景気刺激策と株価対策は、小出しでタイミングがズレるようでは効くものも効かなくなる。その意味で、FRB(米連邦準備制度理事会)が今年に入って矢継ぎ早に2度も金利を引き下げ、これにならって日銀が、遅ればせながら公定歩合引き下げとロンバート型貸出制度の創設をセットで実施したことは、一応正解であった。しかし、これで相場全般の下ブレ懸念はやや後退したものの、株価がドンドン値上がりするかといえば別物である。株価が大駆けをするには、すべての投資家を魅了し買いたくなる大義名分、テーマ性が不可欠だからである。昨年、ネットバブルの大天井にまで株価を引き上げたIT(情報技術)がその好例だ。
●超先端技術につながる3テーマ
そこで昨年のITに代わって、今年の相場テーマとして期待が高いのは有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)、ナノテクノロジー(超々精密技術)、ゲノム(全遺伝情報)である。3つ足してやっと昨年のIT並みかと、テーマ性としては小粒との見方があるのも確かだ。しかし、この3つは深いところでひとつにつながっており、次のITを支える超先端材料・技術に化ける可能性を秘めているのである。
どこでひとつになっているかといえば、化学物質や遺伝子を分子・原子や塩基レベルでコントロールする技術があって成立するということで一緒なのだ。例えば、ナノテクノロジーは1メートルの10億分の1の超微細な世界を対象にし、有機ELの発光材料は有機物のなかの電子の挙動に焦点をあて、ゲノムはDNA(デオキシリボ核酸)の4つの塩基の組み合わせをターゲットにしている。そしてこれら3つが融合したところには、超高集積・高密度な次世代半導体や超高速・大容量の量子コンピューター、生体分子コンピューターなどの新ビジネスが成立してくるのである。
●ナノチューブの昭和電工
しかもこの3つは、いずれも日本が世界最先端であるかいいところを行っているらしいのである。それはナノテクノロジーで米国がやっと昨年に国家予算を組み、研究に着手したことで明らかだ。かつて産業構造は「重厚長大」型から「軽薄短小」型に変化した。しかし今度は「超・軽薄短小」型に進化、その最先端に3つは位置するわけだ。
もしこの見方が成立するならば、とりあえずナノチューブ関連の昭和電工(4004)、有機半導体を照準の新日鉄化学(4363)、生体分子コンピューターを視野に入れているオリンパス(7733)、新遺伝子増幅法を開発の栄研化学(4549)などに当たりをつけて様子をみてみることが賢明かもしれないのである。
[相馬 太郎]
※このコラムは随時掲載します。
2001/2/14
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