インタビューのため約束の時間に現れた竹中直人監督は貫禄のある男性だった。挨拶をすると「どうぞよろしくお願いします」と低音の快い声を響かせる。TVや映画で慣れ親しんでいる声を聞くと、ほんの少しだけこちらの緊張が解けてゆくようだ。ほっとしたところで、さっそく『連弾』を手がけることになったいきさつから聞いてみる。これまでの3作はすべて自らの企画で、脚本家とも綿密な打ち合わせを行いながら製作を進めていた竹中監督だが、今回は初めてすでに出来上がった脚本を手に映画を作り上げたと言い、こんな映画誕生秘話を披露してくれた。

「実は、4本目も自分の企画でひとつ進行していて、ずっと脚本を、ある脚本家とホテルに篭りながら練ってたんですが、なかなかうまく本が進まなくて。(中略)スタッフたちは押さえていたので、その本が結果的に上手くいかなくて“だめた!もうバラすしかない。でもスタッフたちに何て言ったらいいかしら”って思っていたんです。“困ったな。でも、しょうがねぇな”って。でもスタッフたちは2ヶ月ぐらい映画のために空けるわけですから(撮影が)無くなりましたって言うのも...って悩んでた時に、こんなものを撮ってみないかといきなり本を頂きまして。それが『連弾』というタイトルで。“あっ、これはお金は集まってるんでしょうか”“お金は集まってる”“あっ、じゃあ撮ります”って言って、本も読まないまま撮りますって言ったんです。返事をしてから読んだんですね」。

  どうやらスタッフへの思いやりが『連弾』誕生のきっかけになったと言えそうだ。なんとも映画監督らしい優しさと気配りに満ちたエピソードである。そんな竹中氏が監督を始めたきっかけは奥山和由氏との出会いだった。五社英雄監督、奥山氏プロデュースの『226』に出演した際、監督になることを勧められたと言う。

「あと、多摩美のグラフィックデザイン科っていう所にいて8ミリ映画を作っていたっていうことはありましたね。映像演出研究会っていうクラブがありまして、そこに入ってまず1年の時に多摩美でブルース・リーが大好きだったもんで『燃えよタマゴン』っていう作品が第一回監督作品。それは監督、脚本、主演、カメラまでやってましたね。出てるのになぜカメラ?なんつって(笑)。構図を決めるんです」。


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