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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

美大の学費と漫画『ブルーピリオド』 編集部だより vol.6

岡本尚之 2018年2月2日 13:00

山口つかさが「アフタヌーン」で連載している『ブルーピリオド』という漫画が面白い。不良だが学業優秀な主人公・矢口八虎がある日1枚の絵と出会い、その絵が単に才能だけではなく、努力と技術によって描かれたことを知る。それから美大を目指す……という美大受験の青春スポ根漫画なんだけど、努力と芸術を描いているのがとにかく面白い。

美大芸大って芸術的才能のある人がいくというイメージが一般的だと思うけれど、日本に多くの美術予備校があるように「技術を学んで、努力して、勝ち得る」ものなので、実はあまり通常の受験と違わない。紋切り型の表現をするならば、努力という才能があるかないか、ということだと思う。もちろん才能がなければ入ることのできない大学もある。

作中では固有名詞で実際の芸大美大が出てくるんだけど、日本で一番有名な東京藝術大学(「芸大」といえばこの大学のことを指す)は二浪四浪があたりまえ、主人公の受ける学部は実質倍率200倍とされている。その一方で、学費が約50万円とめちゃくちゃに安いのだ。こうした固有名詞とリアルな数字によって、この漫画にはリアリティが宿り、読者の熱を加速させる。そう、単に学費だけの話をすれば、東京藝大はめちゃくちゃに安いのだ。

ぼくがかつて通っていた芸術大学(私立)の学費は年間1,440,000円。初年度はこれに入学金の280,000円が加算され、前期だけで100万円のお金が発生することになる。高い……と思うなかれ、これでも安い。他の私立大学では180万~200万もの授業料が発生することになる。自分の母校でいうと、たぶん「施設設備費」が高かったのは想像にたやすく、億単位の機材などが置いてあったので、他大もおそらく設備費や維持費にコストがかかっているのだろう(「文芸」の学科が安かったりするのはそういった理由もあると思う)。

高い、とされている医学、私学、薬学などと大きく異なるのは、<就職につながらない>というその1点。とかく、就職したい人が行く場所ではなく、アートをしたい人が行く場所なのだ(卒業後、あるいは在学中に「商業」と接する機会のある人もおり、その人たちはまた別の考えがあるのだと思う)。つまりコストパフォーマンスはすこぶる悪い。けど楽しい。

自分が親だったら子供を進学させるかどうか迷うかな、と考えたが、やっぱり行きたいのなら行かせたいが、それは『ブルーピリオド』にも描かれているように、「本気」である場合に限りたい。
※ぼくは結局、途中でやめてしまったので本気ではなかったのだろう。

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※「編集部だより」では不定期的に、編集部が考えていることや感じたことなどをお伝えしていきます

岡本尚之(おかもと・たかゆき)
1989年生まれ。広島県出身。出版社でライフスタイル誌・書籍の編集を行いながら、ライターとして『Quick Japan』などの雑誌やWebメディアで執筆。2016年、株式会社インプレスに入社。