VR Watch

3分で人体3D化を実現、「デジタル化工場」構想でVRコンテンツ量産を目指すVRC

10月4日から幕張メッセで開催されているCEATEC Japan 2016。コンシューマーエレクトロニクスのショーケースから脱却し、CPS(Cyber Physical System)/IoT(Internet of Things)の技術展を目指すという展示の中から、VRコンテンツ製造のパラダイムシフトをもたらす技術を見かけたので紹介したい。

CEATEC Japan 2016の「CPS/IoTを支えるテクノロジ・ソフトウェアエリア」VRCブースに設置された3Dスキャナシステム

株式会社VRCが展示する人体用高速3Dスキャナシステムはまだ試作品の段階だが、一眼レフカメラと赤外線センサーを左右に4セットずつ備え、全身の撮影を4秒で完了させ、同社独自の画像処理技術によって3分以内にSTL(Standard Triangulated Language)形式の3Dデータファイルを生成できるというものだ。これにより、撮影してすぐ結果を確認できるほか、一度に複数のポーズの撮影を提供できる。当面のビジネスモデルは、アパレル系ECとの協業によるバーチャルフィッティングサービスの提供や、3Dゲーム業界との提携を考えているとのことだが、その先に見据えるのは来るべきVR/AR社会における「デジタル化工場」だ。

撮影開始の合図とともに周囲のカメラと光源が高速で半周回転して中心に立っている人物をスキャンする

既存のソリューションでの3D化処理は、1体につき1時間かかったとすると1日に24体しか作成できないが、同社のシステムなら1体3分、1日に480体を作成できる。しかも、処理には一般的なPCを用いており、高性能なPCを用意することで処理速度は1分台まで短縮、そうなると1日に約1,000体の3D化モデルを量産できることになる。

このシステムのコアになっているのは同社の3Dモデリング技術だ。カメラやセンサーから取り込んだデータを立体化する特殊な計算を高速に処理する技術をベースに、周辺のハードウェアを作り込んでおり、特許も出願済みだという。同社の社長である謝 英弟氏は画像処理の博士号を持つ技術者で、会社もハードウェアよりソフトウェアに強みを持つ。この年末までには、スキャンした3Dモデルを閲覧しバーチャルフィッテングするためのスマートフォンアプリも完成させる予定とのことだ。こうしたシステムには設置場所や初期導入費用の問題がつきものだが、同社が所有する設備でスキャンを代行したり、作成された100MB程度の高解像度STLデータをスマートフォン向けなどニーズに合わせて5~10MBまで落としてダウンロード提供したり、といったサービスをプラットフォームとして展開することも考えているという。

会場では高性能なPCを使っているとのことで、ほとんど待たされることなく3Dモデルが表示された

手軽に自分の3Dモデルが作成できるようになれば、アパレル系ECでは購入後のサイズや色柄のミスマッチによる返品といったリスクが減り、試着の難しい着物やウェディングドレスといった着直しが極めて困難な衣装の検討もより手軽になる。また、試着が認められていない下着や、コスプレといった趣味性の高いものにも応用ができそうだ。いずれゲームセンターのプリクラも3D対応し、デコレーションした自分の3Dモデルを仲間内でシェアしたり、スマートフォンゲームの主人公に利用したりできる時代が来るのかもしれない。