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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

空気を読みすぎるのはコスパが悪い! 自分より「ちょっとすごい人」とリスペクトをして接することで、人間関係はもっと楽になる

【トミヤマユキコ インタビュー後編】

羽佐田瑶子 2018年3月22日 06:00
「お金は盗まれることがあっても、頭に入れたことは盗まれないし、ときにお金を生む」とトミヤマさん。著書では大学生に向けて「転ばぬお金との付き合い方」として投資と浪費を見極めるコツを指南します。物理的に稼ぎ・支払うお金と、生活の中で時間や成長など目に見えないものに支払うお金。「ライフの上でのコスパ」という、興味深いお話も伺いました。

明確な目標のない貯金は意味がない

別のインタビューで「好きなこと、楽しいことだけして自分で稼ぎたい」と話されていたのが印象的でした。そのように考えられたきっかけは?

トミヤマユキコ氏(以下、トミヤマ):単純に忍耐力がないからです(笑)。好きなことについてまわる面倒なことはいくらでもできるけれど、お金のためだけに頑張るのは無理なタイプなんですよ。そもそもお金持ちになりたいと思ったこともないですし、思っていたら借金までして大学院に行きませんしね(笑)。

あと、どうしても満員電車に乗りたくなかったので、どうしたらいいか本気で考えました。中学、高校でもう一生分乗ったと思っていたので(笑)。好きなこと楽しいことをしたいというよりも、苦しいことや辛いことはどうにかして回避したい、という感じです。


将来の選択の仕方が、現実的というよりは感覚的ですよね。

トミヤマ:そうかもしれないですね。不確かな未来よりも、目の前にいる人間に興味があるタイプなので。早稲田大学に入ったのも、いとうせいこうさんと真心ブラザーズのおふたりに憧れたから。一浪して、いとうさんと真心桜井さんの出身学部である法学部へ行きました。

法律の勉強とか、正直どうでもいいんですよ(笑)。とにかく憧れの人たちがいたこの大学を遊び尽くしてやろうと思っていました。それで、他の学部の授業にもぐるうちに大学院の某研究室がおもしろそうだと知り、進学を決めました。この時も教授に惚れたって感じ、いとうさんや真心ブラザーズと同じパターンです。人に興味がありすぎるんだと思います(笑)。


お金の面で「失敗したな」と思うことはありますか?

トミヤマ:パチンコです。パチンコ店ってうるさいので人との交流があまり無いですし、たまに隣のおじさんが玉をくれるだけなんですよ(笑)。ほんとに機械との対話のみ。それ以上何かを深めることができなかったです私は。

将来パチンコ業界で働くつもりとかならまた別ですけど、私の場合は時間とお金のムダだったなと思います。同じお金を使うなら、もっと大衆酒場にお金を落とすべきでした(笑)。


パチンコと大衆酒場には違いがあるということですか?

トミヤマ:大衆酒場って通い続けると常連さんにコミュニケーションスキルを鍛えてもらえるんですよ。確実に人生経験が増える、しかもお店によってカラーが違うから飽きない。そういうものは「浪費」ではなくて「投資」だと思います。私の場合は人が好きすぎるので大衆酒場が合いますけど、自分がハマれるものならなんでもいいんです。

酒場でいろんな人と出会って話す、っていう形式はライターの取材に似ているので、実は仕事への還元率が高い。つまり自分への投資になりますよね。そういう意味でも酒場通いはやめられないです。音楽は好きなんですけど、ライブは観客同士のやり取りがあまりないので、たまにでいいです。バンドマンの嫁のくせにひどい言いぐさですが。むしろライブ後にファンの方と飲みに行けたらいいのにな〜と思ったりしますね(笑)※。

※トミヤマさんのパートナーは、ファンクバンド Scoobie Doのドラマー MOBYさん。


(笑)。『大学1年生の歩き方』でも、「浪費」と「投資」について触れられていますが、両者を見極める大事なコツはなんでしょうか?

トミヤマ:明確な目標なく「なんとなく」で貯金をしている人は、本当にもったいないことをしていると思います。とくに若い人はそう。学生時代って頑張ったところで大した額を稼げないので、そのお金を死蔵せずに、本を読んだり旅行に行ったり他の大学の授業にもぐる交通費にあてたり、投資だと思ってお金を使ったほうが後々のリターンが大きいと思います。

親からよく「お金は盗まれることがあるけれど、頭のなかに入れたことは盗まれないし、時としてお金を生む」と言われていましたが、ほんとうにそうだと思います! あとはパチンコは絶対ダメです(笑)


パチンコはわかりやすい例だとして、たとえば飲み会なんかは、どれが「浪費」でどれが「投資」か見極めが難しいところがありますよね。

トミヤマ:たしかに場数を踏まないと飲み会の善し悪しは見極められないので、まずは授業料として多少の支払いは覚悟しておいた方がいいです。私の感覚ではやけにノリのいい飲み会って、気持ちいいほど何も残らない(笑)。やっぱり、盛り上がっている人たちを遠巻きに見ながら、輪にはいっていけない子たちがいるっている二層構造がいいですよね。そこで輪の外の子たちと仲良くなれたらなおよい。

今の子たちは空気を読むことが得意なので、輪の中に入ろうとしてしまうんですよ。でも、輪に入っていけないことを悪いこととは思わずに、入れない人同士でコミュニケーションをするのも、いいことですよ。私も輪に入っていけない側でしたし、そういう子にこそ未来があると思っているくらいです。たとえば私が参加する飲み会でも、輪の外の子によく話しかけますね。なんで来たの?って(笑)。でもあぶれている子にこそおもしろい子がいるなと思います。


全員をリスペクトし、一律して接するとコスパがいい

トミヤマさんは、どんな方とでも同じ態度で接されるのが、いいなと思っていました。

トミヤマ:ありがとうございます。誰にでも同じように接するのって、生きる上でコスパがいいんですよ。相手が格上か格下かで態度を変えるのは面倒なことだし、すごい人かどうかなんて見た目だけではわからないので、見誤ったら失礼にあたることも可能性としてあります。

なので、基本的には接する人全員に対して、「自分よりちょっとすごい人」というリスペクトの気持ちを持つことにしています。はじめだけ敬語で突然ずっとタメ口になってしまうことも結構あるんですが(笑)、リスペクトの気持ちが伝わっているのか生意気な後輩としてみんな受け入れてくれます。

もうね、権力関係を気にして人とコミュニケーションをとるのが辛いんですよね。たとえそれで「無礼だ」と怒らられても、「そんなことで怒るなんてケツの穴の小さなやつだな〜」って思って片付けています(笑)。経験上、大御所ほど生意気な後輩に優しいのは、紛れもない事実なので。人としての器をフィルタリングできるのでずっとこのスタンスです。

でも、このやり方、私のような小生意気キャラにはおすすめですが、万人におすすめとは言えません。無理をせず、自分らしいコスパのよい方法で、相手とコミュニケーションしてもらえたらそれが一番だなと思います。


なかなか難しそうですね……。

トミヤマ:ですよね。でも、「自分よりちょっとすごい人」だと思って全ての人とコミュニケートすることは誰にでもできることだし、役割役目で相手を見ないことって本当に大事なことだと思うんですよね。あと、ぜんぜん偉くない人だって、大切な仕事をしていることもあるわけで。だから誰にでもフラットに接するのがいい。

大学にいると、先生と生徒、先輩と後輩、そんな風に役割役目によったコミュニケーションをとる人が多いです。私に対しても、トミヤマユキコといういち個人に向かって話すのではなく、先生に向かって話している感じがする。まあ、仕方ないんでしょうけど、ちょっと固定的すぎやしないかとは思いますね。

役割役目で他人を判断するのって楽なんでしょうけど、それって人間同士の対話じゃないですよね。だから私は先生の威厳とか要らないです。学生にも「いま、先生と生徒じゃなくて、人と人との話をしてんだけど!」って言うと動揺されます(笑)。相手によって態度を変えて、空気を読みすぎるのって、本当にコスパが悪いと思います。私のように「自分よりちょっとすごい人」という『ライフ上のコスパ理論』を見つける場合もあるし、別の理論もあるはず。器用すぎると疲れちゃいますよ。


ライフ(人生)の上でのコスパ理論を見つけるんですね。

トミヤマ:知り合いの先生に、「全員に丁寧な対応をする人」もいます。生徒だろうと教授だろうと相手によって態度を変えずに、「◯◯さん、いかがでしょうか?」とか聞くんです。

私は小生意気キャラでその先生は丁寧キャラ。でも、誰に対しても接し方を変えないあたりは「根は一緒だぞ」って密かに思っています。やっぱり、キャラクターを一定にしておくと、精神衛生上すごくいいと思うんですよね。


無理矢理リスペクトの気持ちを持つわけではないですもんね。

トミヤマ:無理矢理ではないです。私、心底嫌いな人ってこれまでの人生で2人くらいしかいなくて(笑)。自分で言うのもあれですけど、たぶん人のいいところを見つけるのが上手なんです。大学にはいろんな人がいます。苦手な人ももちろんいます。でも、どんなに嫌な人でもいいところが絶対にあると思うので、その人の好きな部分に向かって話しかけるイメージで話すと、相手も私に対してそこまで憎悪を向けてきません。

嫌いだから近づかない、と決めてしまうと、付き合いの幅がどんどん狭くなりますよね。苦手だなと思っても、全部を否定せずに、部分部分を認めていくと生きやすくなる。いろんなフレンズがいる世界になって楽しいはずです!


ありがとうございます。最後に、「働く」や「稼ぐ」のヒントになるマンガがあれば教えてください!

トミヤマ:ウラモトユウコさんの『椿荘101号室』はおすすめです。ちょっとだけクセのある主人公が、ボロアパートでゼロから人生をやり直す話なのですが「努力はしないけど工夫はする」みたいな生き方が、見ていてすごく参考になります。

あとは東村アキコさんの『海月姫』ですね。ニートの女の子たちがどうやってこの世界に居場所を見つけるか、という話ですが、ニートをやめろとかいい加減結婚しろとかそういうことではなく、いまの自分の性格や個性はそのままに、どうにかうまくやっていく方法がないか考えることを推奨しています。そういう考え方が大好きですね。


トミヤマユキコ
79年生まれ。ライター、少女マンガ研究者(現・早稲田大学文化構造学部助教)。日本の文芸やサブカルチャーを専門とするライターだが、少女マンガに描かれた女の労働について論文を書く研究者としての一面も。著書に『パンケーキ・ノート』(リトルモア)、『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(清田隆之との共著、左右社)がある。


聞き手:羽佐田瑶子(はさだ・ようこ)

87年生まれ。映画会社、訪日外国人向け媒体を経て、現在はフリーランスのライター、編集者。女性アイドルや映画を中心に、マンガ、演劇、食、伝統工芸などのインタビュー・コラムを執筆。主な媒体はQuick Japan、She is、CINRA、映画パンフレット製作など。週3はアイドルの現場、少女マンガは年間600冊ほど、一番好きな方は岡崎京子さんです。

Twitter/Instagram:@yoko_hasada