1965年横浜生まれ。某大手出版社で編集の仕事をする傍ら、DTM、レコーディング、PC関連の雑誌や書籍のライターも手掛ける。とくにデジタルサウンド関連は20年近く前からメインテーマとして取り組んでおり、投資した額も莫大。今や自室にはさまざまなデジタル楽器が置かれ、完全なスタジオ状態。現在DOS/Vパワーレポート、サウンド&レコーディングマガジン、デジミュー、アサヒパコンなどで執筆中。
     

これがSDメモリーカード。
ものすごく小さい!
 
     SDメモリーカードというものをご存知だろうか? これはその名の通りメモリーカードの1つで、PCカードを第1世代、コンパクトフラッシュやスマートメディアを第2世代と見たとき、第3世代となる新しい規格だ。

SDメモリーカードの特長は大きく分けて4つある。まずは写真を見てもらえれば一目瞭然だと思うが、かつてないほどに小型化が実現されたコンパクトサイズ(メモリースティックよりも小さい!)。そして、今後のデジタルコンテンツ配信に欠かせない強力な著作権保護機能。さらに、近い将来に予定されている大容量化、高速アクセス化のロードマップ。資料によると、2003年には容量1GB、書き込み速度10MB/秒にまで性能を高められるという。そしてもう1つ、広い意味でのネットワーク利用を前提にした幅広い応用性だ。

  SDメモリーカードの用途は、パソコンなどのデジタル製品だけにはとどまらない。電話、テレビ、カーナビ、さらには電子レンジや冷蔵庫といった家電製品まで、様々な場面での利用が想定されている。これは言い換えると、メモリーカードが単なる記憶媒体として使う時代から、共通のネットワークを形作るメディアとして利用する時代へと変化してきたことを示している。もちろん、オーディオ製品への応用も計画されてきた。オーディオ用として使えば、カセットテープやMDなどと同様の感覚で利用でき、SD対応のプレーヤーならばどこでも使用できる。据置型のプレーヤーや、PHS・携帯電話からデータをダウンロードして聴くタイプのプレーヤーも計画されており、すでに実証実験も行なわれている。

 そんな未来予想図的なコンセプトを現実のものとしたのが、東芝から発売された世界初の携帯型SD対応オーディオプレーヤーだ。
     

手のひらにスッポリ収まるサイズ

ボリューム操作などはここで行なう

SDメモリーカードを装着。なくさないように注意しよう
 
     モバイルオーディオプレーヤーの大きさは名刺をやや縦長に変形させた感じのサイズで、シャツのポケットにも軽く収まる。好みに応じて選べる3色のモデルがあるが、私が試してみたのはシルバーボディに青いアクセントが入ったもの。単4電池2本で駆動し、この電池をいれても重さは約75gと実にコンパクト。アルカリ電池の場合、連続再生5時間が可能で、同梱の外部電池ケースを利用すれば約12時間の再生が可能となる。

 本体中央には日本語も表示可能な液晶パネルがついており、ボディ右サイドには2つのジョグスイッチが配置されている。これらを使ってすべての操作を行なうようになっており、電源のオン/オフはもちろん、曲の再生、早送り、ボリューム調整、また内蔵イコライザでの音質調整や再生モードの選択……とさまざまな操作が可能だ。

 本体内部にはあらかじめ64MBのフラッシュメモリーが内蔵されているので、これでCD1枚分のデータが入る。それに加え、ボディ左サイドにはSDメモリーカードスロットが用意されていて、ここに1枚のSDメモリーカードが入る。現時点で発売されているSDメモリーカードの最大容量は64MBなので、これを追加すると128MBとなり、CD2枚分、約120分が収まる計算だ。

 一方、気になるPCとの接続はUSBを用いる。もっとも、本体が非常に小さいためUSBのケーブルは一般のものではなく、同梱されている専用のものを使い、本体上部に接続する。
     

データ転送はUSB。ケーブルは専用の極小タイプを使う

編集画面はこんなかんじ

もちろん取り込んだ曲はパソコンでも聴ける
 
     ほかにSDメモリーカード対応のオーディオ機器がほとんど存在しない現状、基本的に音楽データはパソコンから転送することによって利用する。Windows用のオーディオマネージャという強力なソフトがバンドルされており、これでパソコンとモバイルオーディオプレーヤー間のさまざまな連携プレイが可能になっている。データフォーマットはMP3よりも高音質と言われ、今年末から開始されるBSデジタル放送にも採用が決定されたAACという規格。もちろんMP3にも対応している。

 まずはCDからAACへのエンコーディングを試してみる。CD-ROMドライブに目的のCDをセットすると画面上にトラックの状況が表示されるので、エンコードしたいトラックを選択して[取り込み]ボタンを押せば、その曲のAACファイルができあがる。エンコード作業にかかる時間はPCのスペックによっても異なるが、だいたい元曲の演奏時間の1/4~1/3程度だ。例えば、3分の曲をエンコードするのに1分弱でできてしまう。ちなみに、AACのファイルには128kbps、96kbps、32kbpsなどいくつかのモードが用意されており、標準の128kbpsでエンコードすればCDクォリティーとなる。また、32kbpsに落とすと音質は落ちるが、ファイルサイズは1/4程度に縮まり、内蔵メモリだけで4時間程度の曲を入れることが可能になる。パソコン上での再生もできるので、音質を比べてみてもいいだろう。

 エンコードが終わったら、モバイルオーディオプレーヤーへ転送する。専用のUSBケーブルを利用するが、これも簡単。さきほどエンコードした曲の中からデータ転送したい曲を選択して[転送開始]ボタンを押すだけ。これでUSBケーブルを通じて本体内蔵のメモリやSDメモリーカードへデータ転送できる。要する時間はエンコードよりも短く、3分の曲が30秒程度で転送できた。

 このCDからエンコードしたAACファイル以外に、手元にある既存のMP3ファイルも転送が可能だ。その際はいったん中間ファイルを作ってからの転送となるのだが、すでに多くのMP3ファイルを持っている人にとっては嬉しい機能だろう。

 ちなみに、オーディオマネージャでは著作権保護の観点から、1つのファイルから転送できる回数は3回と制限されている。と言っても、パソコン側からモバイルオーディオに転送した曲をもう一度パソコン側に戻せば、その回数は復活するので、単純に3回転送したら終わりというわけではない。こういった管理もきちんとできるようになっているのだ。
     
   
       もし店頭でデモをしているようなところがあれば、ぜひ手にとって試聴してみてほしい。SDメモリーカードのコンパクトさ、AACを使ったサウンドのクリアさというものがはっきり認識できるはずだ。

 モバイルオーディオプレーヤーはSDメモリーカードを用いた第1弾の製品に過ぎないが、十分にそのすごさを満喫できる。今後、SDメモリーカードに対応したデジタルカメラやビデオカメラ、通信機能を備えたプレーヤー……と、さまざまな製品も登場し、モバイルAV市場が本格化していくことは間違いないだろう。

 今のうちから時代を先取りし、ハイセンス、ハイクオォリティーのモバイルAVサウンドを楽しんでみてはどうだろうか。


specifications
外形寸法 縦50mm×横97mm×厚さ12.5mm
質量 約75g(電池含む)
記憶媒体 64MBフラッシュメモリー(内蔵)
SDメモリーカードスロット×1 ※1
バッテリー 単4形アルカリ乾電池1.5V×2本
または単4形ニッケル水素充電池1.2V×2本
バッテリー駆動時間 約5時間※2 (単4アルカリ乾電池連続再生時)
外部電池ケース※3 追加時は約12時間※2
ヘッドホン端子 ステレオミニジャック(3.5mm)
再生周波数 20~20,000Hz
インターフェース USBインターフェース(PC接続) ※4
データフォーマット SDオーディオフォーマット ※5
対応圧縮形式 AAC、MP3
 
※1:SDメモリーカードはオプションです
※2:常温環境で動作の場合
※3:外部電池ケース:単4形アルカリ乾電池1.5V×2本または単4形ニッケル水素充電池1.2V×2本
※4:USBインターフェースは出荷される全てのパソコンでの動作を保証するものではありません
※5:SDメモリーカードのオーディオ標準フォーマット
     
   
      ●モバイルオーディオプレーヤー製品情報
 http://www2.toshiba.co.jp/mobileav/products/audio/index.html
●モバイルオーディオプレーヤー ニュースリリース
 http://www.toshiba.co.jp/about/press/2000_02/pr_j0901.htm