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中身一新でミドルレンジとは思えない高性能を発揮
ネットギア プレミアムWiFiルーター「Nighthawk X6S R8000P」

2017/10/24 清水理史

ネットギアから新たに登場した「Nighthawk X6S R8000P」は、最新の技術を惜しみなくつぎ込んだトライバンド(5GHz+5GHz+2.4GHz)対応のIEEE802.11ac準拠WiFiルーターだ。同社のラインナップの中ではミドルレンジに位置付けられるが、無線速度にしろ、CPUにしろ、アンテナにしろ、他社製品では考えられない豪華さで、まさに「プレミアム」という冠が相応しい製品になっている。その実力を検証してみた。

中身は別物

今回登場したNighthawk X6S R8000Pを見て、「どこかで見たことあるなぁ」と思ったことがある人も少なくないことだろう。

それもそのはずで、本製品は、同社がすでに発売している「Nihgthawk X6 R8000」の後継に当たる製品。筐体のデザインやサイズは従来モデルとほぼ同じでありながら、その性能を磨き上げた「プレミアム」モデルとなっている。

ネットギアのWiFiルーターは、通信機器としては、かなりデザインにこだわった製品が多いことで知られているが、本製品はその中でも特に目立つデザインで、本体中央から外側に向かって立ち上がる開閉式のアンテナが非常に特徴的な製品となっている。

今回のNighthawk X6S R8000Pは、その特徴を活かしつつ、高性能なCPUや最新の無線LAN規格に対応したチップを搭載した新モデルで、見た目は同じでも、中身は別物と言ってよいほどに進化した最新モデルとなっている。

ネットギアのNighthawk X6S R8000Pと付属品

実際、従来モデルと比較してみると、その性能の高さがよくわかる。

スペックを単純に比較しただけでも、CPUは同じデュアルコアでも動作周波数が1GHzから1.8GHzにまで高められており、大幅に処理が高速化されていることがわかる。4ストリーム対応のNighthawk R8500よりも高性能になっており、庭内に増えてきた多くの無線LAN対応機器の通信を効率的に「捌く」のにも大いに役立つことだろう。

Nighthawk X6S R8000P Nighthawk X6 R8000 Nighthawk X8 R8500
実売価格 34,414円 16,450円 17,000円
CPU 1.8GHzデュアルコア 1GHzデュアルコア 1.4GHzデュアルコア
メモリ 128MB 128MB 128MB
対応規格 IEEE802.11ac(wave2)/n/a/g/b IEEE802.11ac/n/a/g/b IEEE802.11ac(wave2)/n/a/g/b
2.4GHz速度 750Mbps 600Mbps 1000Mbps
5GHz速度 1625Mbps+1625Mbps 1300Mbps+1300Mbps 2166Mbps+2166Mbps
5GHzチャネル W52/W53/W56 W52/W53/W56 W52/W53/W56
MU-MIMO -
SmartConnect
アンテナ 外付け6 外付け6 外付け4(アクティブ)×内蔵4
WAN 1000Mbps×1 1000Mbps×1 1000Mbps×1
LAN 1000Mbps×4 1000Mbps×4 1000Mbps×6
LAG 2ポート - 2ポート
USB 3.0×1、2.0×1 3.0×1、2.0×1 3.0×1、2.0×1
サイズ 295.5×226.8×54.5mm 295.5×226.8×54.5mm 316×264×61mm
最大消費電力 36.53W 42.94W

※実売価格は2017年10月17日時点のAmazon.co.jpでの価格

無線LANの規格は、従来モデルと同じ3ストリーム対応のIEEE802.11acながら、「wave 2」と呼ばれる第2世代の規格に準拠している。wave2対応のメリットは「MU-MIMO」を利用できること。MU-MIMOでは、同一周波数帯の電波を使って複数台の機器が同時にアクセスすることが可能になり、スマートフォンやPC、IoT機器など、家庭内に複数台の機器が存在する場合でも、速度をあまり落とすことなく、効率的に接続することが可能になる(接続機器側もMU-MIMO対応が必要)。

冒頭でも触れたとおり、本製品はもともと5GHz+5GHz+2.4GHzと3系統の周波数帯を利用できるトライバンド製品となっているため、もともと、なるべく速度を落とすことなく、複数台の機器を同時に接続できるようになっているが、それに加えて、高性能なCPUやMU-MIMO対応で、この特性をさらに強化させたことになる。

PCやスマートフォン、スマートTV、ゲーム機、監視カメラなど、家庭内にたくさんの機器が存在する場合は、本製品の底力が多いに役立つことだろう。

一方、同時接続時のパフォーマンスだけでなく、ピーク時のパフォーマンスも改善された。従来モデルの最大速度は1300Mbps(5GHz)だったが、同じ3ストリームでも今回のNighthawk X6S R8000Pでは、1625Mbpsへと引き上げられている。

無線LANでは、変調と呼ばれる操作でデータを符号化して電波に乗せるが、このときの符号化方式をより効率のいい1024QAMに変更することで、最大速度を向上させているわけだ。

256QAM 1024QAM
2ストリーム 867Mbps -
3ストリーム 1300Mbps(R8000) 1625Mbps(R8000P)
4ストリーム 1733Mbps 2167Mbps(R8500)

実際に、この速度でリンクさせるにはPCやスマートフォン側の対応も必要になるが、そうした機器が登場したときに有利なうえ、同じく1024QAMに対応したWi-Fiルーターなどを使って通信を中継させる場合などに、単純に「土管の太さを広げる」ことができる。

CPUにしろ、利用できる帯域にしろ、採用される無線LAN技術にしろ、どの点を取っても高性能から生まれる「余裕」があるのが特徴で、さまざまなシーンでの快適な利用が可能となっていると言えるだろう。

なお、このように性能が向上しているにもかかわらず、消費電力は従来モデルよりも下がっており、エコにも貢献するモデルとなっている。この点も、製品としての大きな進化をうかがわせるポイントだ。

新たにLAGにも対応

外観は、基本的に従来モデルとほとんど変わりがないが、相変わらずデザインのユニークさでは、現状の無線LANルーターの中でもトップレベルだ。

開閉式のアンテナは、まるで宇宙船が出航するときや、武器の発射準備をするかのようなイメージを彷彿とさせ、実におもしろい。

正面

側面

背面

似たような構造のアンテナを持つ製品も存在するが、本製品のアンテナは、単に広がるだけでなく、アンテナ部分も前後の2本が可動式になっており、開いたときに、それぞれが少しずつ異なる角度で展開できるようになっている。

「そこまで凝らなくても・・・・・・」と思うような点まで、きっちりと作り込んでくるあたりは、さすがネットギアといったところだ。

片側3本のアンテナのうち、両端の2本は角度を調整可能。かなり柔軟なポジション調整ができる

このほか、外観で特徴的なのは、背面のLANポートだろう。WAN×1、LAN×4でいずれも1000Mbps対応という点は従来と同じだが、新たに1ポートと2ポートがリンクアグリゲーションに対応した。

リンクアグリゲーション(LAG)は、2つのポートを束ねることで2Gbps分の帯域を確保できる技術だ。NASなど、同じくLAGに対応した機器を接続しておくことで、2系統のLANに適切に通信を割り振ることが可能になり、複数台の機器からのアクセスが集中するような場合でも各機器の速度が落ちにくい。渋滞しやすい道路の車線を増やすようなものだと考えるとわかりやすいだろう。

最近では、家庭向けのNASでもLANポートを2つ搭載した製品が増えているので(ReadyNASでは家庭向けの現行モデルならRN102以外はすべて2ポート搭載)、こうしたNASと組み合わせて利用するのに最適だ。バックアップやビデオなどの大量のデータ通信が集中しても、極端に速度が落ちることを避けられるだろう。

ポート1とポート2でLAGを構成可能

標準で有効になっているので、NASやスイッチ側の設定をすればすぐに利用できる

初期設定は簡単

続いて、使いやすさをチェックしていこう。海外製のルーターは難しいというのは、もはや過去の話で、本製品はブラウザベースのウィザードやスマートフォン向けのアプリを使って、簡単に初期設定ができる。

アプリの設定は初期設定と運用管理で別れており、初期設定には「NETGEAR up」を利用する。たとえば、以下のような流れで設定が可能だ。

1) NETGEAR upアプリをダウンロード
2) R8000PにWi-Fiで接続(背面のパスワードやWPSを使用)
3) SSIDとパスワードを変更
4) 管理者アカウントの変更
5) 製品登録

NETGEAR upを使ってセットアップ可能

ポイントは、このステップの中に、3) SSIDとパスワードの変更と4) 管理者アカウントの変更が組み込まれている点だ。

ネットギア製品は、製品ごとに異なるSSIDとパスワードが設定されているため、標準のまま使っても問題ないが、これを初期設定で変更できるのも安心して利用するためには大切だ。もちろん、ユーザー自らが単純なものに変更してしまっては意味がないので、より複雑で自分しかわからないようなパスワードを設定しておくといいだろう。

一方、初期設定後の運用管理には「NETGEAR Genie」を活用できる。Wi-Fiの設定や後述するペアレンタルコントロールの設定などが可能になっているうえ、ネットワークマップなども表示できる。

最近ではPCよりもスマートフォンをメインに使う人が増えているため、こうした設定や管理までスマートフォンで完結するのはありがたいところだ。

日常の管理にはNETGEAR Genieを利用

友人にWi-Fi接続を提供するためのゲストネットワークの設定も可能。相手もNETGEAR GenieをインストールすればQRコードでパスワードを伝達できる(クリップボード経由でのペースト)

ネットワークマップの表示やペアレンタルコントロールの設定も可能

また、初期設定のタイミングで新しいファームウェアが提供されていれば、設定ウィザードの中でアップデートも実施される。

ルーターの脆弱性を狙ったセキュリティ攻撃などを防ぐにはファームウェアのアップデートが欠かせない。これをユーザーの任意に任せず、初期設定の段階できちんと実行させることは非常に好ましい。

ファームウェアのアップデートが実施される

無線LANの実力は?

気になるパフォーマンスだが、以下のとおりだ。木造三階建ての筆者宅にて、1階に同製品を設置し、各フロアでiPerfによる速度を計測した。

利用したクライアントが最大867Mbps対応のMac Book Air 11(2013)なので、1024QAMの1625Mbpsの実力は発揮させることができなかったが、各フロアともに高い速度を実現できており、パフォーマンス面での不満はないと言えそうだ。3階でも入り口付近で183Mbps、もっとも離れた3階端でも47.7Mbpsが実現できており、長距離での伝送にも強い。

3ストリーム対応とモデル的にはミドルレンジに位置する製品だが、同レンジのモデルの中では良好な結果と言っていいだろう。

ただ、最近では5GHz帯も利用するチャネルによって干渉の影響を受けやすくなっているようで、今回のテストでは2系統ある5GHz帯のうち、100chを利用した方は良好な結果が得られたものの、44chを利用した場合は長距離での速度低下が若干目立った。

このような結果を考えても、やはりトライバンドで5GHz帯を2系統使えるメリットは大きいと言えそうだ。

※サーバー:Intel NUC(DC3217IYE),Windows Server 2012R2
※クライアント:Macbook Air Mid-2013 11インチ(866Mbps)

機能面では、USBで接続したストレージのデータ共有(ReadyCLOUDによるリモートからもアクセス可能)が可能なうえ、ペアレンタルコントロール機能も無料で利用できるようになっている。

ペアレンタルコントロールでは、OpenDNSを利用して子どもに相応しくないWebページを簡単にフィルタリングすることが可能になっているため、家族で使う場合にも適した製品となっている。

ペアレンタルコントロールにはOpenDNSを利用。DNSのしくみを応用して危険なサイトへのアクセスを禁止できる。どのようなカテゴリを禁止するか、時間帯によってフィルタをどう使い分けるかはWebページで詳細な設定が可能

価格相当の価値はある

以上、ネットギアから登場したNighthawks X6S R8000Pを実際に使ってみたが、スペック的にも、実力的にも、「プレミアム」という冠に相応しい製品と言って良さそうだ。

見た目の新鮮さこそないが、相変わらずデザインはユニークなうえ、細部の作り込みの精度も高く、何より中身が別物で性能的に文句ない仕上がりになっている。

実売価格が約3万4000円と若干高く感じるかもしれないが、それに見合う価値を持った製品と言える。これから無線LANルーターの買い換えを検討している場合は、その候補としてリストアップしておきたい製品だ。

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