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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

あなたの「値段」はいくら? 市場価値を上げるための生存戦略 #わたしの値段がわからない

イベントレポート

Owlly編集部 2018年6月14日 11:55
フリーランスとして働いている人はもちろん、会社員も「自分の給料は妥当なのか?」と思うことがありませんか? 「個人の時代」といわれて久しい現在、副業が推奨されはじめ、“自分の値段”を意識する機会はますます増えています。そんななか、わたしたちOwlly編集部は、トークイベント「#わたしの値段がわからない! ミレニアル世代の市場価値の測り方」を開催。会社員、フリーランス、会社員+副業と様々な働き方をしている3人の登壇者が、個人の市場価値とこれからの働き方について語り合いました。

《出演者3人のプロフィール》
吉田将英
1985年4月10日生まれ。広告会社勤務の傍ら、プロジェクトディレクターとしてモノゴトや人の間の「関係性をより良い形に結びなおす」ことを信念に、
公私混同で様々なプロデュースおよび企画立案を手掛ける。
ゆるスポーツYOUTHディレクター。NIPPON YOUTH STUDIO共同編集長。
著作に『若者離れ』(エムディエヌコーポレーション)、『なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか』(宣伝会議)
趣味は映画鑑賞、人間観察、noteで記事執筆、サウナ
Twitter:@masahide_YSD


明石悠佳
1992年生まれ、京都出身。2015年に新卒でサイボウズに入社し、1年半製品プロモーションの経験を経たのちコーポレートブランディング部へ異動。現在は「サイボウズ式https://cybozushiki.cybozu.co.jp/」の企画編集や、企業ブランディングのためのコンテンツ制作を担当している。今年1月から複業でフリーランスの編集者/ライターとしても活動を行っている。
Twitter:@akyska


長谷川賢人
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科を卒業。2009年に新卒で紙の専門商社へ入社後、2012年に編集者/ライターへ異業種転職。メディアジーンにて「ライフハッカー[日本版]https://www.lifehacker.jp/」副編集長、クラシコムにて「北欧、暮らしの道具店https://hokuohkurashi.com/」編集スタッフを経験した後、2016年9月よりフリーランスへ転向。以降、主にウェブメディアを中心に、記事広告やインタビューの執筆/編集。「江古田文学賞」審査員も務める。
Twitter:@hasex



今の自分の年収、高い?低い?

吉田:今日は「わたしの値段」がテーマということになりますが……年収、金額と幸福度が必ずしも相関するとはかぎりませんよね。明石さんはいかがですか?

明石:年収は……普通です(笑)。「東京で住むなら、家賃や生活費などを合わせてこれぐらいはないとそもそも生きていけない年収」ってあるじゃないですか。自分のなかでのその金額と比較すると、必要な分はいただけているかなと。

サイボウズの給料は、市場価値をもとに算出されているんです。マーケティング職で、新卒で3年目位の人はだいたい◯万円〜〇万円、そのレンジの中から社内貢献度をもとに給与額が決定する。その納得感も含めて「普通」かなと思います。

長谷川:ぼくはフリーランスなので、「年収」はそこそこ。「年商」から、書籍とか交通費とか必要経費をさっ引くと、手残りの額(=年収)っていうのは、すごく少なくなります。ただ、自由に使えるお金で言えば、同世代の平均よりはあるかもしれません。

吉田さんは、いかがですか? 広告代理店、お給料いいでしょ?(笑)

吉田:いい顔されますねえ(笑)。「ちょっと分不相応かもな」ぐらいの、ポジティブな意味で仕事に緊張感が出る金額をいただいています。

ぼくは1回転職をしていまして。1.2倍くらいに上がりました。日々、少しずつ(生活が)楽になっていくなという上がり幅でした。

長谷川:前職も、同じ業界なんですか?

吉田:そうです。だから転職って言うより転社ですね


転職と転社はまったく違う

長谷川:これは「わたしの値段」にも関わるところなので話しておきたいんですけど、『転職』と『転社』って全然違うじゃないですか。それなのに全部、一緒くたに『転職』と言われるのは座りが悪いですね

ぼくがそうだったんですけど、最初の職業は編集と全然関係のない専門商社で、そのあとにウェブ編集者になったから、まさに『転職』なんですよ。未経験転職なんで、編集者としての市場価値はゼロから始まったんですね。

一方、転社だと、培ってきたものを直接活かすことができます。入社する企業の課題や、それに伴う需要、組織内での相対的な評価なんかによっては、給料が跳ね上がることもありますよね

この違いをわかっていない人って、地味に多いなと思っているんです。

吉田:そうですね。ぼくは、ベイスターズからジャイアンツに移籍した感じでなので、競技は同じです。

長谷川:ぼくは東京ヴェルディ川崎(サッカー)にいた選手が、急に「シェフになりたいです!」って言い出したようなものだったので、とても大変でした……。

吉田:ですね。そんなとき、『転職』に「これまでの研鑽が転職先でどう活きるのかは、相手に推察してもらえるだろう」という姿勢で挑むのは危なくて。自分でプレゼンしないといけませんよね。

例えば、「サッカーで培った足腰の力が半端ないんで、厨房に8時間立ってられます」みたいな。翻訳して、こっちからプレゼンしないと伝わらない。あっちは「お前は元サッカー選手だろ? かつらむきできる?」みたいな気持ちだと思うので

やっぱりサッカー選手からシェフになった長谷川さんは、プレゼンで苦労されました?

長谷川:何を言ったかな……。もう、なりふり構わず転職しようとしてたので。雇用形態全部OK、みたいな感じでしたね。年収も超低くて大丈夫ですと。自分の価値がゼロに等しくなる自覚は持っていましたし。

ただ、インターネットに明るいです、って話はしました。「ニコニコ動画に投稿したら50万回再生されました」とか。

吉田:それは仕事ではなくて……?

長谷川:プライベートです。あとそうだ! 当時アドバイスされてやったんですけど、全くネットの記事を書いたことがなかったので、今でいうクラウドソーシングみたいな形態で、記事を10本くらい作って出したんです。そうしたら、1本バズったんですよ。

吉田:ほおお。

長谷川:それを出して、「記事を書くとしたら、こういうのもできます」みたいに、なんとか自分の経験に引き付けて喋りました。

吉田「実績がないなら作ってしまえばいい!」っていう話ですね

長谷川:まさにです。明石さんも、やってますよね?

明石:え? わたしやってますか?

長谷川note書いてるじゃないですか。あれってやっぱり、すごくいい宣伝になりますよ。

明石:ああ、たしかに……! そういえば、最初に副業でライターのお仕事を頂いた時は、突然TwitterのDMで連絡が来たんです。私がすごく好きな雑誌を作っている編集者の方だったので、すごく嬉しくて。

長谷川:最高だ!

明石:最高じゃないですか。で、「もちろんやりたいです! でも私ライティングの経験がなくって……」と言ったら、「じゃあ自分で書いてるもの、何かない?」って言われて。noteのリンクを送ったら、「1回やってみようか」ってチャンスを頂けて、そこからすべてがはじまったって感じですね。


見積もりの作り方に正解はあるのか

長谷川:フリーランスの見積について。これは先輩からのアドバイスを受けて実践していることなんですが、項目をなるべく細かくしています。

例えば、1本のインタビュー制作を請け負ったとするじゃないですか。それが「写真も長谷川さんのほうで撮って、納品してください」という案件だったら、①インタビューいくら ②執筆いくら ③撮影いくらみたいな感じで、項目を分けて出します。大雑把でもいいので。

執筆費は、今回大体4時間ぐらいだからこれくらいかな、とか。あと、賛否両論ある考え方だろうしぼくも模索中なんですが、いわゆる「時給」を意識しています。写真を撮るんだったら追加でこれぐらいとか。レタッチを入れるんだったらいくらとか。最近だとWordPressといった先方指定のCMSへの入稿まで依頼されることも多いので、その分も計上します。

吉田:かなり、細かいところまで出されるんですね。それって、どんなメリットがあるんでしょうか? 取引先に「めんどうだな……」と思われるリスクがある気もしますが。

長谷川:どっちかというと、先方のメリットのほうが大きいはずなんですよ! 値切りやすいので。

明石:なるほど。「じゃあ、ここはこっちでやりますね」とか。

長谷川:そうです。向こうは値切れて、こっちはタスクが減ると。ぼくが成果を出さなきゃいけないのは、取材・構成・執筆のところなので、そこできちんとお金を頂いて、期待に応えられればよくて。もちろん、値切られることなく、まとめて依頼してもらえれば、実入りが増えて嬉しいですし。

吉田:ベースの価格があって、オプションがあるって感じですね。

長谷川:結婚式場とか美容院とか……あとは、夜のお店みたいなものです(笑)。

明石:サイボウズでも、長谷川さんのようなフリーランスの方に発注をするときは、ちゃんと見積もりの詳細を書いてもらうようにしています。「記事制作一式」で出してもらうのではなく、「編集費」「ライティング費」「撮影費」などと項目を分けて。

吉田:みなさんそうするように指導されるんですか?

明石:はい。受注側・発注側で「どこまでやるか、やってもらうか」にズレがあってはいけないからと


社内でのコミュニケーション量と業績は比例する

長谷川:今回「わたしの値段がわからない」というテーマですけど、自分の市場価値を手軽に測れるという意味でも、複業は便利ですよね。複業といえば、明石さんの所属するサイボウズ。どうしてあんなに積極的に、新しい働き方にチャレンジできるんでしょうか?

明石:社内制度に関して、社員みんなで議論する文化や風土があるからかもしれないですね。現状の制度について「おかしい」と思ったり、モヤモヤしたりした時は、我慢するのではなくちゃんと言う。

だから、働き方に関する制度も議論を重ねてどんどん進化していくんです。みんなで迷いに迷って今の形ができている。

吉田:試行錯誤なんですね。

明石:そうなんです。社内で炎上することもあるんですよ

吉田:え!?

明石:今の制度っておかしくないか? この制度は本当に必要か? といったように。社内で自由にコミュニケーションできるツールがあるんですけど、そこが業務中にも関わらず議論で埋め尽くされる(笑)

長谷川:ははは!!!

明石:たとえば、新人がイヤホンをつけながら研修課題に取り組んでいて、ある社員が「それはおかしいんじゃないか?」と言ったら、「別にイヤホンをつけながら仕事をしても成果を出せば問題ないだろう」みたいな反論が来て。そしたらどんどん議論が活性化して、「多様性とマナーの線引きはどこなのか」みたいな話にまで発展したこともあります。

吉田熱い

明石:そういう議論が、しょっちゅう起こりますね。

吉田:それは、組織としてスーパー健全ですね。社内民主主義が機能しているというか。

明石:そう思います。

吉田: 僕も仕事柄、いろいろな会社の組織改革とかに関わらせてもらうんですけど。ほとんどの場合、会話の総量と組織の活発さってポジティブに比例するんですよ

長谷川:へー! 面白い!!

吉田:極端に言えば、会話の総量と業績は比例すると思いますよ。いっぱい話している会社は、いろいろありますけど、基本的にはうまくいくと。

長谷川:それはさっきの、「イヤホンつけて仕事するかどうか問題」みたいなことでもいいんですか?

吉田:もちろんです。今、コミュニティ論が流行ってますけど。『心理的安全性』という言葉があって。「この人たちには、私が本当に思っていることを言っても大丈夫」ってお互いに思えているかどうかが、組織にとってすごい大事なんですよ

明石:小さな不満をつぶしやすい、みたいな感じですか?

吉田:そうですね。不満もそうですし、後は、「わかんない」「教えてください」って言えるかどうか。心理的安全性がないと、すべてのコミュニケーションが探り探りになるんですよ。そうなると、×0.9でスピードがどんどん落ちていくんですよね。

「明石さんにメールを打つの、ちょっと緊張するなぁ。もう一回見直すか」みたいな。

長谷川:わかるーーー! 無駄だよねーー! それ!!

吉田:気持ちはわかるんですけどね。上司がおっかないとか。

何言っても大丈夫、イヤホン1個でそれぐらい盛り上がって大丈夫、ていうふうに、可視化するのがすごくいいと思いますね。

値段の話からそれましたけど、大きく言うと、値段ってコミュニケーションじゃないですか。絶対値が決まるものでもないんですよね、相手との合意形成次第ですから。


会社からの給料で考える【転職と独立】

吉田:転職と独立。長谷川さんは、サラリーマンとして二社で編集・ライターのお仕事をされたあとに独立されていますが、どういった判断だったんでしょうか?

長谷川:まず、あまりサラリーマンは向いていないなと常々思っていました。5分の遅刻とかすぐしちゃうから……。それで周りのモチベーションを下げるのも申し訳ないので、いろいろ検討しているときに、友人のモリジュンヤくんという編集者に相談をしたんです。「ぼく、どうしたらいいと思う?」って。

そうしたら、「長谷川さんのやってることだったら絶対に需要あるし、独立しても大丈夫だよ!」って言ってくれて。その時に、あー、自分、需要あるんだ! と。同じように、プロブロガーでgori.meを運営しているg.O.R.iくんにも背中を押してもらいました。彼らは同年代ですが、フリーランスとして前線に立っている実践者なわけです。

だから、バリバリやってる人から、仕事を振るに値する相手だと思ってもらえているなら大丈夫かなと。あの時に相談しなかったら、独立していないかもしれないです。それこそ遅刻しても迷惑かけない会社……が、あれば(笑)、転社していたかも。

吉田:じゃあ外に出るというか、独立して通用するかどうか、みたいなのは周りのひとに教えてもらったということですね。

長谷川:そうですね、あまり自分に自信があるタイプではないので。要は、未来にどれぐらいベット(bet=賭ける)できるかということじゃないですか。明石さんみたいに、働きながら並行して副業やってる人がぼくは一番賢いと思う。

明石:賢いかはわかりませんが、会社員という守られた世界から一歩出たときに、自分がどれだけお金を頂けるのか。純粋に自分の実力を試せる場として、副業っていいなと思います。

長谷川:僕も一応、独立する前に副業としてライターをやっていました。ただ、当時は9時〜18時の仕事をしていたうえ、会社が都心からすこし離れた場所にあって。新宿まで電車で40分ぐらいはみないといけない。

なので、都内でインタビューする話を頂いても「平日なら19時半以降か、土日だったら受けられます!」みたいな条件になっちゃうんです。使いにくいライターだったと思います。

でも、いい実験にはなりました。自分の仕事に対する需要と値段が具体的にわかるので、「月に大体これぐらい稼げたから、これを(日中の会社の仕事を)全部止めて、相談ベースで来ている仕事も全部受けたとすれば、こうなる」みたいな計算ができたんです。

吉田:サラリーマンの後輩に言うのは、「3年目とか4年目で、転職エージェントとかに登録だけしてみると値札がついてちょっと面白いよ」っていうことですね。

『転職』とか『転社』という意味で言うと、1回試しに転職活動をしてみると、そこで初めて「自分の会社の給料が絶対ではない」って言う相対感覚みたいなのが手に入ったんですね。たまたまだったんですけど、良かったなあって思います。

明石:わたしは、「年収が倍になる」って言われたとしても、転職するかどうか悩むなあって思っていて。仕事の報酬って、お給料だけじゃないじゃないですか。

例えば「年収が倍になるけど、朝の8時から終電まで働いてね」って言われたとしたらとか。それだったら給料が半分でも、今みたいに自由に働かせてもらっている方が幸せかもしれません。

吉田そのお金を貰うために自分は何をするのか、っていうのを絶対にペアで考えないと、いけないかもしれませんね。

明石:給料だけで考えたらちょっと危険だなあ、っていうのはありますよね。

長谷川:あっ! ちょっと……これ、イベントの勘所がわかっちゃった感があるんですけど、言おうかなー。自分のnoteにでも取っておこうかな……。

明石:えー、気になります!(笑)


「わたしがわからない」から、「わたしの値段」がわからない

長谷川:いや、要は「わたしの値段がわからない」って、そもそも「わたしをわかっているのか?」っていう話に近いんだな、って思ったんですよね。

明石深い……。

長谷川:値段の話に終始してるんじゃなくて。「わたしというのは、いくらあれば幸せになれるのか。わたしは働くことに何を求めているのか?」。これを、どれぐらい分かっているのかどうかのほうが、よっぽど大事じゃないかと。

吉田:そうですね。

長谷川:「値段がわからない」ことより「わたしがわからない」ほうがよっぽど問題なんだなって。

僕が前にインタビューした人の話なんですけど、渋谷にある某企業の若手社員で、27、28歳の女の子。転職して成果をあげてきた彼女は「私は将来絶対に東京タワーの見える麻布の1億円のマンションを買う!」と豪語してたんですね。そういうの、すごくいいなと思って。

明石:おお、すごい……。

長谷川:いまどき珍しいくらいにバリバリのやつで。超面白いなーって。

それだけやる気があって目標も明確だと、「1億円のマンションを買うにはどうすればいいか」から、いろいろ逆算できるんですよね。自分の値段をどうすればいいのかも。自分をわかっているって、強いなと思うんです

吉田:そういう基準で自分をわかるのも素敵だし、あとは相対的な価値ですよね。「お前は結局どれだけバリューを出してるの?」と、自分に問えるかどうか。

サラリーマンの陥る1番危険なケースって、「自分が出してるバリューと、いただいているお金の相関関係がマヒしている状態」だと思うんです。ソリティアばっかりやってるおじさんとか、そんなこと考えもしてないんだろうなと。

明石:そうなると、会社にどんどん依存しちゃうんでしょうね……。

吉田:そうなんですよね。そういう人に限って転職はできないし、給料体系に文句を言っているし。それはまさに「自分がわかっていない」状態だと思います。サラリーマンは、そこを意識することがとても大切かもしれないですね。


文 今井雄紀(株式会社ツドイ