VR Watch

触覚、5G、教育……着々と進行するVRの次世代技術。第26回3D&バーチャルリアリティ展

業界向け展示・商談会「第26回 3D&バーチャルリアリティ展」が6月22日(金)まで東京ビッグサイトで実施中です。

21日の基調講演では、日産自動車のアルフォンソ・E・アルバイサ氏、東京大学名誉教授の舘暲氏、東京大学大学院教授の廣瀬通孝氏が登壇、VR活用の現在と今後について語りました。

VRは触覚、5Gなども交えたより高度な次元へ

日産自動車 専務執行役員・グローバルデザイン担当のアルバイサ氏は、同社の自動車デザインにおけるVRの活用を説明。コンピューター上で3Dデザインされるようになって久しい自動車ですが、現在ではバーチャル空間で自動車の3Dデータを走らせることでボディに写り込む風景までも現実そのままにシミュレートしたり、HMDとハプティックグローブを装着してインテリアの質感や位置、ステアリングの感触を試したりなど、様々なデザインワークフローをデジタル上で行っていることを披露しました。

アルフォンソ・E・アルバイサ氏

東京大学名誉教授の舘暲氏は、次世代VRの技術として再帰性投影技術を使った裸眼立体視や、「触原色」の理論に基づいたハプティクス研究・実証が進んでいることを挙げた上で、それらと次世代モバイル通信である「5G」を合わせることでいよいよ「テレイグジスタンス」へと向かうことを説明。遠隔地のロボットを感覚を共有しつつ操作するテレイグジスタンスが普及することで社会問題の解決や新たな産業の創出などが可能になっていくとしました。

舘暲氏

廣瀬通孝教授は、今年2月に発足した東京大学バーチャルリアリティ教育センターの所長としてVRを活用した先端的教育システムの構築に取り組んでいます。VRの特長として「体験のメディア」であり、かつ「見えないものを見えるようにするメディア」、そして「遠く離れたものを手元に引き寄せる」ことができると語り、これらのポイントに注目することで教育の質をあげることができるのでは、と語りました。また、VRにおける重要な点として「真っ正直にやらない」、すなわち、人間の感覚にフィルターを挟み込むことで空間を拡張したり、人間の行動を誘発していくことができることを説明。実際には狭い空間で体験していてもVR空間では非常に広い空間を延々と歩き続けているように錯覚する「無限回廊」などのリダイレクション技術や、VRによる擬似成功体験によるパフォーマンスの向上といった例を挙げました。

廣瀬通孝氏

触覚デバイスに注目か

日産においてすでに触覚、ハプティクスまで含めたVR活用が行われているというのはなかなかインパクトがあります。舘暲氏が取り組む「触原色」にしても、「振動」「温度」「水平力」「垂直力」といったパラメータと「ゴツゴツ」「つるつる」「ぬめぬめ」といったオノマトペを組み合わせるなど理論化が着々と進んでいるほか、アルプス電気などの協力で触覚伝送モジュールの試作や企業へのサンプル提供まで実現しているとのこと。また、インターネットプロトコルや動画コンテナの拡張として触覚伝送の標準化作業も着々と進んでいるそうです。

今回の「3D&バーチャルリアリティ展」においても触覚デバイスやソリューションを出展するブースがいくつかありますので、来場予定の方はそうしたところにも注目してみると良さそうです。

日本バイナリーのブースで体験できる「6軸力覚フィードバック装置」(左)と、ワイヤー式の6軸ハプティックデバイス「SPIDAR-GII」

桑野雄