特別企画

個人認証もブロックチェーンになる? 高セキュリティの認証を実現する「BaaSid」が目指す未来とは

仮想通貨をかたちづくる基幹技術「ブロックチェーン」。その真の魅力は、仮想通貨以外のさまざまな分野にも応用できる“汎用性”にある。これを個人認証に活用できないか? そんな声に応えるべく、今まさに開発が進んでいるのが「BaaSid」だ。その実態に迫ってみよう。

仮想通貨と並んで注目される「ブロックチェーン」

最初の緑色のブロックから黒色のブロックまで続く一連のブロックでチェーンが構成される。あるブロックの内容は直前のブロックでの計算結果に依拠するためブロックの改竄は困難
Source: Bitcoin Wiki under CC-BY-3.0

今、巷で話題のITトレンドと言えば、やはり「仮想通貨」だろう。2008年11月にその理論が提唱され、世界中のソフトウェアエンジニアらの協力によって開発された「ビットコイン」は、今や日本国内で幅広い認知を獲得している。

ビットコインが産声を上げたのは2009年1月3日のこと。だが、仮想通貨の流れはビットコインだけにとどまることはなかった。2011年10月には「ライトコイン」、2015年7月には「イーサリアム」が誕生。また、2017年の夏ごろ、ビットコインの分裂騒動が日本でも盛んに報道されたことをご記憶かと思うが、そこでも最終的に「ビットコインキャッシュ」という仮想通貨が新たに生まれた。その他、「モナコイン」は日本発祥の仮想通貨であることが知られている。

こういった数々の仮想通貨の技術的バックボーンになっているのが、「ブロックチェーン」である。これは一種のデータベースシステムで、「ノード」と呼ばれる不特定多数の端末がネットワーク経由で相互連携・協調することにより、データを正しく記録していく。このあたりはP2P(peer-to-peer)の特徴そのものである。

ブロックチェーンは、このP2Pの仕組みを活かした「台帳」だと言える。データは一定のタイミングで内容が固定される。これが「ブロック」だ。ブロックは、そこからさらに次のブロックへと、鎖のように繋がっていく。これがブロックチェーンの語源だ。

このチェーンは相当に強固で、仮にブロックの中身を不正に書き換えようとしても、そのためには繋がっているブロック全てのデータを書き換えなければならない。ブロックは次々と生成され続けていて、さらに複数のノードに分散保存されている。現在のコンピュータの演算能力では書き換えが到底間に合わず、ゆえに「ブロックチェーンは改ざんが困難」と言われる。

ブロックチェーンの定義

1)「ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。」

2)「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。」

(日本ブロックチェーン協会Webサイトより)

ブロックチェーンの使われ方

そしてブロックチェーンは、必ずしも仮想通貨のためだけの技術ではない。「分散型」「改ざんが困難」という特徴を備えた、非常に汎用的なデータベース技術と考えられており、さまざまな分野への応用が期待されている

日本ではこの夏にも、大手銀行などが連携して送金アプリ「Money Tap」のリリースが予定されているが、これにはブロックチェーン技術が用いられている。正式サービスでは、24時間365日の個人間送金が実現し、手数料も現状より低価格になる見込みという。

もちろん、送金以外の分野にもブロックチェーンは使える。英国のEverledger社は、ダイヤモンドの取引透明性確保のためのシステムをブロックチェーンで構築した。ダイヤモンド1個1個に固有のIDを割り振り、その採掘から研磨、流通などの流れをすべて記録する。不法採掘品・盗難品の流通を抑止できるという訳だ。

スウェーデンやジョージア(旧グルジア)では、土地の登記といった不動産分野でのブロックチェーン導入が推進されている。いずれの国ともまだ全面導入ではないとのことだが、手続きの迅速化、所有権証明の簡便化に繋がるものと期待されている。

日本の行政関連では、総務省の情報通信審議会などがブロックチェーンの公的活用を検討中。法人設立手続きや、政府調達などへの応用が具体例に挙がっている。

非中央集権型の認証を「BaaSid」が実現

このように、ブロックチェーンを活用したサービスは本格普及に向けて動き出している。その中には、不特定多数のサービス事業者がブロックチェーンベースの技術とインフラを手軽に利用できるようにする「BaaS = Blockchain as a Service」に向けた取り組みも存在する。すでにAmazonやGoogle、Microsoftといったプラットフォーマーが参入する注目の分野だ。

今回紹介する「BaaSid(バスアイディー)」は、そうしたBaaSとして今まさに開発が進められている、ブロックチェーンを活用した「個人認証」サービスだ。

「BaaSid」の適用分野はオンラインで個人認証が必要となるあらゆるサービスだ

ご存じのように、オンラインでなんらかのサービスを利用するためには、必ず個人認証の作業が必要となる。Webメール、SNS、通販、動画配信など、無料・有料サービスに関わらず、必ず発生する手順と言ってもよい。

ただ、その認証のためには、サービス事業者側がユーザーの個人情報を扱うこととなる。メールアドレスやパスワードはもちろん、氏名、住所、電話番号、クレジットカード番号など、どれもセンシティブな情報ばかりで、万一サイバー攻撃などで情報漏えいが発生した場合の被害は計り知れない。社会的信用の喪失はもちろん、金銭面での補償に発展するケースもありうる。おそらく多くの事業者は「会員数は増やしたい、しかし会員の個人情報は保持したくない」というのが本音ではないだろうか。

BaaSidは、サービスへログインするための個人認証をブロックチェーンで実現しようというプラットフォームだ。ベースとなる個人情報は細かく分割され、1つの特定サーバーに集めることなく、複数のノードへバラバラに保存される。事業者側は個人情報データベースを持つ必要がないため、コストダウンにも繋がる。サービス提供時にはAPIも用意される見込みだ。

「BaaSid(バスアイディー)」の概念図。一つのサーバーに中央集権的に個人データを保管するのではなく、ブロックチェーンを活用し分散した各ノードに断片化・暗号化して保管する

もちろん、サービス利用者側の体験が損なわれることはない。BaaSidでは指紋などでの生体認証(指紋、虹彩、声など)をサポート。断片化された個人データ原本は本人の生体認証キーまたはパスワード(オプション)やOTP(One Time Password)でインスタント認証した際に一時的に復元され、しかるのち直ちに破棄される。

SaaS、PaaS、IaaSからBaaSidへ

ブロックチェーン技術は、しばしば「非中央集権型」などと評される。反対の「中央集権型」は、ある1つのサーバー・ネットワークがサービスのほぼ全部を統括・掌握する事だ。現状、インターネット上で提供されているサービスのほとんどは、この中央集権型だと言える。

非中央集権型とは当然、中央集権型の真逆。具体的には、BaaSidでは少数の特別なサーバー・ネットワークに全てを任せるのではなく、ノード同士が協調し、分散して認証を完結させる。これはノードを構成した参加者それぞれが主体となることで、様々なノードが集合したBaaSidネットワークが巨大な共有個人情報のデータベースそのものになるということだ。

BaaSidを利用するということは、企業やコンテンツの爆発的成長に貢献したSaaS(Software as a Service)、 PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)などと同様、すでに構成されたプラットフォームを借用することになる。異なるのは、そうした既存のプラットフォームやサービスは中央集権型だが、BaaSidは非中央集権集権型のブロックチェーンベースだという点だ。

中央集権・非中央集権のどちらかが正しく、どちらかが間違っているという事はない。しかし、ユーザー認証のような分野では、ブロックチェーン特有の非中央集権型の特性が、本来求められているニーズと相性が良いとも言えるだろう。

BaaSidが「非中央集権型」の個人認証を実現

開発資金調達のためにICOを実施、セミナーも4月13日に開催

開発中のBaaSidではあるが、その実現には、ノードを提供する個人・法人が数多く参加することが大前提となる。そこで、ビットコインにおける「マイニング」と同様、BaaSidの根幹となるブロックチェーン生成の参加者に対して「トークン」が支給されることで、「非中央集権型」の潜在的なノードとなってもらう。将来的には仮想通貨の取引所に登録され、売買できるようにすることも計画されているようだ。

BaaSidは2018~2019年にかけて段階的にサービスを開始していくが、これと並行する形で開発資金の調達を実施する。いわゆる「ICO(Initial Coin Offering)」だ。投資者に対してはトークンが割り当てられる。ただ、ビットコインに代表されるように、多くの仮想通貨は市場価格が乱高下している。また、BaaSidは現在開発中のサービスであり、すぐに全機能が利用できるわけではない。クラウドファンディングなどと同様、一般論としてICOには相応のリスクがある。この点は是非ご注意をいただきたい。

BASトークンの発行元となるのは、シンガポールに本社を構えるBaaSid international Lab (S) Pte Ltd.である。この会社はプロジェクト管理・運営・マーケティングを目的に設立された企業で、シンガポールの他に、アメリカ、オーストラリア、韓国、日本、台湾など各国から参加した約30名をセキュリティ及び金融分野の専門家をボードメンバー、アドバイザーとして擁している。また、BaaSidのエンジニアリング面では、株式会社ピー・アール・オー(横浜市)が大きく関与している。

BaaSidプロジェクトのボードメンバーら

4月13日には、インプレス主催のセミナー「ブロックチェーンでビジネスが変わる~技術動向、ビジネス変革~仮想通貨の最新動向から危機管理まで」において、BaaSidの関係者も登壇する。そこでBaaSidの特徴や将来戦略も語られる予定だ。

また、BaaSidの技術概要がまとめられたホワイトペーパーがすでにダウンロードできる。一足早く概要を知りたい方は、ぜひチェックしてみてほしい。

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ブロックチェーンでビジネスが変わる~技術動向、ビジネス変革~仮想通貨の最新動向から危機管理まで

ブロックチェーンの基本機能や技術動向を概観しつつ、一部では実用化、テスト検証されている実例を踏まえ、これらの技術が変えていく今後のビジネスシーンの変革の可能性を解説するセミナーです。ブロックチェーンに興味がある、ビジネスにブロックチェーンを活用したい、という方はぜひご参加ください。

開催日時
2018年4月13日(金)13:00~17:00
会場
赤坂インターシティコンファレンス the AIR 23
主催
株式会社インプレス
共催
BaaSid、CryptoLab
協賛
KBA、KBIPA、CERTON、Aston、Hcash、tokenbank、bitpider、NPER、BaaSinfra

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