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2010年10月27日

オーディオ好きでなくてもこれは楽しい!!
USB DAC付きの真空管ヘッドフォンアンプ
「DN-HPA509B」を使ってみた

 

上海問屋がラインナップする豊富な周辺機器の中から、楽しい一品を紹介するこのコーナー。今回は、9月30日に発売された「USB DAC機能搭載真空管ヘッドフォンアンプ」を紹介したい。

「機能はベーシックかつシンプルだが、趣味性が高い」という、ある意味で上海問屋らしくない(でもしっかり上海問屋している)という一品だ。

機能的には非常にシンプル
真空管の採用は音質重視のあらわれ

DN-HPA509B。中央でオレンジ色にライトアップされているのが真空管だ
フロントパネルには、電源スイッチとヘッドホン端子、ボリュームつまみと入力切り換え用スイッチが配置されている
リアパネル。プリアウト端子とライン入力端子、USB端子がある。AC電源のケーブルは直づけ方式だ
本製品の機能は、大きく分けて次の2つになる。

・パソコンとUSBで接続して使う「USBサウンドユニット」
・ライン入力や内蔵のUSBサウンドユニットの音をヘッドホン向けに増幅する「ヘッドホンアンプ」

USBサウンドユニットはともかく、ヘッドホンアンプという言葉は初めて聞いた、という方もおられるかもしれない。これはその名の通り、ヘッドホンを接続するための小出力なアンプのことだ。

一般的なアンプとの主な違いは、出力の大きさにある。一般のアンプはスピーカーを十分な音量で駆動する必要があるため、最低でも1チャンネルあたり5W程度の出力を持っている。対してヘッドホンはもっと小さな出力でも音を鳴らせるので、ヘッドホンアンプは1チャンネルあたり1W以下の製品が多い。本機の場合も、出力は500mW+500mWと、非常に小さいものだ。

一般アンプと比べたヘッドホンアンプのメリットは、ずばり音質で有利なこと。一般的なアンプでは使えない、出力が小さいが音質面で有利な部品が使えるためだ。本機に使われている「6N2P」という真空管も、1本だけでは出力が小さく、スピーカー用としてはほぼ使えないものだ。

少々話がずれたが、本機の機能はこの2つだけ。音質調整機能などはないし、入力端子もライン入力(RCAピンジャック)とUSBの2系統のみ。出力端子も、ヘッドホン端子(直径6.3mmの標準ジャック)とプリアウト端子(ライン出力端子)の2系統しかない。

このように機能的にはすごくベーシックな本機だが、その特徴は別のところにある。ヘッドホンアンプ部に真空管を搭載していることだ。

現在のアンプ(一般的なもの、ヘッドホンアンプ問わず)のほとんどは、音声の増幅部品としてトランジスタを使っている。本機のように真空管を使ったアンプは、高級オーディオや自作オーディオの世界を除けば、現在ではほとんどない。

これは真空管アンプが、同出力のトランジスタアンプに比べて本体が大きくなり、消費電力が増大するなどの欠点を持つためだが、実はそうした欠点を上回る音質的な魅力を持つ。

本機は、そうした真空管アンプの魅力を活かした、音質重視モデルなのである。

音質・操作感は非常に気持ちよい
真空管の交換も容易に可能

本機をパソコンに接続して使用するには、Windowsのサウンドコントロールパネルで、「優先デバイス」に設定する必要があった。具体的な操作方法は本誌9月1日号を参照してほしい
筆者お気に入りの入力切り換え用トグルスイッチ。パチパチと気持ちよく操作できる
動作中は、真空管がこのようにライトアップされる。真空管の周囲にある保護ケースは光を拡散する効果も持つらしく、かなり美しく光ってくれる
保護ケースを外して、ライトアップ用のLEDを見たところ。周囲にオレンジ色のLEDが設置されている
真空管を取り外してソケットを見たところ。真空管アンプでは標準的な形状のものが使われているので、真空管に触ったことがあれば難なく交換ができる
本機から外した真空管。刻印は「6N2-J」となっているが、「6N2P」という系統に属する管のようだ

本機の音質重視という特徴を支えるのは、真空管だけではない。USB D/Aコンバータ(DAC)チップとして採用された、Burr-Brown(現Texas Instruments)の「PCM2702」も大きな役割を果たしている。

Burr-BrownブランドのDACチップは、高級オーディオでも採用実績が多いが、PCM2702はUSB接続のDACの中でもとくに扱いやすく、定番となっているチップだ。

音質に関しては、実は“そのまま使うとそれなり”なのだが、潜在能力は高く、オーディオ的な回路設計を工夫することで、かなりの音質向上が望めることから、自作オーディオマニアの間でもいろいろな研究がなされている製品でもある。

本機の場合は、真空管アンプと組み合わせることなどで、このチップの良さを引き出す工夫がなされているというわけだ。

実際の音質は、(あくまでも個人的感想だが)良質な真空管アンプらしい、スピード感に溢れるもの。ノイズも少ないので、良質な高級ヘッドホンと組み合わせて音量を上げると、細かな音までもやすやすと聞き取れ、なおかつ耳ざわりではないという、非常に面白い音質で音楽を楽しめる。

また、低音と高音のバランスは、いい意味で若干の低音重視と感じた。とくにノートパソコンなどと比べると、音質的な傾向はガラッと変わるので、同じ曲でも気分を変えて聞ける。真空管アンプの定番であるジャズや女性ボーカル曲などはもちろん、ジャンルを問わずに楽しく鳴らせる実力を備えた製品といえる。

なお、本機をUSB接続で使う場合はUSBの汎用サウンドドライバで動作するため、ドライバのインストールなどは不要だ。ただし、サウンドのコントロールパネルを開き、本機を優先デバイスに設定する必要があった。この操作方法は、本誌9月1日の記事で解説しているので参照してほしい。

今回は64bit版Windows 7 Ultimateで使ってみたが、問題なく動作した。

また、筆者が気に入ったのは、ボリュームツマミと、入力切り換え用のトグルスイッチの感触がよいこと。ボリュームは小さいながらもスムーズに回り、ストレスのない音量調整ができる。また、入力切り換え用のトグルスイッチも、パチパチと気持ちのよい触感で反応してくれる。操作していて気持ちがよいのだ。

さらに見栄えにもこだわりがあるのが本機の特徴。「真空管アンプは、やっぱり真空管がオレンジ色に光ってないと」という人のために、真空管の周辺にオレンジ色のLEDを埋め込み、それを光らせている。本機の回路では、真空管の出力が小さいため、実は真空管自体はあまり光らないのだが、それを補うためにこうした工夫がされている、というわけだ。

そうしたこだわりがあるだけに、本機の光り方はかなり美しい。ディスプレイ的な意味でも真空管アンプを使っている楽しさが十分味わえる。

なお、真空管アンプを触ったことがある人の中には、「真空管が交換できないのか?」と気になっている人もいると思うが、結論から言えばすごく簡単。真空管を覆っているカバーは少し捻って持ち上げると外れるし、真空管はソケットで装着されているので、手で抜ける。

交換に関しては上海問屋・編集部ともに保証外なのでユーザーの自己責任となるが、腕に自信のある方は6N2Pと互換性のある真空管を試してみるのも面白いのではないだろうか。

というわけで、個人的には、本機の音質や操作感は非常に楽しく、また1万1999円(税込・送料込)という価格に比べてもお買い得感が高いものだった。

音楽好きの方には、機会があったらぜひとも一度試してほしい製品だ。

■USB DAC機能搭載 真空管ヘッドフォンアンプ<
DN-HPA509B 製品情報

http://www.donya.jp/item/18594.html

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