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AWSが目指す生成AI利用の高度化 「Amazon Q」提供開始
2024年5月16日 17:06
Amazon Web Services(AWS)は16日、AWSの生成AI関連アップデートについての説明会を開催した。4月に一般提供を開始したAIアシスタント「Amazon Q」や「Amazon Bedrock」の機能拡張について説明した。
生成AIを搭載したアプリケーションは、生産性の向上やインサイトの獲得など、効果がでているものも存在し、様々な活用事例が見えてきたという。一方で、「高度化が必要なケースが増えるのではないか」とも説明する。大規模言語モデル(LLM)を作るために様々なデータが使われているが、LLMだけではカバーできないこともわかってきた。LLMを活用しながら、自社や世の中の課題に対して適切なデータ等を準備していくことが重要とする。
例えば、企業の業務マニュアルやノウハウなどは一般的なLLMには含まれない。世間の価値判断と業務の価値判断が異なるケースもある。メールの文言一つでも、業界特有のNGワードや業務特有の避けるべき表現がある。そのため標準的なモデルやLLMを、カスタマイズして使う必要性が高まっているという。
LLM等をカスタマイズする手法としては、「検索拡張生成(RAG)」、「ファインチューニング」、「継続的な事前トレーニング」などのアプローチがある。AWSではこうした業務に応じたアプローチを選びやすくする環境を整備に力を割いているという。
AWSでは、生成AI関連のソリューションを3つの類型で分類している。ひとつはインフラ、中間となるのがLLM等を組み込んだアプリ開発のためのツールで「Amazon Bedrock」が該当する。もうひとつが構築済みのアプリケーションで「Amazon Q」がこれに相当する。
Amazon Bedrockでは、モデルを選択でき、将来より良いモデルがでたら乗り換えできる。現在、Anthropic(Claude 3)やMeta(Llama 3)、Cohere、Stability aiなどを用途に応じて環境を構築可能。アプリ側の変更は、最小限でモデル乗り換えが可能となる。
また、技術的なサポートだけでなく、戦略フレームワークやワークショップ、マーケットプレイスなどの支援も行なう。
生成AI関連サービスとしては、アプリとして「Amazon Q」を一般提供開始。生成AIを使ったアプリの製品群となっており、Amazon Q Bussinessは、企業システム内のデータに基づいて、利用者に向けて最適化する作業を簡略化する。
例えば、社内規定を調べて、規定に基づくコストを調べて回答するといったことを社内のデータソースからAIが分析して、利用者の作業を低減。Lite(3ドル/ユーザー)、Pro(20ドル)の2つのサブスクリプションを用意する。40以上のビジネスツールと連携する。
また、Amazon Q Bussiness Proのプレビュー版として、「Amazon Q Apps」も提供開始。Q Bussinesで問題解決した会話から、必要なタスクを実行できるアプリをコーディング不要で作成、社内で共有できる。繰り返し作業などのアプリを簡単に作成できる。
Amazon Qは、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Amazon QuickSight」も一般利用開始。社内データ等から自然言語だけでBIダッシュボードを数分で作成できるようになる。
開発者向けには「Amazon Q Developer」を提供。コードのテスト、リファクタリング、アプリケーションのアップグレード、デバッグ、最適化など、確認と修正の時間を大幅に削減できるとする。またデータ統合パイプラインを容易に構築できる「Amazon Q Data Integration in AWS Glue」も一般利用を開始した。なお、Amazon Qの日本語対応については、要望を見ながら対応を進める予定。
Amazon Bedrockにおいては、RAG構築の「Knowledge bases for Amazon Bedrock」と組織内の複数のシステムやデータ操作をまたぐタスクを実行する「Agents for Amazon Bedrock」を東京リージョンに対応した。
また、基盤モデルの入出力について、フィルタリングによる追加の安全機構を容易にする「Guardrails for Amazon Bedrock」も一般提供した。
現在のLLMでは、不適切な表現などを防ぐ様々な仕組みが取り入れられている。例えば、人間に害があると思われる要求や誹謗中傷メッセージの作成指示などを拒否することがある。
しかし、モデルの変更やアップデートにより、その判断が変わるケースもある。Guardrails for Amazon Bedrockは、モデルの持つセイフティー機能に依存せず、モデルの外側でフィルタリングする仕組みとなる。犯罪行為の抑制や、NGワード、個人情報を含む回答などを防ぐことができる。なお、Guardrailsも日本語対応は後日となる。