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夜間市場開設を断念~東証、“守旧派”に敗れる

  東京証券取引所が、夜間取引市場の開設計画を事実上断念することになった。新市場の創設を求めるオンライン証券各社とスクラムを組んで推進してきたが、野村証券(8604)をはじめとする従来型の証券各社が計画を撤回させようと、多数派工作を展開。最終的には、守旧派が東証・オンライン連合軍を粉砕した形となった。

  夜間取引市場を検討していたのは、東証の業務委員会(委員長・長尾栄次郎丸三証券社長)。関係筋によると、17日午後3時半から開かれた同委員会は、大荒れに荒れた。反対派が「デパートだって夜は営業していない」などと主張し、計画の撤回を要求。これに対し、賛成派でもある長尾委員長が「だから、コンビニに客を奪われたのではないか」と応戦した。

  さらには、委員会のメンバーではない地場証券の首脳が“乱入”、「株式会社化といい、最近の東証は気に食わないことばかりやってくれる」などとまくしたてる一幕もあり、国会の予算委員会顔負けの論戦が繰り広げられたという。

  ●21日の理事会に「時期尚早」報告
  採決では、オンライン取引が主体の丸三証券(8613)、オリックス証券、マネックス証券(8626)が「賛成」。日本証券金融(8511)は立場上からか、「中立」を表明した。一方、地場の2社が「反対」したほか、野村証券や大和証券SBCM、外資系など10社が「時期尚早」との見解を表明。結局、業務委員会は21日に開かれる東証理事会に「時期尚早との意見が多数」と報告することを決定した。

  実は、採決の前に勝負はついていた。野村証券、大和証券グループ本社(8601)、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券など7社が連名で、長尾委員長に対して「(夜間取引)導入の可否についての決議を行うことは適当ではない」との意見書を突き付けていたのだ。

  対面型営業が主体の守旧派側には、ネット証券各社がシェアを一層拡大すれば、「営業マンを通じて顧客に推奨銘柄を買わせるという経営の根幹が揺らぎかねない」との危機感が強い。さらに、夜間取引に対応するには多額のシステム投資を迫られるという事情もある。

  一方、東証も「株式会社化」という最重要課題を抱え、大株主となる野村などと全面対立する事態は避けざるを得なかった。21日の理事会後の記者会見で、土田正顕理事長の発言が注目を集めそうだ。

■URL
・乱立する「夜間市場」~証券再編の起爆剤に?
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/18/doc432.htm
・マネックス証券が時間外・夜間取引を計画
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/12/doc402.htm
・東証
http://www.tse.or.jp/

(兜太郎)
2000/11/20 10:01