とにかく機能が豊富なネットギア製品。使いこなせば便利だろうけど、やり方がよくわからない……。この連載では、そんな機能を、毎回わかりやすく解説します。

今回は番外編として、多数のラインアップを揃える「ReadyNAS」から自分にピッタリの機種を選ぶにはどうすればいいか、紹介していきます。

新生活にピッタリなNASはどれ?
ReadyNASのラインナップからシーン別の最適モデルを探る

2015.03.06 清水理史

新生活に向けた準備を

image 新生活にぴったりの「ReadyNAS」を選んでみよう

春の足音が近づき、そろそろ新生活の準備を始めようかと考えている人も少なくないのではないだろうか。

進学や就職でひとり暮らしを始める、パートナーとの共同生活を始める、家族が増える、家族が新生活を始めるといったように、これからの数カ月は、気候が変化するとともに生活も大きく変化する季節でもある。

そんな新生活の準備と言えば、引っ越しや家電の購入など、物質的なモノの準備に気をとられがちだが、忘れてはならないのが「データ」の備えだ。

新生活を機に、家族共有のPCではなく自分専用のPCを使い始めたり、新しい家族用のPCが増えたりすると、それにともなって自分のデータを新しい環境へと移動したり、増えたデータを効率的に管理するための方法を考える必要がでてくる。

そこで活用したいのが「NAS」だ。PCやスマートフォン、各種メディアなど、さまざまな場所に、散在しているデータを個別に移動するのではなく、NASにまとめておけば、生活の拠点が変わってもスムーズかつ安全にデータを移動できるうえ、新しい家族が増えたとしてもデータをまとめて効率的に管理できる。

春以降も今の生活を続ける、と言う人も、この機会にデータを整理してNASに集約しておけば、新生活への対応を迫られても慌てなくてすむだろう。

とは言え、現在ではNASは多くのメーカーから、いくつものモデルが発売されており、未経験者にとっては、どれを選べば良いのかがわかりにくいのも事実だ。

そこで、ここではいくつかの新生活シーンを挙げ、その事例にピッタリなモデルをネットギアのReadyNASの中から選んでみることにしよう。

家庭向けのモデルをピックアップ

まずは、ReadyNASのラインナップを整理しておこう。

ネットギアは、ビジネス向けの高性能なNASも販売しているが、家庭向けのホームストレージソリューションと位置付けているモデルは、ReadyNAS RN100シリーズ、RN300シリーズ、RN500シリーズとなっている。

機種 RN100シリーズ RN300シリーズ RN500シリーズ
CPU Marvell Armada Intel Atom Intel Core i3
メモリ non ECC non ECC ECC
LAN 1~ 2~ 2~
eSATA 1 1~2 3
USB USB2.0×1/USB3.0×2 USB2.0×1/USB3.0×2 USB2.0×1/USB3.0×2
拡張ユニット(EDA500対応) ×
HDMI ×
価格 \13,832~\22,059 \38,403~\54,783 ¥444,532
保証期間 3年 5年 5年

主な違いは、搭載されるCPUなどのハードウェアとなる。上記シリーズには、すべて2015年2月時点で最新となるReadyNAS OS 6.2というファームウェアが搭載されており、ソフトウェア的にはほぼ共通となる。

では、各モデルの違いは何なのかというと、「性能」「信頼性」「拡張性」の3つがポイントとなる。

性能

多くのユーザーで利用する際の転送速度やReadyNASのさまざまな機能の快適さを左右するもので、CPUやメモリ容量によって決定される。

家庭向けモデルで言えば、Marvell Armadaを搭載するRN100シリーズよりも、Intel Atomを搭載するRN300シリーズの方が処理能力は高く、さらにIntel Core i3シリーズを搭載するRN500シリーズを選べば、より多くのユーザーで利用したり、さまざまな機能を追加しても快適さが失われないことになる。

使用者が1〜2人で、使い方もファイル共有やバックアップなどの一般的な用途となる場合は、この違いはさほど意識する必要はないが、より多くのユーザーで利用したり、後からダウンロードで追加できるさまざまな機能を使いたい場合は、なるべく高性能なモデルを選んでおくといいだろう。

image ホームユースであれば、ReadyNAS 102でも実用上十分な性能を発揮するが、搭載されるCPUが高性能になるほど、多くのユーザーで利用したり、さまざまな機能を活用した際のパフォーマンスが向上する

信頼性

大切なデータを保管するためのNASには欠かせない判断基準のひとつだ。とは言え、家庭で使う上では、あまり神経質になる必要はないだろう。

確かにエラー訂正機能を搭載したECCメモリを搭載するうえ、保証期間も5年となるRN500シリーズの信頼性は非常に高いが、RN100シリーズやRN300シリーズでも保証期間が3年と一般的なNASに比べて長く設定されているなど、そもそもReadyNASシリーズ自体の信頼性が高い。

ReadyNASシリーズでは、ディスク故障に備えるためのRAID、任意の時点へのファイルに復元できるスナップショット、無料のリアルタイムアンチウイルスソフトウェア、クラウドや別のReadyNASにデータを保管できるレプリケーション機能、ハードディスクの経年劣化などによるBit腐敗からデータを保護するBit rotプロテクションと、合わせて5段階の保護機能を同載しており、万全の構えでデータを保護できる。

このため、家庭で利用するうえでは、どのモデルでも信頼性を心配する必要はないだろう。

image ReadyNAS RN516などの上位モデルでは、エラー訂正機能を備えたメモリが搭載されていたり、保証期間が5年に設定される

拡張性

ひと言で言えば、容量が足りなくなった場合の備えだ。ReadyNASシリーズでは、本体に複数台のハードディスクを搭載することができるが、フルに搭載された状態から、さらに容量を拡張できるかどうかの違いとなる。

どのモデルもUSB2.0およびUSB 3.0を搭載しているのは共通だが、RN300シリーズとRN500シリーズはUSBに加えてeSATAのポートを搭載しており、市販のeSATA対応ハードディスクやオプションで提供されている拡張ユニットEDA500を接続できる。

ただし、家庭ではそもそも拡張を必要とするケースはまれなうえ、必要な場合でもUSB3.0を利用すれば事足りるケースが多い。このため、この違いも家庭での利用に関しては、あまり意識する必要はないだろう。

image 4ベイモデルのReadyNAS RN314。多くのハードディスクを搭載できるうえ、USB3.0やeSATAによって容量を拡張することができる

このように、スペックを厳密に比べると、いくつかの違いはあるが、家庭での利用を考えるとできるだけ出費をおさえたい。RN500シリーズ、およびRN300シリーズは確かに高性能だが、価格を考えると現実的には選びにくいため、家庭で利用する際の候補としては以下の3モデルが候補にあがってくるだろう。

機種 RN102 RN104 RN312
価格 ¥13,832 ¥22,059 ¥38,403
CPU Marvell Armada 370 1.2GHz Marvell Armada 370 1.2GHz Intel Atom 2.1GHz dual Core
メモリ 512MB 512MB 2GB
ドライブベイ 2 4 2
RAIDレベル JBOD/0/1/X-RAID2 JBOD/0/1/5/6/10/X-RAID2 JBOD/0/1/X-RAID2
最大容量 8TB 16TB 8TB
LAN 1 2 2
eSATA 1 1 1
USB USB2.0×1/USB3.0×2 USB2.0×1/USB3.0×2 USB2.0×1/USB3.0×2
HDMI × × 1
消費電力(動作時/待機時) 31W/1.0W 45.6W/1.4W 35W/627mW
フロント表示パネル × ×
サイズ D×W×H(mm) 220×101×142mm 223×134×205mm 220×101×142mm
重量(kg) 2.12 4.7 2.22
保証期間 3年 3年 5年

シーンごとにベストなモデルを選ぶ

それでは、もう少し詳しく利用シーンを想定して、RN102、RN104、RN312の各モデルのうち、どれを選べばいいのかを見ていこう。

シーン1:進学・就職でひとり暮らしを始める

進学や就職でひとり暮らしを始める場合は、さほど容量が必要なわけではないうえ、ひとりで使えるだけでのパフォーマンスがあれば十分なので、リーズナブルなRN102がオススメだ。

image RN102

ひとり暮らしでは、データを共有する必要がないため、NASを購入することをためらうかもしれないが、ひとりでもPCやスマートフォン、タブレット、ゲーム機、テレビなど、複数のデバイスを活用する例は多い。こういったシーンでは、デバイス間のデータ連携にNASがあると大変重宝する。

たとえば、スマートフォンで撮影した写真をNASに保存しておくことで、PCから編集したり、テレビやゲーム機で見ることができる。

この機会に音楽もCDからNASに取り込んでおくと便利だ。家中のデバイスからNAS上の音楽を再生できるため、PCで作業しながら音楽を楽しんだり、ゲーム機をオーディオ代わりにBGMとして再生したり、イヤホンを使ってスマートフォンでじっくり聞いたりと、同じ音楽データをいろいろな機器から楽しめる。

もちろん、引っ越しのときにも便利だ。家族で1台のパソコンを共有していた場合は、引っ越しに備えて自分のデータを退避させておくことができるうえ、新居に移ってからも、前述したデバイス間のデータ共有やバックアップに活用することができる。

大切なデータをPCの故障で失わなずにすむのメリットだが、学校や職場で、より高性能なPCが必要になったときに、買い替えてもデータをスムーズに移行できるメリットがあるだろう。

さらに、ReadyNASならではのReadyCLOUDなどの機能を使うと、学校や職場からスマートフォンを使って自宅のデータにアクセスできる。最近では大学や職場の研修などでも、積極的にグループワークを採り入れるケースが多い。こういったケースでは、さまざまなデバイスを使う人同士で、手軽にデータを共有できる環境が不可欠だ。

ReadyNASがあれば、大容量のデータをメンバーに送ったり、共同作業でPowerPointの資料を仕上げるといったことも手間なくできるので、グループの中でリーダーシップを発揮することも容易だろう。

自宅内でも、外出先でも、1台でさまざまなデータを効率的に管理できるようになるのでオススメだ。

image ReadyCLOUDを利用すれば外出先からも自宅のデータにアクセスできる
image スマートフォンからもアクセス可能

シーン2:人生の節目を迎える

子どもが生まれたり、学校を卒業したり、進学や就職で家を離れたりと、家族や自分が人生が節目を迎えるというケースでは、写真やビデオなど、多くのデータを記念として保存しておきたい場合がある。このようなときは、容量を重視して製品を選ぶといいだろう。

具体的には、4つのベイを搭載したRN104がオススメだ。最大4TB×4台=16TBものハードディスクを搭載できるうえ、RAIDのレベルもより効率的なRAID5やより安全なRAID6(2台のディスクが故障しても対応可能)を利用できるため、大切なデータを安全に保管できる。

ReadyNASには柔軟な構成ができるX-RAID2機能が搭載されているため、最初は2台のハードディスクから始め、徐々にハードディスクを追加して容量を増やしていくといった使い方もできる。

たとえば、夫婦ふたりだけのときは写真が中心になるので、少ない容量でも問題ないが、子どもが生まれ、成長してくると、次第に大容量のビデオ映像が増えてくる。さらにペットが加わったり、孫ができたりと、家族が増えるごとに、記録するイベントも増えるが、大容量に対応できるReadyNASなら安心だ。

同様に、データそのものの容量が増えても安心だ。家族が節目を迎えるごとにテクノロジーも進化し、デジタルカメラがより高画質になったり、4Kなどの大容量のビデオが当たり前に使えるようになったとしても、途中で容量不足で保存をあきらめずにすむ。こういった点も柔軟な拡張性をそなえたReadyNASならでのメリットだ。

image RN104

また、スマートフォン用のアプリ(ReadyCLOUD App)を使って、スマートフォンで撮影した家族の写真を転送したり、ReadyNASに保存した写真やビデオをリビングのDLNA対応テレビで鑑賞することもできる。

子どもが成人する、結婚式を迎えるといった段階で、夫婦揃ってリビングで昔の思い出を振り返ったり、旅行の思い出を仲間や家族と一緒に大画面で見ることができるのは、とても素敵な使い方だ。日々の生活を手軽に記録できるだけでなく、いつでも、みんなで見られるのは大きなメリットと言えるだろう。

このほか、データの整理にもひと役買う。現状、写真や動画などのデータをカメラやPC、レコーダーをはじめとする家電やクラウドなど、さまざまなところにバラバラに保管している人も多いだろう。こういった場合は、ぜひNASに集約しておくことをオススメする。

大切な写真や動画をどこに保存したか? と探し回らずにすむようになるし、見たいときにReadyNASへアクセスするだけですぐに写真を表示できる。

家族それぞれが自分のデータを一カ所に保存すれば、自分が見たこともなかった写真に偶然出くわす楽しさもある。思い出の再発見にひと役買うこともあるだろう。

image 保存した写真はテレビなどのDLNA対応機器でも再生可能
image スマートフォンの写真を自動でバックアップできる

シーン3:自宅を仕事場に

思い切って独立するなど、仕事のスタイル変更を検討中の場合には、RN312のようなビジネスにも使えるNASがオススメだ。

image RN312

Atomを搭載した高い処理能力によって、単にファイル保存したり、バックアップに使うだけでなく、取引先へのデータの送信や共同作業に活用したり、アプリを追加することでWebサーバやデータベースサーバ、アプリケーションサーバとしても活用できる。

小規模なビジネスでは、仕事を紹介するWebサイトにあまり費用をかけることができない場合も少なくない。しかし、ReadyNASであれば、高性能かつ大容量のストレージをWebサイトで活用できるうえ、WordPressなどのアプリを利用してメンテナンス性の高いWebサイトを自由に構築することだってできる。

場合によっては、データベースや開発環境をインストールして、自社で提供するサービスの開発に利用したり、テスト環境として活用することもできる。オープンソースのオンラインショップアプリを利用することもできるので、自社製品を販売するWebサイトとして活用することもできるだろう。

スペースだけでなく、コストも限られた自宅で仕事をするという場合は、RN312のようなコンパクトながら高い性能と拡張性を備えたNASが重宝するだろう。

もちろん、最初から大容量のデータを保存することがわかっている場合は4ベイのRN314、もしくは6ベイのRN316を選んでもいいが、将来的に事業が拡大することになったとしても、RN312ならeSATAや拡張ユニットなどで容量を拡張することができる。

5年間の保証もビジネスで使う上では大きな安心となるので、独立する場合だけでなく、会社の仕事を自宅ですることが多い場合などでも活用できる。ビジネスの生命線とも言えるデータを長期間、安心して預けることができるのもReadyNASならではのメリットだろう。

image 拡張ユニットで容量を増やすことも可能

ReadyNASで新生活をより豊かに

以上、ReadyNASシリーズの家庭向けラインナップを紹介しつつ、具体的なシーンごとにオススメのモデルを紹介してきた。実際には、もっとさまざまなシーンがあると思われるが、自分に近いシーンを参考にライフスタイルに合ったReadyNASを選ぶといいだろう。製品サイトには日本語版のカタログも用意されているので、ぜひ参照してみてほしい。

新生活を始めるにあたっては、電気、ガス、水道などのライフラインに加えて、スマートフォンやインターネット回線などの通信環境の整備が欠かせない状況と言えるが、ビッグデータなどのキーワードが示すように、データの整備も欠かせない状況となりつつある。

その環境を簡単な設定だけで手軽に準備できるのがReadyNASならではの特徴だ。自分のため、家族のため、仕事のためと、用途ごとの設定もわかりやすいGUI画面を見ながら、数クリックで設定することができる。

今までの資産としてのデータを効率的に整理しつつ、これからさらに増えるであろうデータをいかに安全に保管するか、そして保管したデータをいかに活用するかを、この機会に改めて考え直してみてはいかがだろうか。

(Reported by 清水理史)

関連リンク

ReadyNAS 製品情報
http://www.netgear.jp/solutions/homesolutions/readynas/
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