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ネットワーク不要! 音波で通信!

イオンモール×ヤマハ「おもてなしガイド」実証実験開始

 東アジア・東南アジアでのビザの緩和、円安の影響などで今年の3月には単月過去最高の152万6000人(※)を記録した訪日外国人観光客。2020年の東京オリンピック・パラリンピックも控え、今後もさらなる増加が見込まれているなか、日本語の音声をいかに多言語化して効果的に伝えていくかが、大きな課題となっている。

(※)日本政府観光局 「訪日外客数の動向」より

スピーカーからの音波で通信、リアルタイムで翻訳情報を提供

 そんな状況のなか、ヤマハ株式会社(以下、ヤマハ)は、インバウンド観光の振興策・バリアフリー化施策を検討している事業者、観光施設に向けて、利便性の高い多言語の音声・文字ガイドの構築を支援するサービス「おもてなしガイド」を開発し注目を集めている。

 「おもてなしガイド」は、音波で通信するというヤマハの独自技術を用いて、ユーザーのスマートフォンに日本語音声の翻訳・文字情報をリアルタイムに提供できるシステム。店内アナウンス、博物館などの作品紹介ナレーション、乗り物の車内アナウンスなどを多言語化して配信するのに適しており、ユーザーはスマートフォンを音声にかざすだけで、翻訳情報を受けることができる仕組みだ。また、耳の聞こえにくい高齢者や聴覚障がい者の方に向けてソリューションとしても活用できる。そして、インターネット環境がなくとも、独自の音響通信技術によって、既存のスピーカー設備から情報を配信することができるため、災害にも強い新しいシステムとしても期待が寄せられる。

イオンモール×ヤマハによる実証実験開始

 ヤマハとイオンモール株式会社(以下、イオンモール)は4月25日から協働で「イオンモール×ヤマハSoundUD(UniversalDesign)化プロジェクト」を開始した。外国人観光客の利用が多いイオンモール(幕張新都心店、成田店)で「おもてなしガイド」の実証実験が5月1日から9月末まで実施される。

 本日はイオンモール幕張新都心店で体験会が開催されたので、その様子を簡単にレポートしよう。

体験会はイオンモール幕張新都心店「グランドモール」で行われた

 店内アナウンスの翻訳情報を自分のスマートフォンでリアルタイムに確認できるデモが行われた。アプリを開くだけで翻訳された音声や文字の受け取りが可能で、翻訳コンテンツは各モバイル端末の言語設定にあわせて提供されるため、複雑な設定をしなくても必要な言語で情報を受け取ることができる。

アナウンスを確認を押すと、リアルタイムで翻訳情報が届く
日本語の例
英語の例

 続いては、実際に起こりうる外国人モニターによる「子どもが迷子になった」というシチュエーションを想定したデモ。

 館内でアナウンスが流れているときにアプリを使用すると、その内容がスマートフォンに表示される。子どもの迷子に限らず、モールでの快適な買い物、言葉がわからなくても不自由なく日本を楽しんでもらうのが目的だ。

 インターネット環境のない場所でも利用できる多言語の音声・文字ガイドを構築でき、地下街や病院、映画館でも利用できるほか、高額なパケット代やスマートフォンのバッテリー消費を心配する外国人観光客にも配慮した設計が簡単に実現できる。

 ゲストスピーカーの経済産業省の広瀬健治氏は、「聴覚障がい者や高齢者、訪日外国人観光客のアナウンスに対する悩みを同時に解決できる素晴らしいテクノロジーが詰まっている。おもてなしガイドのようなサービスが、今後も世の中にリリースされることを期待しています」と語る。

 いまは訪日外国人観光客の買い物による経済効果は2兆円を超えるという。そんな外国人観光客がストレスフリーで買い物を楽しんでもらえれば、さらなる経済効果にもつながっていくし、店舗側の多言語化に対応する手間も大幅に削減できると考えられる。

ミラノ国際博覧会の日本館にサービスを提供

 現在開催中の2015年ミラノ国際博覧会において、日本政府が出展する日本館で「おもてなしガイド」は公式アプリに採用されている。昨年は、大阪の陣400周年記念イベントの「大阪の陣400年天下一祭冬の陣」で、先行事例となるアプリが登場して話題を集めた。また日本科学未来館ドームシアターのプラネタリウムのナレーションに同期させて、タブレット上に字幕を表示し、聴覚障がい者の方も健常者とともに楽しめる空間をつくり出したり、ますます注目が高まっている。今回の「イオンモール×ヤマハSoundUD化プロジェクト」実証実験は9月末まで実施されているので、“音声にスマホをかざす”新しいサービスを体験してみてはいかがだろうか。

(編集部)