家庭でプログラミング教育にトライ

4歳から104歳まで対象の「Hour of Code(アワーオブコード)」でマイクラにトライ!

文部科学省により、2020年以降に施行される新学習指導要領において小学校でのプログラミング教育必修化が決定しました。この連載では、元小学校教員でITジャーナリストの高橋暁子氏が、プログラミングに詳しくない保護者でも家庭で子どもにトライさせられるかどうかを確認しながら、実際にご自身のお子さん(算数好きの小学2年生・男児)と使ってみた際の反応や学習効果を交えながら、様々な教材を紹介していきます。

「Hour of Code(アワーオブコード)」は、米国の非営利組織「Cord.org」が展開する世界的なプログラミング教育推進運動だ。「すべての児童・生徒がコンピュータ・サイエンスを学ぶ機会を得る」ことをミッションに掲げており、非常に使いやすいところが特徴だ。

今回はアワーオブコードでプログラミング

アワーオブコード発起人には、Microsoft創業者ビル・ゲイツ氏、Facebook創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏などが参加しており、米国のオバマ元大統領もこの活動に賛同している。

これまでに45言語に翻訳され、180カ国以上、1億人以上の児童・生徒が参加している。なお米国では学校の授業にも取り入れられており、9万校が授業に採用し、400万人の生徒児童に提供されている。

今回は、このアワーオブコードに小学2年生の息子とトライしたい。

アワーオブコードを使ってみよう

アワーオブコードは対象年齢が「4歳から104歳まで」とうたわれており、とても使いやすいのが特徴だ。

チュートリアルはすべて1時間程度でクリアできる難易度・分量に設定されており、あらかじめ用意された「前にすすむ」「右にまがる」「くりかえし◯回やること」などの日本語でできたブロックパーツを組み合わせるパズル形式になっている。文章になるように組み立てればできるので、子どもでも分かりやすい。また、マウスだけでできるので、キーボードが使えない子どもでも十分に利用できるというわけだ。さらに途中でヒントとなる動画解説が再生されるので、一人で進めていけるようになっているのだ。

アワーオブコードのサイト(https://hourofcode.com/jp)にアクセスし、「学習を開始しましょう」をクリックすると、日本語でできるアクティビティが表示される。もしも、日本語で表示されない場合は、画面右上の言語選択から「日本語」に切り替えよう。

言語を「日本語」に切り替えて「学習を開始しましょう」をクリックすると、日本語でできるアクティビティが表示される

ぱっと見ただけで、「スター・ウォーズ」「アナと雪の女王」「モアナと伝説の海」「マインクラフト」など、誰もが一度は見たことがあるキャラクターのアクティビティが多い。いきなり見せても「見たことある。面白そう」と子どもの食い付きはいいだろう。

子どもの気になるキャラクターのアクティビティを選ぶか、「幼児~小学5年」「小学2年生~」「小学6年生~」などと難易度のレベルが表示されているので、年齢に合わせたものを選ぶのがよさそうだ。

誰もが一度は見たことがあるキャラクターのアクティビティが並ぶ

クリックするとアクティビティの詳しい説明が表示される。「学生の体験」欄では、「初心者向け」などレベルが分かる。「教室の技術」欄では「全ての最新ブラウザ、Androidタブレット、iPad、Android携帯、iPhone」など、利用できる環境が分かる。「トピック」欄では学べる学習分野、「アクティビティ種別」では「自習用チュートリアル」などの種別が分かる。「長さ」では、およそのかかる時間がわかるようになっている。「言語」では、どの言語で遊べるアクティビティかがわかる仕組みだ。「始める」をクリックでスタートできる。

クリックするとアクティビティの詳しい説明が表示される

アカウントは作成しておこう。アカウントを作成してログインした状態で使用すると、クリアしたアクティビティなどが記録されるためだ。作成時、「アカウントの種類」欄で「生徒」か「先生」が選べる。通常使う場合は「生徒」でいいが、「先生」を選ぶと教員用アカウントが作成できるのだ。

通常使う場合は「生徒」を選ぼう。「先生」を選ぶと教員用アカウントが作成できる

保護者や教員などが子どもに使わせる場合は、事前に一通り自分でクリアしておくといいだろう。大体のレベル感、つまづきそうなところなども分かり、子どもにアドバイスしやすくなるはずだ。

どう解くかは自分次第

小学2年生の息子とアワーオブコードにトライ

アワーオブコードのアクティビティ一覧を見せると、「面白そう!」とキャラクターに反応した小学2年生の息子(8歳1ヶ月)。あれこれやりたがったものの、今回は息子の年齢に合った「小学2年生~」レベルの「マインクラフト(Minecraft) の Hour of Code」から「Minecraft: Hero’s Journey」をおすすめしてみた。息子はマインクラフトを聞いたことも見たこともないそうだが、これまでにもやってきた日本語のブロックパーツを組み合わせるタイプで面白いということでやることに。

まず動画が再生される。これからのアクティビティのためのヒントになるものなので必ず見せよう。基本は英語だが、字幕が出るのでそれほど問題ない。ただし字幕には漢字が多めなので、小さい子どもの場合は保護者が読んであげるといいだろう。

なお、その後の動画は字幕が英語のままのものがあったが、下部の「設定」をクリックし、「字幕」欄をクリックして「自動翻訳」を選び、一番下にある「日本語」を選ぶと日本語字幕付きになる。

動画はヒントになるので必ず見よう

主人公のキャラクターを「Steve」と「Alex」から選ぶと、いよいよプログラミングスタートとなる。

このチュートリアルはAgent(エージェント)と呼ばれるロボットのようなキャラクターをプログラミングによって「重量感知板」の上に移動させるのがテーマ。エージェントが板の上に乗ると、アイテムを取る上で邪魔だった扉などが開く。その後、主人公を十字キーで移動させてアイテムをゲットするとクリアとなる。

基本は日本語で文章を組み立てればできるので、どんどん進められる。しかし後半になってくると、池や溶岩の上に橋となるものを置いたり、ブロックを壊したりせねばならず、関数の課題も出てくるなど、徐々に複雑化してくる。見落としがあると一度ではクリアできないことも出てくるので、大人がなぜうまくいかないかを考えさせたり、アドバイスする必要があるだろう。

基本は日本語のブロックパーツで文章を組み立てればできる
クリアすると「おめでとう」と表示される。「コードを表示します」をクリックすると、JavaScriptで同じ動きをさせるためのコードが表示される

特に、10番目の、トロッコを完成させて主人公の反対側にあるアイテムを取りに行く課題はかなり複雑なので、一つ一つ順を追って考えていく必要がある。右回りと左回りどちらでも行ける上、ブロックを壊してレールを引くなど、全体に複雑になっている。

私は「トロッコを完成させる」という課題から、当然トロッコが一周できるようにする必要があると考えたが、息子は「なんで? アイテム取れればいいんでしょ?」と怒り、反対側に行ける分のプログラムだけを作り上げた。実行したところ、アイテムが取れてクリアになった。プログラミングは子どもの発想を活かして自由に行わせるものであり、正解はないという基本を思い出させてもらった。

10番目の少々複雑だった課題。彼なりに考えた跡が感じられた

12番目は自由にプログラミングする課題だったが、息子はこれが一番楽しんでやっていた。繰り返しを使ってブロックが延々と増えたり減ったりするプログラミングをして、動きを楽しんでいたのだ。動かしては思い通りにいかない部分を見つけて直してを繰り返していた。自分でプログラミングして動かすことの面白さに気づき始めているようだ。

息子が作った謎プログラミング。延々とブロックができたり壊れたりを繰り返す。橋が壊れたり川の上に道ができたりする。この後、関数も追加してさらに複雑化していた

チュートリアルなので、すべてやっても1時間かからずにスムーズにできた。家庭でも子どもが飽きずにすべてクリアできる分量・難易度であり、学校でも授業で取り上げやすいと感じた。

使い勝手がよい先生アカウント

学校での利用を前提とされているアワーオブコードを使うに当たり、先生アカウントを作って管理画面を確認してみた。

左上の「マイダッシュボード」をクリックしてダッシュボード画面を開き、「Create a new section」をクリックして、子どもの年齢を選ぶ。4~8歳は画像でログインし、9~12歳は単語でログインし、13歳以上はメールアドレスでログインする仕組みのようだ。

マイダッシュボード画面

分かりやすいセクション名を入力し、学年を選び、コースを選択して保存すると、生徒追加画面となる。名前、年齢、性別を入力・選択すればよい。

進行状況の確認や評価/アンケート、統計などを使うと、複数の児童・生徒の進度や理解度の管理が簡単にできそうだ。ただし、プログラミングに慣れていない子が多いのであれば混乱が起きることが予想される。40人学級で一斉授業などで使うのではなく、少人数単位でやらせると細部まで目が届いて使いやすいだろう。無料で利用できることを考えると、公立学校などでも利用を検討する価値はありそうだ。

生徒の進度なども確認できる

たとえば、総合科や学級会の時間などを使い、得意な子が苦手な子に教えさせる授業などはどうだろうか。最終的には、今回ご紹介した10番目のように解法が一通りではないもののクリアの仕方を色々と考えて発表してもらうと、子どもたち自身で工夫し始めるはずだ。

なお、キャラクターの人気の高さで、「アナと雪の女王」をモチーフにした「アナとエルサとコーディング」が一番人気のようだが、本当に初めてプログラミングにトライする子どもの場合は、「アングリーバード」がお勧めだという。ぜひ試してみてほしい。

教材名Hour of Code(アワーオブコード)
利用料無料
対象4歳から104歳まで
環境インターネットにつながるパソコン、スマートフォン、タブレット
保護者に求められる知識とスキル動画を見て使い方をマスターしたり、子どもにアドバイスできる
学習効果プログラミングに興味を持つ、論理的思考力
学習時間のめやすチュートリアルは1時間程度

※学習効果や学習時間は個人差があります

高橋暁子

ITジャーナリスト。 LINE・Twitter・Facebook・InstagramをはじめとしたSNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。「ソーシャルメディア中毒 つな がりに溺れる人たち」(幻冬舎エデュケーション新書)ほか著書多数。書籍、雑誌、ウェブメディアなどの記事の執筆、監修、講演、セミナーなどを手がける。http://akiakatsuki.com/