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KDDI、災害対応向け「ドローン基地局」を活用した通信手段確保の実証実験に成功

国内初「空とぶ基地局」単独で携帯電話サービスや避難者の位置確認を可能に

 KDDI株式会社と株式会社KDDI総合研究所は、ドローンに小型携帯電話基地局を搭載した「無人航空機型基地局(以下ドローン基地局)」を用いた携帯電話位置推定技術を開発し、2019年2月15日にふじみ野市運動公園野球場にて実施された携帯電話捜索の実証実験に成功したことを発表した。

 自然災害時において、倒壊した家屋や瓦礫などの中にいる被災者の捜索は緊急性が高く非常に重要である。被災者の捜索において多くの人が所持する携帯電話の位置情報を活用することができれば、より迅速な発見につなげることができる。
 ただしひとつ大きな問題があった。携帯電話の位置情報を収集するためには、携帯電話の事前の認証処理が必要となるため、携帯電話の契約者を予め特定する必要があるのだ。しかし自然災害発生時においては、一般的に被災者の特定は困難。そのため、携帯電話の位置情報を収集することができず、被災者の早期発見に役立てることができないという課題があったのである。

 本実証実験では、こうした課題を解決すべく、携帯電話のエリア外において、ドローン基地局による携帯電話からの信号 (LTEもしくはWi-Fiを利用) を捕捉し、携帯電話の位置を推定する技術を開発した。
 具体的には被災エリア一帯にドローン基地局を飛行させ、携帯電話から信号を受けるたびにドローンの位置を記録する。同一の携帯電話から複数の信号を受けることで、携帯電話のおおよその位置を推定することができる。
 これにより、被災者の特定が困難な状況であっても、携帯電話の位置が推定される場所から捜索活動を行うことが可能となるのだ。

 今後は自治体や救助機関に対して本技術の活用に向けた詳細なヒアリングを行い、災害救助へ資することを目指していく。
 なお、本事業は、総務省より技術試験事務「移動型の携帯電話用災害対策無線通信システムに関する調査検討」として受託し、得られた知見を基に技術開発を実施したものである。

本実証実験概要

概要

(1)ドローンの機体にWi-Fi通信システム (Wi-Fiアクセスポイント・ロケーションサーバ) を搭載。

(2)携帯電話のWi-Fi機能を使って、携帯電話 (LTE) の信号を模して、信号の検出と携帯電話の位置を推定。

(3)携帯電話のエリア外における携帯電話からの信号の捕捉については、以下2つの試験で検出することを実証。

 (ア)電波を通さないシールドルームにおいて、携帯電話のLTE電波を用いて、ドローン基地局が携帯電話からの信号を検出できることを実証。

 (イ)2017年12月14日に屋久島にて実施したドローン基地局を活用した実証実験における実験データ(
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2017/12/14/2855.html)から、LTE電波による携帯電話電波検出のデータを用いて、オフラインにて携帯電話の位置を推定できること実証。

 なお、ドローン基地局は、ドローンの機体に簡易版の携帯電話システム(無線設備・モバイルコア設備)を搭載しており、ドローン搭載、携行可能な携帯電話基地局システムとするため、小型化・軽量化 (約3kg) している。

実証実験日

2019年2月15日

場所

ふじみ野市運動公園野球場 (埼玉県ふじみ野市)

実証実験の様子
<実証実験で使用したドローン>
<位置推定の画面>

ドローンジャーナル編集部/小山真裕美