www.ntt.co.jp/

(三上純)
2000/09/13 13:08
3/30(金)
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