こどもとIT
Chromebook™ で実現する高校の1人1台、求められるICT環境とは?
―― Google と日本HPとチエル、「高校の1人1台準備セミナー」レポート
- 提供:
- チエル株式会社
2021年12月9日 06:45
GIGAスクール構想の後、注目を増してきたのが高校における1人1台端末の整備だ。GIGAスクール構想でICT教育を経験した中学生が、高校でも同様の学習環境で学べるよう整備が求められている。しかし、文部科学省の調査によると、47都道府県のうち、高校で1人1台端末の整備を完了したのは11自治体、2021年度中の予定が8自治体、それ以外は検討中という状況で、全体的な動きとはいえない。
そこで Google、日本HP、チエルの3社は2021年11月5日、「高校の1人1台準備セミナー ~活用を進めるために必要なものはなにか~」を開催した。これからICT環境を整備する自治体や学校はどのような環境をめざせばいいのか。セミナーの内容を紹介する。
高校の1人1台端末、押さえておきたいポイント
セミナーの内容を紹介する前に、事前知識として高校の1人1台端末における整備のポイントを整理しよう。
高校の端末導入は、国が主導し、国の予算で進んだ小中学校のGIGAスクール構想とは異なる。高校は各自治体が1人1台端末の方針や導入方法を決めることになり、導入方法としては、以下の4つから選ぶことになる。
①公費による導入
②BYOD(Bring Your Own Device)
個人の端末を持ち込んで利用
③CYOD(Choose Your Own Device)
学校側が複数端末を指定、生徒がその中から選択して利用
④BYAD(Bring Your Assigned Device)
学校側が端末を指定、生徒がその端末を用意して利用
公⽴・私⽴に関わらず、昨今の⾼校1⼈1台端末導入の事例としてよく耳にするのは、4番⽬のBYADだ。家庭に対して経済的な負担はあるものの、学校側が指定した端末を使うことで、授業が進めやすい、端末が管理しやすいといったメリットがある。
もうひとつ、押さえておきたいポイントは、文部科学省が令和3年5月に発表した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の要件を踏まえていることだ。簡単に説明すると、1人1台時代に合った新たなセキュリティ対策と、クラウドサービスの活用を前提としたネットワーク構成を整備しているかが肝になる。
具体的に、こうした環境を実現するために、文部科学省は大量の端末を一元管理できるMDM(Mobile Device Management/モバイル端末管理)の採用を重要視している。1人1台時代は学校内だけでなく、学校外でも端末を利用するため、児童生徒の情報や端末を安全に守るセキュリティ対策が必要で、そのためにはMDMの利用が欠かせないからだ。授業に活用できるクラウドソリューションだけでなく、MDMで端末を管理していることも重要なポイントだということを押さえておきたい。
保護者が安心して端末を購入できるように、サポートを充実
最初に登壇したのは、グーグル合同会社 Chrome パートナー営業統括部デバイスパートナー営業 部長の川上浩二氏。
同氏は、Google が提供する「 Google for Education™ 」について改めて述べ、安全で豊かな学習環境を提供するための端末「 Chromebook 」と、コラボレーションを加速するクラウドサービス「 Google Workspace for Education 」、そしてMDMの機能を持つ「Chrome Education Upgrade(CEU)」という3つのソリューションを提供していると説明した。
なかでも川上氏が強調したのは、Chrome Education Upgrade について。「生徒が安全に端末を利用できるよう、Chrome Education Upgrade では500以上のポリシー設定が可能です」と強調する。しかも、端末の利用終了まで適用される永続ライセンスだというのだ。
さらに、「Chrome Education Upgrade は、端末導入をスムーズに進めるうえでもメリットがあります」と同氏。それが新機能の「ゼロタッチ登録」だ。高校では家庭負担の購入の場合、自宅に端末が配送されるケースもあるが、ゼロタッチ登録を利用すれば、家庭で購入した Chromebook を自宅のインターネットに接続しログインするだけで、学校の管理設定に自動的にセットアップされる。教員や保護者の負担を軽減しつつ、安心して使い始められる教育関係者にとって嬉しい機能だ。
一方で、学校側で決めた端末を家庭に購入してもらうとなると、”どこで端末が買えるのか教えてほしい”といった保護者の声もあがるだろう。そのため、Google では学校指定の Chromebook を購入できる認定リセラー制度を47都道府県に設ける準備を進めているという。「保護者が安心して購入できるサポートを提供したい」と川上氏。
ほかにも、Google では1人1台端末の導入支援として、Chromebook や Chrome Education Upgrade を導入した教育機関に対して、無償でクラウド環境構築を支援する「Google Deployment Service」や、無償で研修プログラムを受けられる「Kickstart Program」があると川上氏は紹介した。
Chromebook 人気の理由「クラウド活用前提に設計されているから」
続いて、株式会社 日本HP クライアントソリューション本部 ビジネス開発部 マネージャー 松本英樹氏が登壇した。
松本氏は、GIGAスクール構想において Chromebook がトップシェアを獲得したと言及。人気の理由として「Chrome OS™ は、クラウド利用を前提に設計されているから」と述べた。端末は、安価なCPUでも快適に動くうえ、OSのアップデートや故障時の環境回復も簡単。家庭にある iPad や Windows の端末からでも Google Workspace for Education のアプリを動かすことができるなど、教育現場における Chromebook のメリットを語った。
一方で、クラウド活用が前提だからこそ、ネットワーク環境の整備が重要になってくると松本氏は指摘する。文部科学省もガイドラインで「全教室で全児童生徒が同時にアクセスすることを想定して設置する」と示しているように、こうした環境を実現するためには、Wi-Fi 6を検討してほしいという。
「文科省の仕様書には具体的にWi-Fi 6の記載はありませんが、教室でクラウドを利用する端末には必須といえる規格です。複数の端末を同時に接続する学校内で利用する端末には、是非Wi-Fi 6対応のものを選んでほしいです」と松本氏は述べ、日本HPが提供するWi-Fi 6対応の「Chromebook x360 11 G4 EE」を紹介した。
ちなみにWi-Fi 6とは、「11ax」と表記されることもあるWi-Fiの第6世代の規格。現状のWi-Fi 5が1台ずつ通信するため遅延が生じやすいのに対し、Wi-Fi 6は複数端末が同時接続する前提で設計されており、理論値ではあるが約3倍のスピードで通信できる。アクセスポイントからつながる距離も長く、端末のバッテリーの減りも遅いといった特徴がある。
さらに松本氏は、Chromebook 対応のプリンターについても触れた。同氏は「端末の活用において、レポートや掲示物などをアウトプットできるプリンターは、紙の文化が残る学校では重要です」と語る。実際にGIGAスクール構想でも、小・中学校の全普通教室にプリンターを整備した自治体もあったそうだ。
「先生が職員室に戻ることなく、ワークシートを教室内で印刷できる環境が非常に喜ばれました。また印刷だけでなく、スキャナー機能を使って、作文やプリント、図工作品を読み込み、クラウドにアップして振り返りに活用するなど、デジタルとアナログの両方を活かしながらクラウド利用が進んだという事例もありました」と松本氏。ほかにも、HPの大判プリンターを利用した学校を取り上げ、ポスター制作やブレインストーミングに活用された事例を紹介した。
HPのプリンターと大判プリンターは世界標準のプリンタ言語を採用しており、Chrome OS もサポートしている。ドライバーも不要のうえ、Chromebook でどこからでも印刷可能と学校現場で扱いやすいのがメリットだ。教室でプリンターやスキャナーの利用が可能になれば、端末活用はさらに広がりそうだ。
学校独自の情報を管理できる「InterCLASS Console Support」
最後は、チエル株式会社の髙杉聡美氏が登壇した。同社では Chromebook の活用を支援する「Chromebook 活用パック」を提供しているが、今回のセミナーではその中のひとつ、Google for Education の管理業務を学校現場に合わせて効率化できる「InterCLASS Console Support」という製品について、4つの特徴を紹介した。
まず、教育現場にとってありがたいのが、アカウントの名簿管理ができる機能。Goolge Workspace for Education のアカウントに、学年やクラス、出席番号、入学年度など、学校特有の情報を紐づけ、InterCLASS Console Support上で管理できる。あくまでも、アカウントの補助的な情報として入力するので、アカウント作成ルールを複雑化する必要はない。登録した情報はCSV形式でダウンロードしたり、一括入力したりも可能。部分一致検索も可能で、継続した名簿として活用できる。
ほかにも、教育現場で重宝しそうなのが、デバイスの一括管理機能。自治体や学校では、端末にアセットID(任意のコンピューターID)を設けているケースが多いが、CSVで一括管理することができる。初期導入の際にアセットIDをまとめて登録したり、予備機などの付加情報をメモとして登録することも可能。対象デバイスのアセットIDをまとめて移動したり、部分一致検索などを活用することで、デバイス管理作業の負荷を軽減する。高杉氏は「地味な機能ではあるが、大量の端末を扱う学校では非常に役立つ機能だ」と強調する。
また高杉氏は、端末の安心・安全な運用に欠かせない、なりすましログイン防止機能についても紹介。QRコードによるログインを採用することで、パスワード漏洩のリスクが減るとともに、支援が必要な生徒に対してもサポートしやすい環境が作れると述べた。InterCLASS Console Supportは、HP製の Chromebook なら無償で利用できるという。
2022年度から実施される⾼校の新学習指導要領でもICT活⽤は重要視されており、⾼校の1⼈1台端末導入と活用は否応なしに加速していく。⼩中学校のGIGAスクール環境で学んだ子が、⾼校に入った途端に時代に逆行するような事態は絶対に避けなければならない。高校の先生方や導入に関わる企業関係者には、クラウド活用とMDM運用というポイントを念頭に置いて、来年度に間に合うよう選定を進めていただきたい。
Chromebook、Google for Education、および Chrome OS は Google LLC の商標です。