2001年10月
「シブヤ・シネマ・ソサエティ(S.C.S)」 総支配人 山下章さん

「シネクイント」支配人 斉藤 智徳さん

「ユーロスペース」劇場支配人 北條誠人さん

2001年9月
「シネアミューズ」劇場支配人 佐藤順子さん

「東宝株式会社」菊地裕介さん

「アップリンク」中村美穂さん

「セテラ・インターナショナル」加賀谷光輝さん

2001年8月
「ザナドゥー」杉山淳子さん

「ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン」石井恵美子さん

「スローラーナー」遠藤麻早美さん

2001年7月
「有限会社リベロ」武田由紀さん

「日本ヘラルド映画」島田いずみさん

「UIP映画」宮下恵理さん

「オンリー・ハーツ」中村洋子さん

「プレノン・アッシュ」佐藤美鈴さん


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第5回:『メトロポリス』
“偉大な作品をいかに乗り越えるか”

 原作付きの映画はとかく原作と比べられる。そして往々にして原作に軍配が上がる。偉大な作品をいかに乗り越えるか。古今東西の映画作家は様々な試みを繰り返してきたが、残念ながら、その試みはほとんどが失敗に終わっている。しかし、中には成功する例も稀にある。『メトロポリス』は数少ない成功例に数えられるはずである。

 原作『メトロポリス』は、『ロストワールド』『来るべき世界』と共に手塚治虫の初期SF三部作を構成する傑作とされている。フリッツ・ラングの超大作『メトロポリス』(1926)にヒントを得たと言われるこの作品は、しかし未来の大都会を舞台に女性的な人造人間が登場するという点以外共通点はなく、探偵・冒険物語的な色合いが前面に押し出されている作品となっている。

 メトロポリスの全容を描く手塚治虫の奔放なイマジネーション、スリリングなストーリー展開と卓越したテーマ性はこの作品をSF漫画の古典として不動のものにしている。しかし、私には不満があった。絵が古くさい。そして、台詞が幼稚である。他の点には目をつぶるとしても、この2点について私はどうしても不満を押さえることはできなかった。このことは、『ロストワールド』『来るべき世界』についても言えた。確かに古典としての価値は計り知れない。そのことは分かるのだが、作品として、先の2点の不満を考えると、う~ん・・・と唸ってしまうこともまた事実なのであった。

 私にとってそんな印象が強かった『メトロポリス』が劇場版アニメーションになった。りんたろうが監督し、大友克洋が脚本を担当している。制作はマッドハウス、原画に小松原一男などが参加している。結論から言うと、このアニメーション作品は「とてつもなかった」。私が手塚治虫の『メトロポリス』に抱えていた不満点がほぼ解消されていたどころか、想像を絶するレベルで改善されていた。もちろん、絵の古くささ、台詞の幼稚さは払拭されていた。特に、前者については文句の付けようがないほどである。思わずため息が出た。

 複数のスタッフによる映画製作の場合、各要素がバラバラに突出していたのでは、作品として統一感に欠け、失敗作となることは大いにあり得る。『メトロポリス』の成功は、改善された各要素がある一本の基幹に沿って統一されていたことに起因する。この場合の基幹とは手塚治虫の世界観であろう。彼の世界観に、りんたろうの演出、大友克洋の脚本、名倉靖博のキャラクターデザイン、平田秀一の美術などの優秀な仕事が集約されている。各々のスタッフが独自の世界観を持ちながらも、その衝動を抑え、手塚作品の世界観に歩み寄りをみせている。実際に見てみるとよくわかるのだが、原作とアニメーション作品ではだいぶ話が違うし、登場する人物も異なっている。一見、まったく異なる作品にも見えるが、一方で、どこまでいっても手塚治虫の『メトロポリス』であることに異論を挟む余地はないのである。

 原作を活かした作品作りは、偉大な作品が立ちはだかっているからこそ、困難でもあり魅力的な作業でもある。『メトロポリス』はその困難な作業を理想に近い形で実現している。

(谷古宇浩司)

□『メトロポリス』OFFICIAL SITE
http://www.metropolis-movie.com

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