この春からの就職・進学にあたって、引っ越したり、ひとり暮らしを始める人は、もうその準備は整っているだろうか。新居の契約、引っ越し業者の手配、電気、水道、ガスの手続き、住民票の移動や郵便物の転送届けなどなど、引っ越し前後でしなければいけないことは山ほどあるが、1つ忘れていることはないだろうか。そう、「ネット環境をどうするか 」だ。

新生活のスタートと同時にネット環境も用意できれば、私生活でトラブルや迷ったことがあっても、検索して解決策を調べられるし、スムーズに新しい環境に慣れることができるだろう。自宅のネット環境ならやっぱり光やADSL、と思うかもしれないが、実用面では、モバイルWi-Fiルーターによる無線ネット環境も今や固定回線と比べて遜色はない。むしろ用途によっては勝っている部分もあるのだ。

今回は各社から発売されているモバイルWi-Fiルーターについて、そのメリットや機種ごとの速度、サービス内容を比較しながらご紹介しようと思う。あなたの新生活を隅々までサポートする製品・サービスはどれか、ぜひ見比べてみてほしい。

新生活で役立つモバイルWi-Fiルーターのメリットとは?

回線設置に1カ月なんて、待てない!

さて、冒頭で「実用的には固定回線と遜色ない」「勝っている部分もある」と述べたが、具体的にモバイルWi-Fiルーターのメリットはどんなところにあるのだろうか。

まず、 モバイルWi-Fiルーターは一切の工事が必要ない ことが利点として挙げられる。固定回線であれば、光にしろADSLにしろ、宅内工事が必須。回線が宅内まで届いていないなら、引き込み工事から行う場合もある。工事には立ち会いが必要なうえに、施工日時が自由にならないケースもあるから、平日は仕事や学校で不在にしている人にとっては調整が難しい。あらかじめアパートやマンションの管理人に連絡しておく必要もあったりする。

また、固定回線ではプロバイダー契約が通常はセットになる。プロバイダーから送られてきた装置を固定回線に接続し、さらに細かな設定を行う手間も発生するわけだ。以前から使っているプロバイダーをそのまま引き継ぐにしても、転居手続きをしたうえで、それまで使っていた装置をいったん返却し、新居で再び新たな装置を取り付ける、という作業が発生することもある。

しかしすべて無線で通信するモバイルWi-Fiルーターを使う場合は、工事やプロバイダー契約、装置の接続・設定などは一切必要ない。購入したモバイルWi-Fiルーターの電源を入れ、PCやスマートフォン、タブレットなどの無線LAN機器側で所定のWi-Fi設定を行えば、すぐにネット接続できるのだ。

固定回線では転居時に面倒な手続きや工事が生じるのですぐにインターネットを使い始めることができない。一方モバイルWi-Fiルーターなら、契約後即、使い始めることができる

ショップでのモバイルWi-Fiルーターの購入手続きからWi-Fi接続の設定まで、どんなに手間取ったとしても、せいぜい半日もあれば終わるだろう。一方の固定回線は、事前の手続きから工事完了まで、最悪の場合1カ月以上かかる可能性がある。この差はとんでもなく大きい。その間はほとんどが“待ち”状態で、利用者ができることが何もないのもストレスに拍車をかける。

モバイルWi-Fiルーターの通信速度は「光」以上!

ただ、モバイルWi-Fiルーターを使うことによる懸念点がないこともない。1つはプロバイダーのメールアドレスをもてないことだ。

モバイルWi-Fiルーターではプロバイダー契約がないため、プロバイダーのメールアドレスも(無料では)取得できないことになる。しかし、回線のタイプに関係なく使えるクラウド型の無料メールサービスがよりどりみどりの現在の状況なら、プロバイダーメールの必要性は限りなく薄い。スマートフォンユーザーであればなおのこと、GoogleアカウントにもなるGmailのようなメールサービスに完全移行してしまった方が、わずらわしい手続きもデータ整理も不要になり、文字通りスマートなネット利用が可能になるはずだ。

もう1つは速度。光回線は標準で100Mbps、地域によっては最大で1Gbpsや2Gbpsというサービスも開始している。この点でモバイルWi-Fiルーターは大きく劣ると思われがちだが、ここで各社が発売している最新モバイルWi-Fiルーターの通信速度をご覧いただこう。

製品名 最大受信速度 最大送信速度
NTTドコモ
Wi-Fi STATION HW-01F
150Mbps
(Xi)
50Mbps
(Xi)
NTTドコモ
Wi-Fi STATION L-02F
150Mbps
(Xi)
50Mbps
(Xi)
UQ WiMAX(au)
Wi-Fi WALKER WiMAX2+
HWD14
110Mbps
(WiMAX 2+)
25Mbps
(au 4G LTE)
ソフトバンク
Pocket WiFi 301HW
110Mbps
(SoftBank 4G)
25Mbps
(SoftBank 4G)
ソフトバンク
Pocket WiFi 203Z
110Mbps
(SoftBank 4G)
25Mbps
(SoftBank 4G)
イー・モバイル
Pocket WiFi GL10P」
110Mbps
(EMOBILE 4G)
25Mbps
(EMOBILE LTE)
イー・モバイル
Pocket WiFi GL09P
110Mbps
(EMOBILE 4G)
25Mbps
(EMOBILE LTE)

このように、インターネットを利用するうえで最も体感速度に影響がある受信速度は、標準的な光回線の100Mbpsをすでに超えている。それどころか、ドコモの「Wi-Fi STATION」は150Mbpsと光の1.5倍の速度を実現しており、110Mbpsの他社製品も圧倒しているのだ。 これほどの速度があれば、通常の用途で不足を感じるようなことはまずない

もちろんこれは理論値であって、数値通りの最大速度が出ることはないわけだが、そういう意味では光回線の100Mbpsも1Gbpsも同じく理論値ではある。共有回線となるマンションタイプの光回線の場合、同じ建物内で使用している人数によって速度が低下することも念頭においておきたいところだ。

大都市はもちろん、その他地域でも安心のエリアカバー率

さらにもう1つ、モバイルWi-Fiルーターの懸念事項を挙げるとすれば、通信可能なエリアが十分に広いか、という点。言うまでもなく、モバイルWi-Fiルーターの優れているところは、持ち運びしやすく、自宅にいても屋外にいても通信が可能な自由度の高さ。それだけに、通信可能なエリアの広さが重要なポイントとなってくる。というわけで、各社のサービスエリアを簡単にまとめてみた。

ドコモ Xi 全国人口カバー率98%※1
FOMAハイスピード 全国人口カバー率100%※2
UQ WiMAX(au) WiMAX 2+ 全国主要都市※3
WiMAX 全国人口カバー率94%※4
au 4G LTE 実人口カバー率99%※5
ソフトバンク SoftBank 4G 全国政令指定都市人口カバー率100%※6
SoftBank 4G LTE 全国実人口カバー率92%※7
イー・モバイル EMOBILE 4G 全国政令指定都市人口カバー率100%※8
EMOBILE LTE 全政令指定都市および全県庁所在地人口カバー率99%※9

※上記内容は各キャリア発表内容に基づきます

全国人口カバー率:。市町村の役場が所在する地点における通信が可能か否かを基に算出
全国実人口カバー率:全国を500m四方単位に区分けしたメッシュのうち、キャリアのサービスエリアに該当するメッシュに含まれる人口の総人口に対する割合
全国政令指定都市人口カバー率:全国政令指定都市の市役所および特別区(東京23区)の区役所が所在する地点における通信が可能か否かをもとに算出
全政令指定都市および全県庁所在地人口カバー率:市町村の役場が所在する地点における通信可否を基に算出

※1 2014年度内目標 / ※2 2008年12月達成 / ※3 2014年度末予定 / ※4 2012年11月末時点 / ※5 2014年3月末予定 / ※6 2012年度末達成 / ※7 2013年6月末現在 / ※8 2013年3月達成 / ※9 2013年9月末現在

主要都市周辺に住んでいる限りにおいては、モバイルWi-Fiルーターでも高速に通信できるであろうことはおわかりいただけると思う。特にドコモは、XiもFOMAハイスピードも非常に高いエリアカバー率を達成しており、安心度は高いと思われる。これらのエリアに該当しない地域で使う時でも、ほとんどの場合は3G通信による数Mbps程度の通信が可能だ。

そのうえ、ドコモとUQ WiMAXのモバイルWi-Fiルーターでは、公衆無線LANに自動接続する機能も利用できる。LTEや3Gの電波が届きにくい場所であっても、公衆無線LANに接続できれば固定回線に近い安定した高速通信が可能というわけ。公衆無線LANの利用はモバイルネットワークのデータ通信を抑えることにもつながるため、通信量の上限が設定されている場合でも気兼ねなく使い倒せるのもうれしい点だ。

たしかに自宅のみで使うことを前提にして、確実に安定した速度を求めるのであれば、光回線を選択するのがベストかもしれない。しかし、小型・軽量でどこへでも持ち運べるというモバイルWi-Fiルーターの特長は、固定回線にはないもの。ノートPCを常に持ち歩いている人、スマートフォンのモバイルデータ通信をできるだけ抑えて節約したい人、あるいはWi-Fiタブレットを外出時にも使いたい人には、自宅でも外でも使えるモバイルWi-Fiルーターの汎用性の高さが大きな魅力となるだろう。

キャンペーンでモバイルWi-Fiルーターがおトクに!

軽くて、すぐに使えて、通信も速いモバイルWi-Fiルーターの良さが伝わったであろうところで、現在提供されているキャンペーンの数々も紹介しておきたい。

ドコモでは、4月から新生活を迎える人に向け、おトクな料金施策を展開している。 「新生活Xiルーター割」 という名称で、Xi対応モバイルWi-Fiルーターを購入すると、毎月の利用料金から最大1,050円(税込)が24カ月間にわたって割り引かれる。申込期間は3月31日までとなっているので、モバイルWi-Fiルーターの購入を検討している人は急ぎたいところだ。

また、ドコモのケータイを所有しているユーザーに向けた 「プラスXi割」 があり、モバイルWi-Fiルーターの基本使用料が割り引きになる。たとえば、ドコモのiPhoneかXi対応スマートフォンを持っているなら、追加でモバイルWi-Fiルーターを「Xiデータプラン フラット にねん」で契約すると、基本使用料6510円(税込)のところが3791円と、約2000円も安くなる。さらに、「新生活Xiルーター割」と併用すれば、2年間は月額2741円で利用することが可能だ。

その他、「mopera U(Uスタンダードプラン:月額500円)」を6カ月間無料で利用できる 「 mopera U スタートキャンペーン」 も展開中。国際ローミングやパケットフィルタリングによるウイルス保護機能を活用して、モバイルWi-Fiルーターをより便利・安全に使えるようになる。しかも、「mopera U(Uスタンダードプラン)」を契約していると、公衆無線LANの「docomo Wi-Fi」の利用料金がずっと無料になる「 docomo Wi-Fi永年無料キャンペーン 」に加入可能だ。

一方、UQ WiMAX(au)では、「 UQ Flatツープラス auスマホ割 」で2年契約することで、基本使用料が25カ月間500円引きになるという割引施策を実施中。auスマートフォンと「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」をセットで使う場合に月額使用料金が最大934円割り引かれる「auスマートバリュー mine」というプランもある。

5月までは、au 4G LTEとWiMAX2+を組み合わせたプラン「ハイスピードプラスエリアモード」の利用が無料になる「 LTEオプション無料キャンペーン 」を行っているので、こちらも利用するなら急いだ方が良さそうだ。なお、特急等の鉄道内や空港、各地の地下街で無線LANを利用できる「UQ Wi-Fi」は無料オプションとなっている。

イー・モバイル(SoftBank)は、イー・モバイルまたはSoftBankのスマートフォンとモバイルWi-Fiルーターをセットで契約すると、スマートフォンのデータ通信定額料が最大月980円割引になる 「 Wi-Fi セット割」 を行っている。モバイルWi-Fiルーターが1つあれば、本人か家族のスマートフォン最大5回線まで割引が適用になるので、合計4900円もおトクになるチャンス。この「Wi-Fi セット割」も3月31日までが期限となっており、やはり早めに申し込んでおきたい。

本当に固定回線が必要か、考えてみよう

モバイルWi-Fiルーターというと、なんとなくリテラシーの高いギークな人向けのアイテム、といったイメージがつきまといがち。でも、工事や接続設定が不要で、Wi-Fi設定さえすれば使い始められる簡単さ、幅広い用途などを考えると、 実はむしろネットワークやコンピューターに詳しくない人にこそ向いている製品 と言える。

100Mbps超の高速通信や全国で使える広大なサービスエリア、一般的なスマートフォンより安価な料金設定、持ち運んで使える使い勝手の良さ、といったモバイルWi-Fiルーターのメリットを踏まえた時、新生活のスタートに光やADSLのような固定回線が本当に必要なのかどうか、改めて考え直してみるきっかけになれば幸いだ。