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相模原市、モノだけの導入で終わらせないGIGAスクール構想の実現に向けて1人1台活用と関連資料を公開

相模原市教育委員会は2020年8月3日、相模原市立総合学習センターホームページの「相模原市のGIGAスクール構想の推進について」のページを更新。1人1台活用に関する授業のイメージや、G Suiteアカウントに関する説明、情報活用能力の育成などについて、同市の取り組みをまとめた資料を発表した。相模原市は2016年度からプログラミング教育に取り組むとともに、市が独自に「ICT活用標準スキル表」を作成するなど、ICTの“活用”を重視してきた自治体だ。

GIGAスクール構想は、9月議会が山場となる自治体が多く、ラストスパートの段階に来ている。モノだけの導入に終わることなく、本当に使われる1人1台をめざすには、何を考えるべきか。ICTの活用に取り組んできた相模原市の情報を共有しよう。

相模原市がGIGAスクールでめざす教育(『相模原市の目指すGIGAスクール構想の実現による教育のイメージ』より)

相模原市が発表した「GIGAスクール構想の推進について」は、主に下記の内容が示されている。

・相模原市がGIGAスクール構想の実現で目指す教育
・1人1台端末が整備することで目指す授業のイメージ
・相模原市立学校教職員と児童生徒全員へのアカウントの配付
・クラウドサービスを学習に活用すると、できること
・日常にコンピュータやインターネットを使う子どもたちに今後必要な力

まず相模原市がGIGAスクールでめざす教育から見ていこう。同市では、令和2年度より、新たな教育振興計画のもと、「共に認め合い 現在と未来を創る人」を育てるための教育に注力している。学習指導要領にもある主体的・対話的で深い学びを教育活動の軸におき、GIGAスクール構想によって充実したICT環境のもと、コンピューターを学習に活用できる力を伸ばしていきたい考えだ。子どもたちが将来、コンピューターなどのテクノロジーを活用して、社会の問題を解決できる、そうした力の育成をめざす。

そして、1人1台の活用についても、「クラウドバイデフォルト」、つまりクラウド環境を標準で使用していくことが、きっちり方針に掲げられている。同市が発表した『1人1台端末による授業のイメージ』という資料では、学校の授業、家庭学習、コロナなどの臨時休校を想定して、現状の学びがどのように変わるのかを紹介している。

1人1台環境で「クラウドバイデフォルト」の環境を築くためには、学校の教職員と児童生徒全員に教育プラットフォームのアカウントが必要だ。相模原市では「G Suite for Education」を選択し、同市立小中学校および義務教育学校の児童生徒全員へアカウントの配布を行うという。家庭の端末からでも利用できるように、ログインの方法やオンライン授業で活用できる「Google Meet」などの手順をまとめた資料も公開した。

相模原市が作成した「家庭でG Suiteにアクセスする方法についての資料」(相模原市のGIGAスクール構想の推進についてより)
デスクトップやノート型、タブレット型PCを活用して「Google for Education」のアカウントにログインする手順
スマートフォンを活用して「Google for Education」のアカウントにログインする手順
デスクトップやノート型、タブレット型 PC を活用して「Google Classroom」に 入り、「Meet」でオンライン授業に参加する手順
スマートフォンを活用して「Google Classroom」に入り、「Meet」でオンライン 授業に参加する手順

そして、相模原市の取り組みで注目したい点は、子どもたちの情報活用能力の育成ついて、体系的に身につくよう、市が独自で「情報活用標準スキル表」や「ICT活用標準スキル表」を作成していることだ。たとえば小学4年生では、“表計算ソフトを活用し、情報を表にまとめる”や、“(50文字程度)の短い文章を入力する”という具合に、学年に応じて、どのようなICTスキルを身につけるのか、教職員や保護者にわかりやすい形でまとめられている。

1人1台活用になると、すべての教科でICTが活用されるようになるが、単に使うのではなく、子どもたちの情報活用能力を伸ばすという観点が非常に重要になってくる。教師のICTスキルによって子どもたちの使い方が変わるのではなく、小学1年生から中学3年生までの9年間を通して、将来に役立つ情報活用能力をしっかり身につけられる場に学校は変わっていかなければならない。

相模原市が独自でまとめた「情報活用ハンドブック」と「情報モラルハンドブック」。9年間を通した情報活用能力の育成についてまとめられている

相模原市では、プログラミング教育に関するプランもまとめている。こちらも小学1年生から中学3年生まで授業内容がまとめられており、プログラミングを通してどのような力を身につけるのかもわかりやすい。ぜひ、同市の取り組みを参考にしてほしい。

相模原市がまとめた「相模原プログラミング教育プラン2020」。プログラミング教育の内容や授業実践を紹介

言うまでもなく、GIGAスクール構想のゴールはモノの導入ではない。本当に力をいれるべきは、子どもたちが1人1台でコンピューターを手にし、学習に活用することである。GIGAスクール構想の施策を進める全国の教育関係者や自治体担当者は、モノの導入に注力せず、その先にある1人1台の活用を重視して進めてほしい。

神谷加代

こどもとIT編集記者。「教育×IT」をテーマに教育分野におけるIT活用やプログラミング教育、EdTech関連の話題を多数取材。著書に『子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く』(共著、インプレス)、『マインクラフトで身につく5つの力』(共著、学研プラス)など。