こどもとIT

欲しくなる! やる気になる! EDIXで見つけたこだわりデザインのプログラミングツールをピックアップ

――第10回 教育ITソリューション EXPO(EDIX)レポート②

毎年、教育関係者が多数集まる「第10回 教育ITソリューションEXPO」(以下、EDIX)が2019年6月19日〜21日の3日間、東京ビッグサイトで開かれた。今年のブース展示は青梅展示棟の同じ階ですべてが展開されたため、例年より少しコンパクトに見てまわれる印象を受けたが、初日から大勢の来場者で会場が混雑した。

本稿では、会場内のブースをめぐった中から、子ども向けのプログラミングが楽しめて、かつ、デザイン的にもちょっと使ってみたい気持ちになるツール群をピックアップしてご紹介しよう。理数系はちょっと苦手……という方でも、「見た目から入る」というのはひとつの大切な入り口。ぜひ軽い気持ちでチェックしてみて欲しい。

(編注:今回のEDIXは、筆者ごとにそれぞれ異なる視点で教材をピックアップしていただきました。本稿と併せて、新妻正夫氏の『定番教材から、新参ロボット、最新電子工作まで、EDIXのプログラミング・STEM教材見てある記』もご参照ください。)

ヨーロッパ系のポップでよくできたツール群

こだわりの輸入玩具を扱うCAST JAPANは、昨年度に引き続き論理思考要素の高いアナログゲーム類を多数紹介したのと同時に、まだ日本では見慣れないヨーロッパ系のプログラミングツール群を紹介した。おしゃれでワクワクするツールをアナログからロボット教材までそろえた。

Marty the Robot Kit

目玉が歯車になっているポップなかわいらしさのロボットは、英国スコットランド生まれのMarty the Robot Kit。Scratchでプログラムできる初心者フレンドリーなロボットながら、全体で9個のサーボモーターが使われていて、かなり柔らかい足の動きができて驚かされる。完成形で購入すればそのまますぐにプログラミングをして楽しめるし、組み立てキットならば少し高度な組み立て工程を経験することもできる。また、とことんやりたい人向けに拡張性が高いのも特徴で、ボディパーツを3Dプリンタで作ったり、頭脳部分の基板を追加することもできる。

足の動きのなめらかさが独特。Scratchでプログラムできる
シールで手軽にデコレーションできる

Strawbees

ただのストロー工作だなんて侮ることなかれ。Strawbeesはスウェーデン生まれのクリエイティブな工作キット。ジョイントパーツを様々に使いストローの長さを工夫すれば、びっくりするような立体や複雑な仕組みも作れてしまう。Coding & Robotics Kitには小さな基板とモーター、ワニ口クリップなどが付属してプログラムができる。

ストローだけで意外に複雑な構造を作れる。プログラミングのアプリケーションは直感的
じゃがいもを持つと電気が通じてモーターが動き、ストロー工作の構造によりクレーンが持ち上がる

Logiblocs

こちらは英国生まれで、パーツをつなぐだけで電子回路的な仕組みを作ることができるキット。パソコンなどからプログラミングする必要がないのでとっても手軽で、かつ、回路的な条件を作る論理思考が求められる。カラフルな各ブロックパーツはボタンなどのインプット要素と、LEDやスピーカーなどのアウトプット要素、それらをつなぐロジック要素がある。ぱっとつなぐだけで、シンプルな仕掛けから複雑なカラクリまで作れるのが魅力。アナログな工作と組み合わせたり、野菜を回路に挟んだりしても楽しい。

役割別に色分けされたブロックは元気の出る配色
ドアベルや防犯アラームなどのサンプルが並ぶ

カラフルで親しみの持てるロボット教材集合!

プログラム学習用のロボットというと、無骨で無機質なイメージが強いかもしれないが、より親しみの持てるデザインのプログラミングロボット教材を紹介しよう。

SPIKE プライム

LEGO Education(出展:株式会社ナリカ)の新製品、SPIKE プライム。マインドストーム EV3ほどテック寄りではなくWeDo 2.0ほど幼くないので小学校段階でとても使いやすい印象だ。各パーツは丸みがあってやわらかいデザインで、ブルー、イエローにパープルが入った色使いが少し大人っぽい。発売は来年2020年初め頃とのこと。

Scratchをベースにした縦にブロックを積むプログラミング方式を採用
スマートハブ部分の上面は内側から5×5マスのLEDで光らせられる。さりげない光り方がいい

KOOV

カラフルで落ち着いた色使いの半透明ブロック類が印象的な、SONYのKOOV。日本発のツールの中では、ハードもプログラミング用アプリもデザインへのこだわりが高い。学校での活用事例も増えてきた。

2020年からの新学習指導要領を意識して教科での活用提案が多い
授業での活用事例も多数紹介していた

AI Module 1

今回初出展のAI Module 1は、上海WhalesBotテクノロジーの製品。丸みのあるパーツ類にブルーとオレンジの元気な配色。

AI Module 1

Mabot

昨年に引き続き2年目の出展となるMabotは、深センのShenzhen Bell Creative Science and Educationのロボット教材。コア部、センサー、タイヤなどあらゆるパーツが球体なのが特徴的で、色はイエローで統一。日本での発売は今年7月。

Mabot

これらのロボット教材は、いずれもボディ部分はブロックなどの構造パーツで作り、適宜各種センサー、モーター、LEDなどの機能系パーツを追加して本体を作る。さらに独自アプリケーションで機能をプログラムする。手順は多いが自由度の高い教材だ。

モジュールブロック+プログラミングで高度な発明品を作ろう!

プログラミング教材はロボットばかりではない。センサーやスイッチなどの入力系、LEDやモーターなどの出力系のパーツがそれぞれモジュールブロック化されていて、それらの関係性をプログラムすることで仕組みを作るツールがある。ブロック同士が相互に無線で通信できるので、入力と出力を離れた場所にセットすることもできる。IoTの仕組みなど高度な技術を手軽に実現できるのが魅力だ。

MESH

SONYのMESHは消しゴムほどのサイズのモジュールブロックで、生活雑貨や工作に貼り付けてプログラムを組み自由なモノづくりができるツール。展示ではプログラミング教材としての活用を想定した固定的な使い方の紹介が多かった。

MESH

Tinkamo スマートブロック

Tinkamoのスマートブロックはポップでかわいらしいデザイン。カラーセンサーブロックなどを単体で使っても良いし、普通のブロックパーツと組み合わせても配線いらずなので自由度が高い。たとえば、手を近づけたらモーターが回ってトイレットペーパーが自動で伸びる仕組みなどが展示され、自分でも何か作ってみたくなるワクワク感がある。こちらは上海の会社。

Tinkamo

スピード感あふれる開発を続けるMakeblock

ここ数年EDIXで見るたびに必ず新製品を出してくるのが深センのMakeblock(出展:Makeblock Japan)。今回は1年前にはなかったツールが複数展示された。プログラミング系ツールの技術的、デザイン的トレンドをつかんで製品化する開発スピードがとにかく速い。昨年のEDIXにはなかった製品を紹介をピックアップした。

Codey Rocky

組み立て不要ですぐに動かせるプログラミングロボット。頭部分にセンサー類が内蔵されていて、スライドして外せば単体で使うこともできる。

Codey Rocky

mTiny

小さい子どもから遊べるパンダ型ロボット。紙製の指示ピースを並べてペン風のリモコンパーツで読み込んで動きをプログラムできる。日本では未発売だが、2019年秋頃を予定しているとのこと。

mTiny

HaloCode

シングルボードコンピューター。丸形でLEDが円を描いて配置されているので灯りの演出が映える。Wi-Fiがメッシュネットワークに対応していて、複数のHaloCodeが関係する仕組みを作るのに強い。

HaloCode

motionblock

遠隔操作のロボットアームまで作れる高度なロボットキット。日本では未発売。

motionblock

laserbox

教育用途を意識した比較的コンパクトで扱いやすいレーザーカッター。排気の仕組みもついている。日本では未発売。

laserbox

理数系のイメージを捨てて気軽に楽しむのがおすすめ

プログラミング系の教材というと、どうしても、理数系に詳しくないと扱えないような印象を持つかもしれないが、そんなことはない。初心者の子どもがアプローチできる教材は、完全に文系で育った大人の論理思考でも十分理解できる入り口のものばかりだ。また、教材のデザインを気に入るかどうかは、実はけっこう重要で、創作意欲にも影響する。使ってみたいと感じるツールで、楽しくプログラミングを使ったモノづくりに挑戦してみてほしい。

狩野さやか

株式会社Studio947のデザイナー・ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。