家庭でプログラミング教育にトライ

Tech Kids Schoolのノウハウが凝縮!「QUREO(キュレオ)」でプログラミングにトライ

文部科学省により、2020年以降に施行される新学習指導要領において小学校でのプログラミング教育必修化が決定しました。この連載では、元小学校教員でITジャーナリストの高橋暁子氏が、プログラミングに詳しくない保護者でも家庭で子どもにトライさせられるかどうかを確認しながら、実際にご自身のお子さん(算数好きの小学2年生・男児)と使ってみた際の反応や学習効果を交えながら、様々な教材を紹介していきます。

サイバーエージェントが、小学生向けオンラインプログラミング学習サービス「QUREO(キュレオ)」を発表した。キュレオは、サイバーエージェントの子会社であり、小学生向けにプログラミング学習を提供している「Tech Kids School(テックキッズスクール)」と、同じく同社子会社でゲームを開発・運営する「アプリボット」のそれぞれが持つノウハウを活かし、共同開発された学習サービスだ。

今回はテックキッズスクール監修の「キュレオ」にトライ!

キュレオでは、過去に当連載でもご紹介したScratch(スクラッチ)をベースにした480のレッスンが用意されている。スクラッチは無料だが、キュレオは月額制の有料サービスとなっている。

気になるのは、あのテックキッズスクールのノウハウを活かしているという点だ。テックキッズスクールを取材したことがあるが、幼稚園や小学校低学年の子どもたちが自分から熱心に楽しそうにプログラミングしており感心したことがある。ただ、実際の教室に通うには自宅から距離がある上、少々高額なので、敷居の高さを感じていた。オンラインサービスでテックキッズスクールのプログラミング学習を体験できるのであれば、かなり楽しみだ。

全レッスンのうち20レッスンが無料で体験できるようになっているので、早速利用してみることにした。算数好きの小学2年生の息子(8歳3ヶ月)とキュレオにトライしてみたい。

一人で学べて分かりやすい教材

冒頭では、アニメのオープニングストーリーが流れる。悪(バグ)に襲われて崩壊した近未来都市「キュレオシティ」を舞台に、「アルゴ」というキャラクターともに、モノを作り出すキュリエイターとなって世界を元に戻そうというストーリーだ。可愛いアニメ動画なので、見ただけで息子は「なにこれ、面白そう!」とやる気になった。事前にメールアドレスを登録し、「管理者の登録」で保護者情報を、「学習者の登録」で子ども情報を登録しておくとスムーズに進めるだろう。

オープニング動画で子どもと一緒に盛り上がろう

チャプターごとにいくつかのレッスンが用意されており、すべてのレッスンをクリアすると1つのテーマが修了となる。レッスンは、「お手本」「コーディング」「正解」というステップを踏んでいく。

まずお手本として、簡単なゲームをプレイするところから始まる。このゲームを作り上げることがそのレッスンの目標となるのだ。「ラン」ボタンをクリックし、右側に表示されている「つかいかたせつめい」の通りにキーボードを操作することでゲームが進む。ゲームが嫌いな子どもはまずいないので、これですっかりモチベーションが上がる。

最初はお手本のゲームで遊ぼう

ゲームをクリアしたら、続いてコーディングスタートだ。用意されたブロックをコーディングエリアに置くことでプログラミングできる。キュレオはスクラッチと同様に日本語の文章が成り立つようにブロックを組み立てればいいので、それほど苦労しないだろう。

スクラッチと同じ感覚でプログラミングできる

やることがわからなくなったら、画面右下にあるアルゴのアイコンをクリックすればヒントを教えてくれる。また、「せいかいのプロジェクト」と自分の作ったものを見比べられるほか、間違った場合はポップアップで完成形のプログラムが見られるので、自分のミスに気づきやすくできている。

1つのレッスンをクリアすると経験値を獲得し、レベルアップ時には自分のオリジナルプログラミングで使える「オブジェクト」と呼ばれるキャラクターが手に入る仕組みだ。自分が作ったプログラムは、トップページの「マイプロジェクト」に保存できる。

作ったものは「マイプロジェクト」に保存できる

もらえるオブジェクトはゲーム的で可愛らしく、息子は大喜びして「これは当たり!」「やった、強そう」「えー、これは弱そう」と大騒ぎ。キャラクターがもらえるのがモチベーションになっているようだ。レベルアップ時には、私も「やったね、レベルアップ。今回のは強そうだから、自分で作るときにも使えそうだね」など、もらったものに対してはコメントするようにした。

もらえるオブジェクトが続けるモチベーションになる

驚くのは他のプログラミング教材と違い、大人が手助けしなければいけないシーンがほとんどない点だ。子どもが一人でどんどん学んでいけてしまうのだ。息子がスクラッチでのプログラミングに慣れているということもあるが、キュレオ自体が大変丁寧な作りなので、ほとんどの子どもは困らず一人で進められそうだ。たまにフリーズしてしまうことがある以外は、非常に快適に利用できた。

子どもがほぼ一人でできるのだが、それだけに言葉かけも重要となる。たとえば時々、「これはどうやったらできるの?」と子どもに問いかけ、正解を示してもらうのもいいだろう。子どもは親に教えるとなると鼻高々になる。息子も嬉しそうに「こうやればできるよ」と教えてくれた。保護者側が「なるほど、~だから~したんだね」など言語化することによって、学んだことの定着が図れ、子どものモチベーション維持にもつながるだろう。

つまずきを解消する分かりやすい教材

プログラミング学習の入門として有名なスクラッチだが、スクラッチはできることが多すぎて、どこから手を付けたらいいのか分からず、書籍などを参考にしている人も多いはずだ。キュレオを進めていてすぐに気づいたのが、スクラッチではつまずきやすい部分がきちんとクリアされている点だ。テックキッズスクール監修である意義を感じた。

たとえば、子どもが音声を次々鳴らすプログラムを組む場合、音ブロックを延々と並べても最初の一音しか鳴らない。しかし、レッスンで学んだ通りに音と音のブロックの間に「1秒休む」ブロックを入れることで、1秒に1音ずつ音をならすことができるようになる。また、「ラン」ボタンをクリックするとゲームが再開できるようにプログラミングする「ゲームリセット」のレッスンもとても役立った。

無料の20レッスン分は、4日間に分けて合計3時間ほどかかった。非常にわかりやすくできているので、そこまで進められた子どもはかなりプログラミングができるようになっていると思うので、「もっとやりたい」と言い出すだろう。

保護者が注意する点としては、レッスン途中から、文字入力をする場面が何度も出てくるようになる部分だ。キーボード入力に慣れていない子どもには、ひらがな入力への入力切替や、入力支援が必要だろう。息子には、「3年生で習うから、ローマ字入力でやってみよう」と勧めてみた。もともと英語を習っており、アルファベットや簡単な英単語が分かるのもあるが、ローマ字の一覧表を用意してやらせてみたところ、あっという間に母音と子音を覚えてほとんど何も見ないで入力できるようになった。

キュレオには、「プログラミングコース」と「チャレンジコース」が用意されている。プログラミングコースは、プログラミングの基本的な概念と考え方が学べる通常コースだ。初心者の場合はまずこちらからスタートしよう。チャレンジコースは、プログラミングコースで学んだ知識の定着と応用に当たる発展的な内容のため、余裕があったらこちらもトライするとプログラミングについて深く理解できるだろう。

チャレンジコースにもトライしてみよう

プログラミング力の伸びを感じる教材

大喜びでプログラミングを続ける息子

せっかくレベルが上がる度に様々なオブジェクトを手に入れてきたので、どのくらい身についているのかを確認するために、試しに自由にプログラミングさせてみることにした。トップページの「プロジェクトをつくる」をクリックすればフリーエディターにアクセスでき、自由にプログラミングができる。

最初はいつものように手に入れたキャラクターを所狭しと並べまくっていた息子。「たくさんのキャラクターがいて楽しいね。でもいるだけだね」と私が言ったところ、次第にレッスンで覚えた技を使ってキャラクターたちそれぞれのプログラミングをし始めた。

「これがこっちにぶつかったらこうなるの。でね、こういうことを言ったら面白いと思う」と色々と説明しながら作っていた。怖い見た目のキャラクターが来たら「こわい」、トゲトゲのキャラがきたら「いたい」など、子どもなりにそれぞれの関係性を考えて作れていたようだ。

「リセット」や「回転」、「角度」を取り入れたり、条件を設定してキャラクターに言葉を喋らせたりして、明らかに以前よりプログラムが高度になっている。すでにローマ字表を見ないでも入力でき、アドバイスせずとも自由に夢中になってプログラムを組んでいた。

息子のプログラミング力が伸びていた

ただし、すべてのレッスンが終わったわけではないため、全てが理解できているわけではない。息子もやっぱり思ったようにいかないところがあって、途中で悔しくて涙を流しながら怒っていた。この辺が実際の教室に通うのと大きな違いになる。

ただしすでに習ったことで置き換えてうまくいくことも多いので、子どもと一緒にある程度プログラミングの仕組みを理解しておけば、十分にアドバイスできるのではないか。息子の場合も、「この動きは難しいから、マウスポインタに合わせて動くのはどうかな」など、すでに習ったことでできる具体的な解決案を提案すると気を取り直して作り直していた。基本は子どもだけで進められる教材だが、その部分では保護者も一緒に見守ってあげてほしい。

管理者ログインで進捗と理解度の管理もできる

キュレオのログイン画面で子どもは「学習者」でログインすれば通常通り学べるが、「管理者」でログインすれば保護者用の管理画面となる。現状では、進捗具合が確認できるのみだが、今後はプログラミング概念ごとの理解度評価も見られるようになる予定だ。

「管理者」でログインすることで管理画面になる
管理画面では学習者のログイン回数や現在学んでいるレッスンのほか、クリアした割合などの進捗が確認できる

無料の20レッスン以降も続けたい場合は、1か月あたり1240円(税込、12ヶ月プラン)の「プレミアムプラン」に加入する必要がある。プレミアムプランでは、プログラミングコースのレッスンの応用や復習に役立つチャレンジコースが100以上プレイできるようになるほか、限定オブジェクトも利用できるようになる。

キュレオを使うことで、基本的な一通りのプログラムを組む力がつくはずだ。レッスンを最後まで終えれば、簡単なオリジナルのゲームを完成させる力がついているだろう。子どもにどんどん進めさせて力をつけ、新規プロジェクトでゲームを作ることを目標としてもいい。

教材名QUREO(キュレオ)
利用料月額1240円(税込、12ヶ月プラン)から(ただし全レッスンのうち20レッスンは無料で体験できる)
対象小学2年生以上
環境インターネットにつないでブラウザを利用できるパソコン(Windows 8/10、Mac OS X 10.10以降、Google Chrome最新版、CPUはIntel Core i5 2.2GHz以上、メモリ4GB以上を推奨)
保護者に求められる知識とスキルパソコンの基本操作や文字入力ができること、パソコンにGoogle Chromeをインストールできること、簡単なプログラミングのアドバイスができること
学習効果プログラミングに興味を持つ、論理的思考力の向上、表現力を高める、キーボード入力に慣れる
学習時間のめやす無料の20レッスンで約3時間以上

※学習効果や学習時間は個人差があります

高橋暁子

ITジャーナリスト。 LINE・Twitter・Facebook・InstagramをはじめとしたSNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。「ソーシャルメディア中毒 つな がりに溺れる人たち」(幻冬舎エデュケーション新書)ほか著書多数。書籍、雑誌、ウェブメディアなどの記事の執筆、監修、講演、セミナーなどを手がける。http://akiakatsuki.com/