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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

悩みを抱えている人に「みんな違って、みんな良い」というメッセージを送ることでLGBTQへの理解が進む社会に

【かずえちゃん インタビュー後編】

中沢明子 2018年5月1日 09:00
前編では「気軽に会えるYouTuberでありたい」というかずえちゃんの仕事観や経済面について訊ねた。あっけらかんと種明かしをする正直なスタンスで、YouTuberの日常を垣間見せてくれたが、さらに、「楽しく暮らすためのお金はそんなに必要じゃない」と語る。なぜそう考えるようになったのか。3年間暮らしたカナダでの生活で得た気づきによって生まれた大きな心境の変化と、今の暮らし方とは?

「カナダでの生活と、いろんな人と喋ることで得たもの」

カナダで約3年間、暮らしていらっしゃいますね。帰国後の2016年にYouTubeチャンネルに登録されていますが、カナダでの生活で何を得ましたか。また、なぜカナダだったのでしょうか

かずえちゃん:ワーキングホリデーを使って海外で暮らしてみたい、という気持ちはずっと持っていました。

先ほどお話しした通り、僕は旅好きで保険外交員時代は休暇に必ず海外旅行に出かけていて、視野が広がったし、楽しかったから、一度海外で暮らしてみたいと思ったんです。

でも、ワーホリは当時、年齢制限が30歳で。仕事は好きでしたが、30歳を前に「もう後がないから」と思い切って退職しました。英語が流ちょうに話せるわけではなかったので、カナダへ行く前にフィリピンに三か月間、語学留学。フィリピン生活はお金もあまりかからないし、楽しかったですよ。

カナダを選んだことに、たいした理由はありません。オーストラリアかカナダか、ぐらいの選択肢の中から、なんとなくカナダにしただけです。LGBTQが暮らしやすい制度が整っている国で、同性婚も認められていると知ったのは、実は実際に住み始めてから(笑)。


あら、そうだったんですね。カナダの住み心地はどうでしたか。

かずえちゃん:住んでいたのはバンクーバーですが、とてもオープンで住みやすかったですね。せっかく仕事を辞めて来ているのだから、英語を話せるようにならなくちゃ、とカナディアンしかいない場所に意識的に行くようにして、ずっと英語に触れる環境に身を置きました。

現地での生活費を稼ぐためにバイトも掛け持ちしました。ただでさえ寒いカナダの冬に道路会社、レストランや日本語教室でのカウンセラーなど、本当にいろいろ。レストランではチップをもらえるのが助かりました。

接客やカウンセラーの仕事を選んだのは「いろんな人と喋る」仕事だったからです。上手に英語を喋れなくても、なんとか伝えようと一生懸命喋ると、だんだん上達してくるんですよ。僕はよく喋るから、喋ること自体は苦にならないし、楽しかったなあ。あとは、よく言われるように、やはり恋人ができると語学は飛躍的に上達しますね(笑)。


あはは。早速、恋人ができた!

かずえちゃん:はい(笑)。恋人となれば、なおさら、なんとか意志を伝えたいと一生懸命になるし、相手も理解しようと辛抱強く聞いてくれる。だから、自然に上達します。


カナダでの暮らしが自分の気持ちを大きく変えた

他にカナダでの暮らしでどんな気づきがありましたか。

かずえちゃん:寒いからだと思うんですが、おしゃれな人が少ない(笑)。質実剛健で服で重視されるのは機能性。僕も流行があまり気にならなくなりました。昔は高価なブランド服も買ったし、おしゃれは今も好きですが、服装にお金をかけなくなったのは、カナダ生活を経てからですね。

旅もそう。会社員時代はドバイで一泊何万円もするホテルに泊まるなど、ゴージャスな旅もしていましたけど、今は清潔で快適に休めるなら、ドミトリーでもかまいません。

ゴージャスなホテルやブランドものが嫌いになったわけじゃないんですよ。すごく欲しいと思うものや泊まりたいと思うホテルなら、お金は出します。意味があって、メリハリのあるお金の使い方をしたい、ということ。

ただ、無理にお金をかけなくても楽しい経験はできる、と思うようになって、メリハリの幅が狭くなったような気がします。時代の変化もあるでしょうし、自分の気持ちの持ちようも変わったのかなあ。


ご自身はどのように変わったんですか。

かずえちゃん:日本の法律ではまだですが、カナダやいくつかの国では同性婚が認められています。つまり、僕はいつかどこかで結婚するかもしれません。そう考えたら、とてつもない安心感を覚えました。これは、ゲイだから一生結婚できない、と思っていた昔の自分からしたら、大変な変化です。

結婚できる可能性がある、というのが、こんなにも心の支えとなるのか、と驚くほど。残念ながら、カナダの恋人とはお別れすることになりましたが、カナダでの暮らしは僕を大きく変えたと思います。

また、カナダで日本について訊ねられて、あまり日本のことを知らない自分にも気づかされました。そういえば旅行に行くのは海外ばかりで、国内旅行はほとんどしていなかったなあ、と。


帰国後、YouTubeを始めるまでの半年間は何をされていましたか。

かずえちゃん:国内旅行を。そんな時に熊本で震災が起こりました。自由に動ける状況だったので、すぐに熊本に向かい、ボランティアとして二か月間、働きました。カナダで日本の良い部分も見えるようになったこともあり、改めて僕は家族や友達がいる、この日本が好きだ、と。


日本ではLGBTQだとカミングアウトしている人が少ないと聞いています。かずえちゃんはご家族にカミングアウトされているんですよね。

かずえちゃん:僕自身は家族との仲はとても良好です。それでも、カミングアウトしたのは24歳の時。妹が2人いますが、「僕の孫は見せられなくてごめんなさい」と謝りました。

両親は理解してくれたんですけど、母がこう訊ねたんですよ。「女性の格好はしないの?」って。ゲイは皆、女装するものと思っていたんでしょう。さまざまな志向のうちの一つ、というのを母は知らなかったんですね。今もかつての母のように誤解している人は少なくないと思います。

だから、YouTubeを始めました。LGBTQに対する日本社会の理解はまだ遅れをとっています。僕のYouTubeを通して、LGBTQへの理解を深めてもらいたいですし、カミングアウトできない人や一人で悩んでいる人と「みんな違って、みんな良い」というメッセージを共有したいです。



かずえちゃん
本名・藤原和士。1982年、福井県生まれ。福井県内の高校を卒業後、地元の結婚式場にてウェディングプランナーとして5年ほど勤務。24歳で外資系保険会社に転職。休暇を利用して海外を中心に旅に出かけるようになる。30歳で退社し、ワーキングホリデーを利用して、カナダへ語学留学。同性婚が認められているカナダでゲイであることを隠さずに暮らす自由と解放感を経験。3年後に帰国し、2016年7月からLGBTQと自身の旅の記録を発信するYouTubeチャンネルをスタート。現在、チャンネル登録数約6万人インフルエンサーとして精力的に活動中。

YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC6WcDW527KWU4eE9OaWPh4g

Twitter
@kazuchan1982

Instagram
@kazuechan1101


聞き手:中沢明子
1969年、東京生まれ。ライター、出版ディレクター。女性誌、ビジネス誌など幅広い媒体で執筆。延べ2000人以上にインタビューし、雑誌批評にも定評がある。得意分野は消費、流行、小売、音楽。著書に『埼玉化する日本』(イースト・プレス)、『それでも雑誌は不滅です! 』(朝日新聞出版)、共著に『遠足型消費の時代』(朝日新聞出版)、プロデュース本に『ケチケチ贅沢主義』(mucco/プレジデント社)、『深読みフェルメール』(朽木ゆり子+福岡伸一/朝日新聞出版)などがある。最新の構成本に『「働き方改革」の不都合な真実』(常見陽平+おおたとしまさ/イースト・プレス)

撮影:ともまつりか