「マチガイない」スマホを、マチガって使っていたかも!?

データと私見から見る、SIMフリー「arrows M03」の「マチガイない」ポイント

2017/01/30 | 日沼諭史

ここに1つのWebサイトがある。「マチガイない、SIMフリースマホ。arrows M03。」。スマートフォン「arrowsシリーズ」を世に送り出している富士通が、SIMフリースマートフォン「arrows M03」のPRを目的に立ち上げたスペシャルサイトだ。電池もちの良さ、防水・防じん対応とMIL規格の14項目準拠、おサイフケータイやワンセグ搭載など、なるほど、確かにM03のポイントをズバリ、シンプルに紹介していて、わかりやすい。

スペシャルサイト「マチガイない、SIMフリースマホ。arrows M03。」

そしてまたここに、1つのデータがある。極秘ルートから入手したM03に関わる門外不出の調査データだ。ウソだ。富士通から普通にいただいたユーザーアンケートの結果の一部である。しかしそこには、我々、いや筆者が想像だにしなかったM03の知られざる事実が記されていた。それを見た筆者は、もしかすると大変なマチガイを犯していたのではないか、と考えざるをえなくなったのである。

筆者「MIL規格対応!おサイフケータイ!」ユーザー「防水・防じん!電池もち!」

まず最初に以下の「グラフ1」を見ていただきたい。これは、arrows M03を購入する際にどういった機能・性能を重視したか、というユーザーアンケートの結果だ。実使用前の、スペックシート上の性能、展示端末に触れたうえでの印象や期待などを元にしたデータということになる。実際には端末デザインや周囲の評判といった評価項目もあるのだが、ここではあえて機能・性能面の項目のみに絞った。

グラフ1. 購入時に重視したポイント(機能・性能)
(購入者調査 2016年9月富士通調べ)

これによると、arrows M03の購入に当たって最も重視したポイントは「防水・防じん対応」で、次に「電池の持ち」だった。意外なのは、筆者が個人的に最も好印象だった「MIL規格対応」や関連する「落としても割れにくい、傷が付きにくい」が、筆者ほどには購入者のみなさんに響いていなかったと思われるところ。

実のところ、防水・防じん絡みの性能はMIL規格にも含まれているので、「防水・防じんは当たり前。そのうえで、頑丈かつ傷が付きにくい」というのがarrows M03のアドバンテージだと考えていたのだけれど……。MIL規格準拠というもの自体がまだ出てきたばかりの新しい要素で、防水・防じん性能ほど世間に浸透していないというのもあるのだろうか。

水に濡れる程度ではびくともしないarrows M03。防水は今やスマートフォンの基本機能の1つ

筆者的には、料理(蕎麦打ち)の際に含水量計算などにスマートフォンが必須。粉まみれになりがちなので、防じん性能は不可欠だ

「電池もち」については、いつの時代も常に重視される性能のようだ。スペシャルサイトでも「電池3日もち」を前面に押し出しているし、1日中持ち運んで使うスマートフォンにとっては“マチガイなく”気にしておきたいポイントと言える。が、筆者としては以前からMIL規格準拠のarrowsシリーズを使ってきた身として、その有用性を幾度となく実感している(つまり、何度も落下させている)ところでもあり、電池もちよりも頑丈さの方に魅力を感じるというか、視点が傾きがちだったりするのだが……。

また、すでに複数の電子マネーをスマートフォンでヘビーに使っていて、機種変更のことも考えると、やはり「おサイフケータイ」は外せない。筆者の場合、ことによってはMIL規格準拠(防水・防じん性能)より優先することもありうる。購入者の方も電池もちに次ぐ、「ワンセグ・フルセグ搭載」と並ぶ割合で重視している項目となっているので、このあたりの感覚的な“ズレ”は大きくないようだが。

日常的に使っているおサイフケータイ用アプリはこれだけある。おサイフケータイなしの生活にはもう戻れないのだ

おサイフケータイ(FeliCa)に加えNFCにも対応。Bluetoothスピーカーなどとのペアリングも楽ちん

というか、「ワンセグ・フルセグ搭載」がおサイフケータイ以上に重宝されていることにも注目したい。arrows M03が搭載するのはワンセグのみだが、災害発生時など緊急時の情報収集に役立つという点でもメリットは大きく、SIMフリースマートフォンや格安スマホにもできる限り搭載していてほしい機能の1つだろう。

ところが、MVNOが取り扱うものにワンセグ搭載機種は少なく、搭載していてもMicro USBケーブルをアンテナ代わりにしないと電波受信できない機種もある。その点、arrows M03は内蔵アンテナで感度良く受信できるので、ケーブルを持ち出す余裕がないかもしれない緊急時にはなおのことarrows M03のメリットが活きてくるはずだ。

arrows M03はワンセグアンテナが内蔵。緊急時にUSBケーブルまでとっさに持ち出せるかというと、そういうわけにもおそらくいかないので、ありがたい

あと、ちゃんと128GB以上のmicroSDXCカードに対応しているのも見逃せない。少なめの内蔵ストレージをSDカードでカバーできる

購入後の満足度は質感、ディスプレイが高評価。耐久性は意外に低い?

では、購入後、実使用した結果の満足度はどうなのだろうか。以下の「グラフ2」をご覧いただきたい。全体的には(他のMVNO端末を含めた)平均より満足度は高く、とりわけ操作性や質感、ディスプレイの良さが高評価となっている。動作時の本体温度の低さ、動作の安定性にも高い評価が集まっているようだ。

グラフ2. 購入後の満足度
(購入者調査 2016年9月富士通調べ)

一方、絶対的な満足度としては高いものの、意外に平均との差が少なかったのが「文字入力」。arrows M03はジャストシステムの「Super ATOK ULTIAS」を搭載し、賢い日本語変換を実現しているが、満足度が突出していないのは、他の端末でも文字入力についてはそこまで不満がないのか、あるいは文字入力以外に注目されやすい要素が多い、ということなのかもしれない。

効率的に文字入力できる「Super ATOK ULTIAS」を搭載している。個人的なおすすめは「フリック学習モード」

端末の耐久性に関わる「傷のつきにくさ」は、これも平均以上の値とはいえ、筆者が個人的に感じているほどには一般ユーザーが気にするポイントではないようだ。改めて紹介すると、arrows M03では、ディスプレイガラスに「Corning Gorilla Glass 3」を採用し、伏せて置いてもガラス面よりわずかに突き出たフレームで傷を付きにくくする工夫が施されている。左右側面には強度の高いアルミフレームが、上下側面にはハードコートが施された樹脂パーツが使われ、背面もハードコートで塗装された耐傷性の高い素材が用いられている。

背面にもハードコートが施されている。ディスプレイ側と同じくこちらのエッジもわずかに立っていて、置いた時に傷つきにくい

このへんの評価がそれほど高くない理由はわからないし、ケースやカバーを使っていて評価しにくいのかもしれない。けれど、もしかすると1年、2年と長く使い続けることで他との差が見えてくるところなのかもしれない。発売から1年が経過する2017年の夏以降、耐久性についての満足度がどうなっているか知りたいところだ。ちなみに筆者は、arrows M03をはじめとするarrowsシリーズを、あえてケースやカバー、画面フィルムなどを装着せずに使っている。そのままの状態で使っていても目立つ傷が入ることはほとんどないし、落下させてもめったなことでは欠けたり、割れたりすることもないから、というのもあるが、むしろケースやカバーを使うことでかえって傷がつきやすくなることもあるからだ。

例えば、家族がシリコンカバーのソフトケースを装着して使っていたスマートフォンは、隙間に入り込んだゴミのせいで、磨いても落とせない汚れや目立つ傷があっという間についてしまった。MIL規格準拠で各部に耐久性の高いパーツを使っているarrows M03の場合、画面については市販のガラスフィルムよりよほど傷がつきにくいし、側面や背面も先述の通り傷などに対して十分以上に配慮されている。なにより、せっかく満足度の高い“質感”が感じ取れなくなるのももったいないではないか。arrows M03は、ケース・カバーなしが“マチガイない”使い方だと思う次第だ。

他とは明らかに異なるユーザーの年齢層。その理由は?

最後にチェックしておきたい興味深いデータが、各MVNO端末のユーザーの年齢層だ。SIMフリースマートフォンや格安スマホというと、どうしても手厚いサポートがある大手キャリアの端末よりも導入が難しいイメージがある。なので、リテラシーが高いユーザーが多そうな30代や、できるだけ安価にスマートフォンを使いたい20代のユーザーが多いのではないかと想像していた。

果たして想像通り、以下の「グラフ3」にあるように、他の端末については30~40代のユーザーが多かったのだが、arrows M03だけは40~50代、そして60代のユーザーが多い結果となっている。とはいえ、購入時に重視した項目や、購入後の満足度の結果を振り返れば、この結果にもある程度納得はいく。

グラフ3. 端末ごとのユーザーの年齢層
(購入者調査 2016年9月富士通調べ)

なぜなら、ぱっと見のデザインよりも、どちらかというと防水・防じん性能や、ワンセグ、おサイフケータイ、音声通話の聞きやすさ、といった実用性が重視されていることから、ある程度年齢層の高いユーザーに評価されやすい端末なのかもしれない、という想像ができるからだ。

満足度の面でディスプレイの良さが注目されていたのも、arrowsシリーズ独自の「インテリカラー」と「あわせるビュー」のような環境や年齢に応じて自動で見やすさを調整する機能のおかげかもしれない。また、「通話時の聞きやすさ」の満足度が高かったのも、年齢などに応じて通話時の音質を調整する「あわせるボイス」が影響している可能性もありそうだ。

周囲の明るさや年齢などに応じて画面の見やすさを自動調整する「インテリカラー」と「あわせるビュー」

電話音声の聞こえやすさを最適にしてくれる「あわせるボイス」

筆者も2017年はいよいよ大台の40代に突入してしまう。arrows M03やその他のarrowsシリーズを使うたびに、「ああ、やっぱりarrowsはいいな」と思う部分は、機能面の充実度もさることながら、まさにディスプレイの見やすさや音声の聞きやすさだったりもするのだ。認めたくはないけれど、順調に年相応に自分から何かが失われ、しかし知らず知らずのうちにarrowsが補ってくれているのだろう。それはきっと“マチガイない”。

もうすぐ40代。いつか縁側でのんびりお茶をすすりながらスマートフォンを使う生活を送りたい