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日本初の個人向け夜間取引市場~いよいよスタート

取引開始直前に説明する
DLJ國重社長(右)
GS土岐氏(左)
  ●DLJが25銘柄で開始
  個人投資家向けの夜間取引・時間外取引が22日夕刻、国内で初めて始まる。ゴールドマン・サックス(GS)証券が提供するマーケット・メイクサービス「Moon Trade」を利用して、オンライン証券大手の一角であるDLJdirect SFG証券が取引をスタートさせる。「Moon Trade」を利用した取引は、このほか4~5月開始を目指している松井証券、オリックス証券、イー・トレード証券、日興ビーンズ証券の合計5社が参画する予定。

  DLJでは、開始当初は主要25銘柄を17時~19時まで行うが、2月からは100銘柄程度に拡張し、時間も23時30分まで延長する予定。その後、投資家から取引希望の銘柄を募集しながら200~300銘柄に増やし、2月下旬には500銘柄に増やす。取引時間も米国市場が終わった後の午前6時~8時、11時~12時30分にも可能にする見込み。上場銘柄の値幅制限はないが店頭銘柄はJASDAQ通常取引最終価格より上下7%以内の気配表示となる。マーケットメイカーは、開始当初GS証券のみだがモルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター(MSDW)証券東京支店も参加を表明。適正な価格提示などの観点からマーケットメイカーは多い方が良いため、今後増やしていきたい意向だが、多数のマーケットメイカーになった場合でも、どこが最良の提示を行っているか分かるようなシステム、取引画面構成になっている。

  取引開始直前に会見したDLJの國重惇史社長は「採算がとれる1日の約定件数は200件といったところで、これは開始1カ月で達成できるだろう」と初期の成功に自信をみせた。同じく会見したGS証券の土岐大介マネージング・ディレクターは「参画する5社のオンライン証券の注文のうち、およそ2割程度(DLJでは1,600件にあたる)を夜間取引が占めるとみている。今年末の1社あたりの夜間取引は、1日2,000~3,000件程度と予想している」と見通しを示した。

  ●26日にはマネックスも
  このほか、マネックス証券も夜間取引「マネックス・ナイター」を計画している。今月26日から開始する予定で現在準備を進めている。夜間取引では、個人投資家と機関投資家との情報格差がさらに懸念されることなどから、マーケット・メイカー制度による取引ではなく、通常取引の終値1本での取引を行う方針。取引時間は午後5時から午後11時59分までを計画。同証券の考え方は、基本的に取引は取引所・取引市場など公的な機関が行うべきとして、東京証券取引所が行うことを支持している。ただ、同証券の顧客からの注文のおよそ6割は、いわゆる夜間(取引所取引時間外)のため、そうした需要に応えながら、一方で個人投資家の情報格差にも配慮した現実的な対応とする。

  ●東京証券取引所では
  東証自体は、業務委員会の結論で「夜間取引は時期尚早」として、当面導入を見送る形となっている。情報格差やトレーディング・システムの構築など確かに問題もあるが、見送る大きな背景のひとつは、既存の店舗展開を行う大手証券会社が「夜間取引にニーズがあるかどうか分からない」などと異論を唱えた点も大きい。これらの証券では、時間外取引を行った場合のシステムや人件費など、相当なコスト負担がネックになっている。

  もっとも、東証が完全に夜間・時間外取引をあきらめたわけではなく、いざ開始するときになっても後手に回らないよう、先行他社をみながら引き続き研究しているという。

  こういった流れに対して、オンライン最大手、松井証券の松井道夫社長は、メールマガジンやWebサイトを通じて東証で行う意義やそれに反対する勢力に対しておおっぴらに批判を展開している。それでも、時間外取引の必要性が東証のコンセンサスには至っていない。

  ●先発の事業者向けは・・・
  このほか、機関投資家や証券会社など業者向けの時間外取引では日本相互証券が、2000年9月から日本で初めて事業化している。

  同様の取引としては、米国ナイト・トレーディング・グループ(旧ナイト・トライマーク)60%、日興証券40%の合弁で設立されたマーケット・メイクと自己売買を行う「Jナイト証券」がある。資本金は当初20億円だったが、2000年12月4日の業務開始時には60億円に増資している。アイ・オー・データ(6916)、マンダム(4817)の2銘柄でスタートし、現在はJASDAQ77銘柄を取り引きしているが、売買規模は不明。

  また、現在の取引時間は通常の取引時間内で、計画はあるものの今のところ、時間外取引も行っていない。

  ●重い腰を上げる契機に?
  いずれにしても、個人向けの時間外取引がスタート。その動向を多くの関係者が注目している。取引所・取引市場とは「投資家が売買したいときに公正、公平で、的確、迅速に売買を執行する」というのが存在使命といえる。そういった意味では、夜間取引は、やはり公的なマーケットである東証などが行うべきであろう。

  客観制を追求しようとしても、利害が生じる一企業が取引の場を作ることの限界もあるからだ。腰の重い東証を動かすには、今回の取引開始によって夜間・時間外取引の必要性が支持されることだ。そのためには、まず「Moon Trade」の実績が大きな鍵となる。

  この点については國重社長も「東証にも早く時間外取引を開始して欲しい。東証のオークション方式による時間外取引とMoon Tradeのマーケットメイカー方式による取引を両方提供することで投資家の利便性をさらに高めたい。Moon tradeの参加者が多くなることで、東証が開始するきっかけになるかもしれない」と語った。

■URL
・MOON TRADE(ゴールドマン・サックス証券)
http://www.gs.com/japan/moontrade/
・DLJdirect SFG証券夜間取引
http://www.dljdirect-sfg.co.jp/DLJJapan/PRNT_V_GID_INFORMATION_02.html
・マネックス証券夜間取引
http://www.monex.co.jp/static/MONEX/HOM/HOM_VWhats_New20000912_GFrm.html

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・DLJの夜間取引まずまずの出だし
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/01/22/doc1740.htm
・株式夜間取引がついに幕開け~GS証券が「Moon Trade」を1月開始
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/12/13/doc1391.htm
・DLJ、2001年度の黒字転換見込む~夜間取引にはMSDW証券も参画
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/01/17/doc1689.htm
・夜間取引反対者へメール、Webで反論~松井証券社長
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/11/21/doc1119.htm
・マネックス証券が時間外・夜間取引を計画
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/12/doc402.htm
・乱立する「夜間市場」~証券再編の起爆剤に?
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/18/doc432.htm
・夜間市場開設を断念~東証、“守旧派”に敗れる
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/18/doc432.htm
・日本初の株式私設取引が8月28日にスタート~日本相互証券
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/07/31/doc70.htm
・日本相互証券が私設株取引(PTS)の開始延期
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/08/24/doc227.htm

(別井貴志)
2001/01/22 19:26