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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

もうすぐそこまできている、現金のいらない世界。「思わず使いたくなるサービス」LINE Payは、新たなインフラを目指す

【LINE Pay株式会社 長福久弘 取締役COO インタビュー後編】

崎谷実穂 2018年5月24日 12:00
LINEアプリの「ウォレット」タブから、簡単に登録・利用ができるモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」。しかし、LINEは使っていても、LINE Payは使ったことがない、という人は多いのではないでしょうか。LINE Pay株式会社 取締役COOの長福久弘さんは、LINE Payのユーザー数増加に固執するつもりはない、と言います。なぜなら、LINEが口コミで自然に広まったように、LINE Payも「気づいたら使っていた」くらいの自然な広まり方をするのを理想としているから、と。その言葉の裏には、自社のサービスに対する確固たる自信がありました。

LINEを使い始めたきっかけ、覚えていますか

LINEを使っている人は、日本のスマートフォンユーザーのかなり多くを占めていますよね。

LINE Pay 株式会社 長福 久弘(以下、長福):月間ユーザー数で言うと、7500万人ほどです。


改めて聞くと、すごい数ですね。そのなかでもLINE Payはまだ使っていない、という人に対してどういうアプローチをしていきますか?

長福:LINE Payが理想とするのはLINEのようにサービスが成長していくことだと考えているんですよ。LINEって、どういうきっかけで使い始めました?


えーと……まわりで使っている人が多くなって、「まだやってないの?」とか「LINE送りたいからアプリ入れてよ」みたいなことを言われるようになり、じゃあダウンロードしようかな、という感じでした。

長福:そう、LINEってメールと違ってアドレス帳の登録もいらないし、電話番号を知らなくてもすぐ友達とつながれる。ガラケーからスマホになったタイミングで圧倒的に便利だったんですよね。それで、相手もLINEアプリを入れていないとメッセージが送れないから、使い始めた人がまわりに勧めて広がっていった。

LINE Payもそうなりたいと思っていて。便利なサービスをずっと出し続けていれば、だんだんユーザーさんが増えて、あるところから爆発的に普及するという流れをたどるんじゃないかと予測しています。


たしかに私も、遠くに住む両親などに、「連絡をとりたいから」とLINEを勧めてダウンロードしてもらいました。LINE Payも個人間送金などは、相手もLINE Payに登録していないと送りづらい※1。LINEのように「LINE Pay使ってよ 」というところから普及していくのかもしれませんね。

※1:登録をしていなくても、相手がLINEユーザーだと送ることは可能だが、受取確認にはやはり登録が必要。

長福:自然な感じで広まっていくのが一番だと思っているんですよ。だからこそ、皆さんが思わず使いたくなるサービスとはどういうものか、といつも考えています。


人に勧めることで広まっていく、というので思い出したのですが、母親は最初LINEを入れるのも「電話帳の情報が流出しちゃったりするんじゃないの?」と心配していました。お金にまつわるサービスとなると、さらにセキュリティ上の不安が高くなると思うんです。そういう心理的ハードルは、どう超えさせていけばよいのでしょうか。

長福:まず、セキュリティについては国際的なコンプライアンス基準を満たしているので、安全であることは証明されています。万が一のときの補償制度※2も用意してある。でも、そう言われたところで心配なものは心配だと思います。だから、サービスの満足度を上げてそのハードルを超えてもらうしかないのかな、と考えています。きっとお母様もLINEを使い始めたら、最初の不安は忘れてしまったでしょう。その代わり、どこからでも簡単にコミュニケーションがとれる便利さを強く感じるようになったと思うんですよ。

※2:補償制度概要
・利用者に落ち度がない理由で残高が不正利用された場合、上限10万円まで保証あり(不正利用された金額から取り返せた金額の差額分)
・Cashは原則10万円まで、Moneyは利用者のご利用状況や警察当局による捜査結果等を踏まえ、補償限度額の引き上げを個別に検討。
・コード支払い、LINE Pay カード支払い、送金、どれにおいても上記当てはまる。
参考記事:http://official-blog.line.me/ja/archives/22019801.html#5


そうですね、もうまったくLINEを使うのが不安、とは言いません。

長福:そういう感じで、心配や恐怖よりも「このサービスめちゃめちゃいいね!」という気持ちが上回ったタイミングで、アクティブユーザーになってもらえると思っています。


どう考えても便利なモバイル決済は、今後も間違いなく普及していく

コミュニケーションアプリといえば、日本はもうLINE一強ですよね。LINE Payも決済サービスのなかでの一番を目指しているのでしょうか。

長福:コミュニケーションアプリというものが、そもそも一つの国に複数は残りづらい。それはサービスの性質として、相互につながっていないと使えないから。いくつもあると、人によってサービスを使い分けなくてはいけません。それは恐ろしく不便なので、だんだんと一つにまとまっていくんです。

実は決済サービスもそうなんですよ。一人勝ちにはならないけれど、数社に絞られていく。いくつもアプリを登録し、この店ではAとBは使えるけどCは使えない、といったことをいちいち考えて、アプリを立ち上げて……とやるのは面倒くさいですよね。

せっかくモバイル決済できるなら、何も考えずにピッとやりたいですね。

長福:なので、残るサービスになるためには、ユーザーさんにどれだけ便利だと感じてもらえるか、メリットがあると感じてもらえるか、だと思います。


なんだか、もうLINE Payの普及には課題がないように見えますが……。

長福:いやあ、そんなことはないですよ……ユーザーからの声に耳を傾け、今後もサービスを改善していきます。我々が本当に良いサービスを、ちゃんと伝えられるかどうかも課題ですね。日本の現金主義が根強いという外的な課題もある。中国でキャッシュレス化が進んだ背景には、偽札の問題など現金への不信がありました。そういう背景は、日本にはないものですよね。

あと日本だと、「使い過ぎが心配」という理由で、クレジットカードをあまり使わない人もいます。それはクレジットカードの問題ではなく、自制心の問題なのでは、と思いますが……(笑)。その懸念は、LINE Payだとチャージ式なのでクリアできるかなと。オートチャージにもできますが、使いすぎが気になる人はオートチャージを選ばなければいいだけなので。


あとは、モバイル決済そのものに対する社会の意識が上がっていくのを待つばかり、という感じなのでしょうか。

長福:モバイル決済はどう考えても便利なので、普及は間違いないでしょう。スマートフォンを1台持つだけで、どこでもなんでも買える。チャージも簡単で「お金が足りない!」ということにもなりません。一度使ったら、戻れませんよ。あとは、どういう形態のモバイル決済がスタンダードになっていくのか、というところですね。


モバイル決済にもいろいろあるんですね。「おサイフケータイ」もモバイル決済ですよね?

長福:そうですね。おサイフケータイは非接触ICチップを搭載していて、決済端末にかざすと決済できるというものですね。SuicaやドコモのiDなども同じ技術を使っています。一方で、今中国で広まっているのは二次元コード決済です。

その二次元コード決済にもいろいろあって、まずユーザーさんがコードを表示して、店側が読み込むパターン、店側がコードを出してユーザーさんが読み込むパターンの2つあります。さらに、そのコードをワンタイムで表示する場合、固定されたものをプリントしておく場合、などもあります。どれがどんなふうに普及していくかは、今の時点で誰も答えを持っていないと思います。


ライブドア時代から会社の変遷を見てきた

単純に、中国を見習えばいいというものでもないんですね。LINEは今年1月に「LINE Financial株式会社」を設立。リリースには、仮想通貨交換や取引所、ローン、保険などのさまざまな金融関連のサービスを提供する準備をしている、とありました。これは、LINE経済圏みたいなものをつくろうという目論見が……?

長福:囲い込もうとか、そういうことではないんですよ(笑)。ただ、LINE Payでお金を送り合うことも含め、LINEがお金に関するサービスの入り口になったらいいな、と考えているんです。

これまで、金融についてそんなに興味がなかった人でも、LINE上でサービスを見つけたら、ちょっとやってみようかなと思うかもしれない。「資産運用を最初に始めたのが、LINEのサービスからだった」となるのが、我々の価値だと思っています。


ところで、少し話が変わるのですが、長福さんはいつからLINE PayのCOOを務められているんですか?

長福:LINE PayとLINE@が合併して、新体制のLINE Pay株式会社ができたときからなので、昨年の12月からですね。その前は、LINE@の事業責任者をずっとやっていたんですよ。今も引き続き、LINE@事業を見ています。


その前は?

長福:20代の頃は、飲食店の経営をしていました。だから、LINE@を導入する店舗の実情や困っていること、必要としていることなどはわかっているつもりです。そのあと、ライブドアに入社して今にいたります。


ライブドア! LINE株式会社は、もともとNHNやネイバージャパン、ライブドアなどが経営統合してできた会社ですもんね。

長福:転職はしていないのですが、会社名が5回くらい変わるという珍しい経歴をもっています(笑)。LINEというサービスが生まれてからは、今年で7年目です。実はLINE、まだ歴史としてはそんなに長くないんですよ。


現金がいらない世界は、もうすぐそこまできている

LINEってずっと昔から使っているような感じがしていましたが、まだ普及して数年 なんですね。最初はシンプルなモバイルメッセンジャーでしたが、そこからいろいろな機能が付加されて、今や決済までできるようになった。

長福:でも、闇雲に拡大してきたというわけでもないんです。我々のコーポレートミッションは「CLOSING THE DISTANCE」というものです。どういうことかというと、世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めようとしています。

この「CLOSING THE DISTANCE 」を実現するために、LINEはスマートフォンのポータル的な存在を目指しているんです。PCの時代は、Yahoo!のようなポータルサイトにいけば、そこからいろんなサービス、情報に飛ぶことができました。でも、スマートフォンになったら、メールはメール、もしくはコミュニケーションアプリで代替、ニュースはニュース、乗換案内は乗換案内、と各アプリに分かれてしまったんです。


たしかに。それぞれアプリを立ち上げないと、サービスが使えないです。

長福:そこで、LINEというプラットフォームの中に、全部あったら便利だろうなと考えたんです。メッセンジャープラットフォームとしてのLINEを中心に、楽しむためのコンテンツ・プラットフォームとして、ニュースや音楽、占い、ゲーム、マンガなどのサービスを揃え、暮らしを便利にするライフ・プラットフォームとしてLINE@やLINE Pay、LINEデリマというデリバリーサービスなどを用意しています。

デリバリーサービスというのは、まさにキャッシュレスを必要としている分野なんですよね。今までは、配達する人がおつりの現金を持って出発していた。でも、何軒もまわると最後の方では釣り銭が切れてしまう。自動販売機で自分の1万円を崩して対応する、なんてこともあるそうです。そういう不便さが、キャッシュレスだとなくなります。


現金払いだとデリバリーは不便ですよね。クレジットカード連携のデリバリーサービスであるUber Eatsに慣れて、すっかり忘れていました……。

長福:そう、慣れるともとには戻れないですよね。LINEを通して、サービスがシームレスにつながっていくような世界観が実現しつつあるんです。だから、そのつなぎめとなるLINE Payが当たり前に使われるようになるのも、そう遠くない未来だと思っています。


LINE Pay株式会社
2014年5月にモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」を運営するLINE Pay株式会社として設立。2017年12月に店舗・企業向けLINEアカウント「LINE@」を販売・運営するLINE Business Partners株式会社と合併し、30万件以上の法人・店舗様との接点や集客につながるユーザーとのコミュニケーションノウハウを両サービスで共有。加盟店およびユーザーの利便性向上、サービス/商品の競争力強化を目指し、新しい決済手段の導入を含めた総合的ビジネスソリューションを提供する。

https://linepaycorp.com/


聞き手:崎谷実穂
Twitter→@yaiask
HP→http://sakiyamiho.com/

撮影:Owlly編集部