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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

ビットコイン、10年後はただの思い出話に? 気にしなくていい格差と変えなければいけない格差って?

「LIVE おカネの教室」潜入レポート

Owlly編集部 2018年6月6日 11:55
今年3月の発売以来、好評を集めている『おカネの教室』。Owllyに掲載した著者・高井さんへのインタビューは大きな反響を呼び、「お金」への関心度の高さを改めて感じさせるものとなりました。高井さんが「おカネの教室」をライブでやる!という噂を聞きつけ、Owlly編集部でお金の授業を受けてきました。よく晴れた5月12日土曜日。高井さんがスマホに仕込んでおいたチャイムの音ともに、授業が始まりました。
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ピケティの説明していた格差が生まれる原因とは?

はい、それでは授業を始めます。アンケートで一番声が集まった「格差問題」からお話を始めます。この格差問題は本の中でも私が一番書きたかったテーマのひとつです。

格差の問題を考えるときに、まずやるべきことはデータを抑えることだと私は思っています。専門的な数値でよく使われるものに「ジニ係数」というものがあります。これは所得の高い人と低い人の分布を集約するもので、どれぐらい格差が広がっているかが、だいたいわかるんですね。

このジニ係数をいろんな国で測ってみて、過去10年ぐらいで比較すると、確かに格差が広がっています。これ、どうしてなんだろう? ということをいろいろな人たちが調べていて、その中で一番有名になったのが日本でもたくさん本が売れたフランスの経済学者、トマ・ピケティさんですね。彼が言っているのは「おカネを運用して増やすこと、投資をして増やすこと」と「一般的な経済成長のペース」を比べると、前者のほうがペースが速い、ということ。こうなると、一般的な経済成長の恩恵を受ける人たちよりも、資産運用や投資ができるお金持ちのほうが儲かっちゃって、どんどん格差が広がってしまっている。彼はそういう仮説を『21世紀の資本』という、あの分厚い本の中で説明をしていたんです。

でもこの話、ずっと前に私も気づいていました(笑)。株式市場では「ROE」っていう概念があります。ROEというのは、ざっくり言うとその株式資本で何パーセント儲かっているか、というものです。

例えば「100億円の株式資本の会社が10億円儲けました」となると、ROEは10%、ということになります。私が記者になりたてのころ、最初に株式市場の担当をしていた時に、「ROEは10%無いと失格だ!」なんて意見があったんですね。特にアメリカではそう言われていて。日本の企業は儲け方が足りない! けしからん! なんてね。でもその時よく考えてみると「あれ、ちょっとおかしいな?」って思うんですよ。

そのころの日本の経済成長って、調子がいい時が年に3%ぐらい。そうするとどうやったって企業のROEより低くなっちゃうわけです。とすると、お金持ちの人たちが株式市場で投資をして、得ているリターンを普通の人たちも得られるようにしないと、格差って無くならないんだろうな、と思ったわけです。

では、この差を埋めるためにどうすればいいのか。例えばみんなが投資に参加するという方法もあります。これは銀行に預けておくよりはちょっと危ないかもしれないけど、長い目で見ると、やっぱり儲かるかもしれない話ではあります。あとは日本だと公的年金。みなさんが毎月払っている年金の掛け金は巡り巡って運用されて、リターンを得て……ということをやっています。もちろんこれ、うまくいく前提の話で、そうじゃなかったら大変なことなんです(笑)。


いい格差と悪い格差の違い

ところが、最近言われている格差の問題というのは、もうカバーができるようなレベルじゃなくなってきているんですね。聞いたことがあるかもしれませんけど「世界の70数億人のうち、上位の数人が持っている資産が下位の何十億人と一緒」、みたいなレベルになっています。そこまで極端な話じゃなくても、先進国の低・中所得の人たちの所得がずっと横ばいで、トップの人たちとどんどん格差が広がっている。それには構造としては3つぐらいの大きな要因があります。

1つは経済の構造の変化。トップの企業がものすごく強くなったんですね。今「プラットフォーマー」なんて言葉がよく使われていますけど、GoogleやAmazonのように、自分たちがプラットフォームになるような仕組みを作った企業が独り勝ちするような構造になってきています。こういう仕組みを作っちゃえば、富が圧倒的なスピードで集まっていくわけです。でもね、これは悪いことじゃないんですよ。例えばGoogleがなかった時代に比べれば、今ははるかに便利になりましたよね。Amazonもそうです。こうした一部の企業がものすごく儲けているけど、みんなも便利になって、みんなが豊かになっているわけです。こういう格差は、そこまで気にしなくていいと、私は思います。

ただ、一部の企業がものすごく儲けて、富が集中して、という話の中で「これはなんとかしなきゃな」、というのが「タックスヘイブン」の問題です。『おカネ教室』の中にも書いてるんですけど、要は儲けた企業が法人税の安いところに本社を置いて、税金を回避しちゃうんですね。例えばAmazonやAppleはヨーロッパの本社を法人税の安いアイルランドに置いています。EUからはアイルランドにもっと税金をちゃんと取れ! って言ってるんですけど、ヤダって言っちゃう。ほかにもタックスヘイブンで相続税を回避するような仕組みを作ったりしている。こうなると、税金を安く抑えた大企業は利益が確保できますけど、国の税金は減ってしまいます。みんなに分配する分も減りますし、足りなくなれば、とりあえず取りやすいところから取るしかない。日本だとサラリーマンですよね。うまくするとお金持ちにジャンプアップできるかもしれない人なんかからもどんどん取っていくわけです。それが積み重なってどんどん格差が広がって、もう手が付けられない!っていう状態になってしまっています。

これ、解決するのは簡単な話で、ちゃんと税金を取ればいい。ちゃんと税金を取って、変なところにお金が集中しないような仕組みを作ればいい。でも問題なのは、みんなで一斉にやらないと、意味がない。でもさっきのアイルランドみたいに抜け駆けしたい人がいっぱいいるってことなんです。ケイマン諸島とか、聞いたことありませんか? とにかく世界中で一緒に取り組みましょうっていう問題なんですけど、全然足並みがそろわないから、まぁ解決する見込みがないっていうのが、私の正直な見立てです。


ビットコインについてものすごくざっくりと説明する

さて、では次のテーマに行きましょう。次はじゃあ「ビットコイン」の話をしましょうか。ビットコイン持ってる人いますか? お、2人ぐらいですね。じゃあまずは簡単にビットコインの仕組みを説明しましょう。

ビットコインは、「違い」で考えるとすごくわかりやすいです。例えばSuicaみたいな電子マネーとの違い。電子マネーはどこの改札を通ったとか、どこのキオスクでいくら使ったとか取引履歴がリレーされて、最後はクレジットカードや銀行決済と同じで「円」みたいな、リアルな「お金」につながっていく。でもビットコインはつながっていない。ビットコインを「無国籍」だとか、「中央集権的ではない」というのは、そういう理由があります。

さらに普通の「お金」が増えるのは日本銀行がお札を刷るとか、基本的には銀行で増えるんですが、ビットコインはインターネット上で増える。どうやって増やすかをすごく簡単に言うと、取引の履歴を全員で監視する仕組みを使っています。

例えば私がビットコイン取引すると、その履歴を基にして、次につなぐための鍵穴みたいなものができるんです。この鍵穴につながる次のブロックは数学のパズルを解くと作れる。前に取引した人の鍵穴ができて、そこにつながるモノを作って、また次に……とつなげていく。これが「ブロックチェーン」と呼ばれる仕組みです。ちょっと複雑ですね(笑)。

ただ、この数学のパズルを解くのはすごく難しい。、頭がいい人が勝つんじゃなくて、たくさん電気を使って、たくさんPCを動かした人が勝つ仕組みになっている。それをみんなでやって、パズルを一番最初に解いた人に今まで無かったビットコインが新たに発行される、という仕組みになっています。

このパズルを解くことを「マイニング」と言っています。また、鍵穴はずっとつながっていて、途中のデータを変えてしまうと、最後の鍵穴の形が変わってしまいます。さらにこの鍵穴のパズルをいろんな人たちが解こうとして参照しているし、ずーっとこれまで解いてきた履歴も残っている。だからインチキして取引履歴を変えたりすることも難しい。と、まぁこれがビットコインについてものすごく要点をかいつまんだ説明です。
お話した通りビットコインという仕組みの中には中央銀行、日本でいうところの日本銀行が一切関係していません。ただのデータですから。ではなぜこれをお金として使えるかと言うと、みんながお金だと思い込むからですね。これは日本円でも同じです。受け取る側に知らんがなって言われたら使えないんです。お金というのは「これはお金だから」という了解があるから通用しているものなんですね。

ビットコインが「お金だ!」と認められるようになったのは、ちょうど2008年のリーマンショックのころ。当時アメリカが金融緩和でとにかくお金をたくさん刷ってばらまいて、ということをして、ドルに対する信頼が揺らいだ。そのときに新しい仕組みだ! って注目されて値上がりして、今から買っても間に合うんじゃないかという人が参加してきて、また値上がりして……ということをしているうちに、なんとなくこれが未来の通貨なんじゃないか、みたいなことを言われて、価値があるモノだ、と思われるようになったという流れなんです。


お金の本質とビットコインの未来とは?

ビットコインを考えるときに気を付けなくてはならないことはブロックチェーンという仕組みと、ビットコインはイコールでも何でもないってことですね。ビットコインはブロックチェーンという仕組みを採用している、というだけ。ブロックチェーンという仕組み自体は非常に優れた技術なので、いろんなところで使われるようになると思います。そういう意味でブロックチェーンを使った電子マネーみたいなものは出てくると思いますが、私は少なくともこの数十年の単位で、ビットコインみたいな無政府型の仮想通貨が世界で一番通用する通貨……たとえばドルや人民元の代わりになる、という時代は来ないと思っています。

それにはいくつか理由があって、1つは価格変動が激しくなりすぎていること。一度投機にまみれちゃうと、博打になっちゃうんですね。みんなが欲にまみれてPCを動かしまくっているので、エネルギー問題になってるのもありますね。ビットコインのマイニングに使われている電気がニュージーランドの消費電力と同じぐらいになっているといわれています。もう1つは送金のコストが安いのはいいんですが、決済の仕組みが遅い。10分に1回しか決済が行われない仕組みになっているので、クレジットカードのほうが圧倒的に早いです。その10分の間に値段も乱高下しちゃいますしね。

このへんはビットコインの話なので、ほかの仮想通貨、無国籍の通貨がインフラになるんじゃないか、という人もいますが、私はそれも無いと思います。通貨って、結局何が価値を担保しているかというと、共同幻想なんですよね。お金って、なぜみんながお金だと思うかというと、モノが買えたり、人を雇えるからですよね。、お金は「お金だから」という了解があるから通用しているものだ、ということ。みんなが「これがお金だ」と了解している人たちの経済圏があるからお金が使えるんです。

その経済圏が保たれているのは、現状では国家のおかげです。そして国家は無国籍の通貨を認めて、税金が取れなくなるようなことは絶対に認めません。日本は比較的仮想通貨に優しい国ですが、欧米では今どちらかというと規制するほうに向かっています。ホントに大きくなって、自国の通貨システムに脅威を与えることになったらシャレにならないですからね。税収や通貨制度っていうのは国家の根幹ですから。国がなくなるよって言うなら話は別ですけど(笑)。

ビットコインが残るんだとすれば、本当に限定された送金のシステムとして残るかもしれないです。でも同じテクノロジーを使って、銀行がサービスを代替するのもそんなに難しいことじゃないので、それが完成したら、まぁそんなものがあったねって話になるでしょう。たまごっちとか。「あぁ、あったあった」ってなっている気がしますよ。

終了後にはお手製の「消し判」を使ったサイン会も行われました。

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文責/写真 Owlly編集部