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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

お金を動かすコストをゼロに近づける。Origamiが実現したい決済の未来

【株式会社Origami 康井社長インタビュー】

平松梨沙 2018年4月23日 12:00
街のさまざまなショップのレジで見かけるようになった「オレンジの折り鶴」。スマホ決済サービス「Origami Pay(オリガミペイ)」のロゴマークです。サービスを展開するのは、康井義貴社長がひきいる株式会社Origami。2万店舗以上の加盟店を持つOrigami Payを通じて、32歳の社長が見据える未来とは?
※加盟店舗数には、近日導入予定の店舗も含む

日本人がお金を払い続けている「あるもの」

弱冠32歳にして、お金の世界に革命を起こしている康井社長。Owllyも24~25歳から30代前半までをターゲットに、「お金についてを立ち止まって考える」をコンセプトにしているのメディアなので、ぜひともお話をうかがいたいと思いました。

康井義貴(以下、康井):よろしくお願いします。


OrigamiはもともとECアプリ……オンラインで自由に買い物するためのアプリとして始まりましたよね。実店舗でのキャッシュレス決済の実現は、いつから考え始めたのでしょうか?

康井:Origamiの目的は、最初から資金移動、金融のインフラづくりで、創業当時から実店舗でのキャッシュレス決済を準備してきました。


そうなんですね。

康井:この20〜30年で、情報通信の世界では劇的な革命が起きました。昔は切手代やら電話代やらコストがかかっていた通信の世界ですが、インターネットの発達によって、人々はお金を払わずして情報を伝達できるようになったわけです。


端末代や通信費用はかかりますけど、ものすごく安くて便利になったことは間違いないですね。SkypeやLINE、Facebookのメッセンジャーを通じて、メッセージの交換だけでなく、電話やビデオ通話までできてしまう。

康井:はい。“Data is the new oil.”という言いまわしがありますが、もはや情報の「移動」よりも、「情報」自体を手に入れることのほうがはるかに大きなビジネスになったんです。FacebookやGoogleがその筆頭企業ですね。
しかし、みんな情報の移動にはお金を出さなくなったのに、情報と同じくらい日常的にやりとりしている「あるもの」の移動には、相変わらず手数料を払っている。それが「お金」です。


ああ……たしかに。「銀行の手数料もったいないよ〜」と思いながらも、みんなお行儀よくATMで支払い続けていますね。自分のお金を引き出したいだけなのに!

康井:でも情報に引き続き、お金の移動コストをゼロに近づけようという動きが活発になってきた。それがFintechの本質だと思います。

ぼくは新卒でリーマン・ブラザーズに入社し、その後シリコンバレーのベンチャーキャピタルで働くことになりました。中国、アメリカ、日本の3拠点で活動していたのですが、中国とアメリカでFintechがぐんぐん浸透していくさまを見て衝撃を受けて、「これからどんどん世界が変わるぞ」と思いました。そして、新時代の金融インフラ作りを行いたいという気持ちから、株式会社Origamiを立ち上げたんですね。


「現金信仰」の強い日本人

それで、ECアプリとして「Origami」をリリースし、「Origami Pay」へと発展させたんですね。有名企業や百貨店に導入されただけではなく、中国でもよく使われている「Alipay(アリペイ)」とも連携しています。会社の立ち上げから振り返ってみて、いかがでしょうか?

康井:この1、2年でだいぶ状況が変わったなと思いますね。昨年、経済産業省が「2027年までに日本のキャッシュレス決済比率を40%に引き上げる」と宣言しました(インタビュー当時。その後2018年4月に目標比率の達成を2025年まで前倒しすることを発表)。政府が具体的な数値を出して旗振りをしたのはこれが初めてで、私たちとしてもだいぶやりやすくなった印象です。


とはいえ、ニュースなどで世界のキャッシュレスの動きを聞いていると、日本はまだまだ遅れているのかなと感じます。

康井:日本人は、「現金信仰」がものすごく強いんです。他の国ですと、保有資産の半分以上を投資にまわしているという人もめずらしくないのですが、日本人は、なぜかみんな現金のまま銀行に預けている。
国内で行われている決済も、8割が現金。クレジットカードすら「使うのがこわい」「借金をしている感じがする」と思っている人がすごく多い。「現金で支払いを行うほうが、お金のありがたみがわかる気がする」と言う人もいる。


なんとなくはわかりますね、その感覚。

康井:金融を少しでもかじった人間からしてみると、クレジットカードを使っている人のほうが、よほど「お金のありがたみ」がわかってるんです。


どういうことですか?

康井:クレジットカードのメリットには、「お金を持ち歩かなくて済む」ことのほかに、「支払いを遅らせることができる」というものがあります。つまり今日10万円の買い物をしても、いま手元の10万円が減らず、1ヶ月後までは10万円を持った状態でいられるということですよね。


そうですね。多くの人にとって「借金しているからこわい」という印象になるのも、支払いのタイミングがずれているからですよね。

康井:でも、いま手元に10万円が残っていると、ぼくたちはその10万円を「運用」をすることができる。1ヶ月後の10万円の支払いまでに、運用利益や利息を得られますから、そのぶん価値を得られる。リスクが恐ければ、日本国債で運用すれば良い。今持っている10万円というのは、1ヶ月後の10万円や1年後の10万円よりも、価値の高いものであるというのが、コーポレートファイナンスの原理原則です。モノを買うときに支払い……キャッシュフローを遅らせるというのは、利子がつかないかぎりは、すごく得なことになります。


なるほど……!

康井:金融の一般常識と、逆の考えが広がっていて、資産運用を積極的に行う人が少ないのが日本なんです。そうした国だからこそ、お金の移動についての常識を変えることにやりがいを感じます。

そして、ECサイトの普及によって「オンラインでお金を使う」ことにひもづいた情報はだいぶ蓄積されるようになりましたが、「オフラインでお金を使う」ことにひもづいた情報というのは、まだほとんど手付かずです。前者の市場規模は現在年間12〜13兆円程度ですが、後者の規模は140兆円なんですよ。でもその8割は現金で行われ、人々の大半は「一見さん」として消費を続けている。


実店舗で買い物するときに、顧客情報の記入を頼まれたりしますけど、面倒くさくて、だいたい断っちゃいますもんね。

康井:情報通信の世界ではこれだけ革命が起きているのに、消費に関しては貝殻で物々交換しているのと変わらない状態です。その巨大市場にイノベーションを起こせたらとても意義があることであり、小売業界にとっても、SNS等で潜在的な顧客とつながること以上に、有益なはずです。
消費者に対しては「現金やカードで払うよりもお得」「現金やカードで払うよりもスムーズ」というメリットを提供することで、地道に「現金信仰」と闘う毎日です。


入社、即リーマン・ショックに見舞われる

康井社長はご家庭で、子供のころから「お金」に関しての教育を受けてきたんでしょうか?

康井:具体的に何を言われたということではなく、自然と関心を持てる環境でしたね。トロントで生まれて、子供時代をニューヨークで過ごしました。家族の仕事仲間の金融機関の人たちがうちに来て、金融の話で盛り上がるということは多かった気がします。
高校のころには「自分も何かビジネスがしたい!」と思って、趣味で買い始めた洋服やスニーカーを販売するサイトを自分で立ち上げました。


すごい!

康井:でも、日頃、読んでいる新聞に書いてあるのは、「1000億円で買収した」とか「300億円の利益」とか、億単位の話ばかりなんです。「ぼくが動かしてる金額くらいでは、ビジネスとはいえないんだ」と思い、大きなビジネスにかかわりたい気持ちが強くなりました。今考えるとあまりに単純で馬鹿な発想ですが。
大学時代は、プライベート・エクイティのファンドでバイトさせてもらい、コーポレート・ファイナンスを一生懸命勉強しましたね。


その流れがあって、リーマン・ブラザーズに……。

康井:入社したその年にリーマン・ショックが起きたのも、いい思い出ですね(笑)。入社後にニューヨークオフィスで研修をしていたのですが、毎日どんどん株価が下がっていくのをみんなでチェックしてました。それでも「うちは大丈夫だから」って言われていたんですけど、9月14日の日曜に全員会社に呼び出されて、破綻を告げられて……。


さすがにショックでしたか?

康井:いや。もともと外資系金融は、いつクビになってもおかしくないシビアな業界ですから、それほど動揺はしなかったですね。でも、「すごい時代にすごいところに入ったなあ」と思いました。
しかもおもしろいことに、今こうして話しているこのOrigamiのオフィス……当時リーマン・ブラザーズの日本法人が入っていたところなんですよ。


えっ!?

康井:この2月に移転したのですが、本当に偶然同じフロアが空いていて。ふしぎなめぐりあわせですよね。


いつでも「資産価値」を考えてしまう

ヒキのあるエピソードが盛りだくさんですね。ご自身がお金を使うときに、なにか独特のこだわりやルールを持っていたりしますか?

康井:どうだろう……。つねに頭のなかにBS(バランスシート・貸借対照表)が浮かんでいて、お金を使うときは「これは資産として計上されるものか?」を考えてはいますね。


どういうことですか?

康井:たとえば、「30万円の資産価値の高い時計を買う」のと「15万円の旅行に行く」のだと、後者のほうが高い買い物で贅沢です。時計は残るけど、旅行は形としてというか、資産としては何も残らないでしょう。どうしても、「売る」前提、経済合理性重視でモノを見てしまうです。
オフィスのレイアウトにも、その思考が反映されています。会議室を区切るのに、壁をつくるのではなくてコンテナを設置しているのですが、人が増えてレイアウトを変えたいときに、壁は壊すしかありませんが、コンテナだと自由に移動できて、資産価値が保たれつつ、拡張性もある。


モノを買うにしても体験を買うにしても、「その時点での効用」しか考えたことがなかったので、身にしみました。

康井:といっても、世の中には経済合理性より大事なものもたくさんある。要は、バランスなんですよね。15万円の旅行で得られる体験には、資産価値でははかれないものがいろいろと詰まっている。
Origamiが、消費者一人ひとりの方の多様な価値観を支える存在になれたらいいと思っています。


たくさん勉強になりました。ありがとうございました!



株式会社Origami
Origamiは、キャッシュレスを実現するモバイル上のプラットフォームを提供しています。2012年に会社設立し、2016年5月にスマホ決済サービス「Origami Pay」の提供を開始。大手コンビニチェーンや、タクシー、生活提案型のインテリア雑貨店、世界的に展開しているファストフードチェーンなど、約20,000店舗※の加盟店がOrigami Payを導入しています。
※加盟店舗数には近日導入予定店鋪も含む
https://origami.com/


聞き手:平松梨沙