2系統の5GHz帯に端末を自動振り分け トライバンド無線LANルーター「Nighthawk X6 R8000」

2015.05.29 清水理史

ネットギアから「トライバンド」に対応した無線LANルーター「Nighthawk X6 R8000」が発売された。実際に製品をチェックしながら、トライバンドとは何か、どのようなメリットがあるのかを探っていこう。

5GHz帯をもう1つ追加

無線LANルーターには、普段はあまり馴染みがない用語が使われることが少なくない。IEEE802.11acなどの規格が代表だが、MIMOなどの高速化技術もそうだし、今回、ネットギアの無線LANルーター「Nighthawk X6 R8000」の「トライバンド」もそのひとつだ。

image ネットギアの「Nighthawk X6 R8000」

トライバンドというのは、直訳どおり「3つの帯域」という意味だ。無線LANは、電波を使ってデータをやり取りする機器だが、このときに利用できる電波の周波数帯として2.4GHz帯と5GHz帯の2種類が許可されている。

これまでの一般的な無線LANルーターは、2.4GHzと5GHz帯の2系統で通信ができることからデュアルバンドと呼ばれていたが、Nighthawk X6 R8000では、5GHz帯をさらに追加し、2.4GHz+5GHz+5GHzの3系統、つまりトライバンドでの通信をできるようにした製品というわけだ。

なぜ、そんなことをするのか? というと、上図でも示したように、混雑によるパフォーマンスの低下を避けるためだ。

かつては、主にPCを接続するために利用されていた無線LANだが、最近ではスマートフォンやタブレット、家庭用テレビ、ゲーム機など、さまざまな機器を接続するケースが増えている。

「IoT(Internet of Things)」などという言葉を耳にした人もいるかもしれないが、今後、身の回りのあらゆる機器がネットワークにつながるようになれば、無線LANに接続される端末は、爆発的に増加する可能性がある。

このように接続する機器が増加すると、無線LANの速度は低下してしまう。なぜなら、無線LANに限らず、電波を使った通信では、同一空間中で同一周波数の通信ができる端末が一台に限られるからだ。

かつて、ラジコンカーなどで遊んだ経験がある人は覚えているかもしれないが、同じ周波数を使う端末が複数あると、お互いの電波が干渉し、うまく通信することができない。無線LANでは、アクセスポイントに接続した端末が同時に通信しているように見えるが、細かな時間単位で、干渉を避けるために順番に通信している。

当然、順番に通信するということは、台数が増えるほどに待ち時間が長くなることであり、同じ時間で送信できるデータ量も少なくなるということだ。通常、通信速度はbps(Bit per Second)で表すが、同一時間内で送れるデータ量が少ない、もしくは同一容量のデータを送るのにより長い時間がかかれば、速度は低下することになる。

前述したように、無線LANに接続する機器の数や種類が増えていることを考えると、パフォーマンスの低下を防ぐには、帯域を増やして、機器を分散させるのがひとつの解決策となる。それを実現したのが、ネットギアのNighthawks X6 R8000というわけだ。

数年前、東名高速道路の渋滞を緩和するために、平行して走る新東名高速道路が開通したが、発想としては、まさにこれと同じだ。混雑するところの車線を増やし、通れる車の台数を増やしたと考えるとわかりやすいだろう。

最大通信速度は1300Mbps

それでは、製品をチェックしていこう。本体は、過去最大級と言っていいほど大きく、サイズは295.5(幅)×226.8(奥行き)×54.5(高さ)mmとなっている。

見た目はまさに戦闘機か、SF作品、それも敵機として登場しそうな宇宙船のようなイメージで、格納式となっている6本のアンテナが大きく目を惹く。

前述したように、本製品は5GHz帯を2系統利用できるが、片側3本で1系統、もう片側3本でもう1系統の通信を担っていることになる。アンテナそのもののサイズは控え目だが、さすがに6本すべてを展開すると、まさにどこかに飛び立ってしまいそうな印象だ。

image 正面
image 側面
image 背面
image アンテナを展開したところ

1系統あたり3本のアンテナを利用することからもわかるとおり、対応する通信速度はIEEE802.11acで最大1300Mbpsとなる。

ネットギアでは、Nighthawk X4 R7500で、すでに最大1734Mbps(4ストリームMIMO)対応の製品をリリースしているが、これよりもMIMOで多重化するストリーム数がひとつ少ないことになる。

なお、トライバンドの名のとおり、2系統の5GHz帯に加えて、2.4GHz帯の通信にも対応している。こちらが対応する規格はIEEE802.11nだが、一部、IEEE802.11acの機能(256QAM変調)を採用することで、最大600Mbpsの速度に対応している。

価格は、実売価格で35,000円前後と、ハイエンド機らしいものとなっている。少々、手を出しにくい価格に感じるかもしれないが、5GHz帯が2系統使えるということは、実質的に2台の無線LANルーターを設置しているのとほぼ同じことと言える。

複数の人と複数の機器を接続するオフィスなどの環境では、無線LANアクセスポイントを複数台設置することも珍しくないが、こういった環境でもNighthawk X6 R8000なら1台でまかなうことも可能となるため、一概に高いとも言えないだろう。

帯域の振り分けはすべておまかせ

初期設定や使える機能などは、従来のネットギア製品とほぼ共通となるため、ここではトライバンド製品ならではの機能にフォーカスしていこう。

前述したように、本製品では5GHz帯を2系統利用することができる。標準設定では、それぞれにSSIDが割り当てられ、端末を接続するときに、どちらに接続するかを選択する設定となっている。

しかし、端末ごとに接続先を分けるのは面倒なうえ、具体的にどの機器をどちらに振り分けるか検討するのも手間がかかる。

そこで、Nighthawk X6 R8000には、「Smart Connect」という機能が搭載されている。設定画面の「ワイヤレス」で有効化すると、2系統ある5GHz帯の両方に同じSSIDが割り当てられ、ユーザーからはひとつの接続先のように見えるようになる。

image Smart Connectにより2系統の5GHz帯をシームレスに利用可能

この状態で、端末から無線LANで接続すると、Nighthawk X6 R8000が、2系統ある5GHz帯のどちらに接続するか、端末を自動的に振り分けてくれるようになる。

なお、Nighthawk X6 R8000では、5GHz帯のうち、1系統をW52/W53のチャンネル(36/40/44/48/52/56/60/64)から、もう1系統をW56(100/104/108/112/116/120/124/128/132/136/140)から割り当てる。

基本的にはSmart Connectを利用すべきだが、たとえば映像配信サービスを使うテレビの通信品質を落としたくない、といったように明確な使い分けを意識したい場合は、Smart Connectは無効のまま、5GHz帯の2つのSSIDを指定して明示的に接続先をユーザーが管理した方がいいだろう。

image Smart Connectを有効にすると自動的に振り分けが行われる。明示的に使い分けたいときは、オフにして接続先をユーザーが管理する

オフィスでの利用もオススメ

以上、ネットギアの新製品「Nighthawk X6 R8000」実際に使ってみたが、今後の無線LANで求められるであろうニーズをうまく先取りした製品と言えそうだ。

特に家庭では、端末の台数増加によるパフォーマンス低下は、現状はさほど問題になっていない可能性があるが、今後は確実に目に見える課題となる可能性が高い。それを見越して導入しておくというのは賢い選択だ。

個人的には、どちらかというと、オフィスでの導入をオススメしたい。すでにPCやプリンターなどだけでなく、スマートフォンやタブレットなどの導入で、飛躍的に無線クライアントの台数が増えており、無線LANの帯域不足が問題になっている。かといって、小規模なオフィスでは、何台も無線LANアクセスポイントを設置することができない以上、本製品のようなソリューションは最適と言えるだろう。

もちろん、単体での性能も優秀だ。以下のグラフは、木造三階建ての筆者宅で、一階に「Nighthawk X6 R8000」を設置し、各フロアからiPerfによる速度を計測した結果だ。一階で700Mbpsオーバー、3階でも300Mbps越えとなっており、なかなかの実力だ。

image 単位:Mbps
※サーバー:Intel NUC DC3217IYE
※クライアント:Netgear R7500+Apple Mac Book Air 11 2013
※サーバー側:iperf -s、クライアント側:iperf -c [IP] -t10 -i1 -P3

USBポートによるストレージの共有なども利用できる多機能な製品となっているので、無線LAN環境の改善を考えている場合は、候補として検討してみるといいだろう。

(Reported by 清水理史)

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